おとなの教養2/池上彰

おとなの教養 2―私たちはいま、どこにいるのか? (2) (NHK出版新書)』を読んだよ。ポピュリズムはヤバい。

前著『おとなの教養』は「私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」というテーマで、リベラルアーツについて、池上さんなりに語った本だったけど、第2弾ではさらに一歩進んで、「私たちはいま、どこにいるのか?」というテーマで、それをたえず意識する力を身に付けることを目指す。とは言え、使う材料は現代社会のニュース。これらをネタに、ではどんな話が聞けるか…。

まずは、場所が変われば見方も変わるということ。

知識を深めていくと、こうした一面的な見方を相対化する力を身につけることができる。それがひいては、リベラルアーツ本来の意味である「人間を自由にする学問」へとつながっていくわけです。
知識が広がるということは、多面的な見方ができるようになるということ。情報量の多さが必然的にそうさせるという意味なのかなぁ~。それはそれで嬉しいような気がするけど。

そして、現代の話題からキャッシュレスと紛争の問題として民族のこと。

そう、民族もお金と同じように共同幻想なのです。お金も民族も、みんながお金だと思い、民族だと思うからこそ成立するのです。
と一発定義。この定義を理解していると、お金も民族も分かりやすくなるよね。どうして仮想通貨が成立するのか、世界各地で民族紛争が起きているのか。「共同幻想」というキーワードで考えてみよう。

最後に、ポピュリズム
国民投票の怖さは、トランプ大統領の誕生に始まって、最近ではイギリスのEU離脱という事象に現れてしまっているけれども、どうして、こんなことになるんだろうと不思議に思う。それが「ポピュリズム」であると説明されると納得。

国民投票は、民主主義が内に抱えるポピュリズムという危うさを増幅してしまう危険性があるのです。
と池上氏。人々の熱狂と暴走。なんだか、ポピュリズム共同幻想のような気がしてきた。人間てバカなのか利口なのか…。

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

羅生門・鼻・芋粥/芥川龍之介

羅生門・鼻・芋粥 (角川文庫)』を読んだよ。たまには読んでみるのもいい。

いつかは読もうと思い、Kindleセールで買っておいたもの。日本人なら誰もが知っている芥川龍之介。そして、その代表作が収録されている本書。「羅生門」も「鼻」も「芋粥」も、過去には読んだことがあるんだと思う。単にストーリーを知っているだけかもしれないけど。でも、それだけ日本人には浸透している作品なのだと思う。いつかはきちんと読んでみようと思っていたのもそれ故か。

本書は芥川龍之介の初期作品短編集。芥川作品の特徴らしいけど、色々なタイプの作品有り。旅行記風、歴史読み物風とか。但し、難儀したのは候文。一作品だけだけど。その中でも表題作の三作品は比較的読みやすいかな。ストーリーを知っているということもあるかもしれないけど。

そして、それぞれの作品の末尾に日付が入っているので、その時期が分かる。概ね明治末期から大正5年頃までの作品がほとんど。芥川の年齢を考えると、ほとんどが彼の20代の中頃までの作品ということになるのか。そう、その年令を考えると芥川の天才ぶりが分かるのかもしれない。逆にいうと、若くないというか、大人過ぎるというか。一例に過ぎないけど、

──人間は、時として、みたされるかみたされないか、わからない欲望のために、一生をささげてしまう。その愚をわらう者は、ひっきょう、人生に対する路傍の人にすぎない。
とか。20代前半の若者から発せられる言葉だろうか…。

ちょっと若者らしい感覚の作品が「日光小品」。ここでは、

こんなことを考えながら半里もある野路を飽かずにあるいた。なんのかわったところもないこの原のながめが、どうして私の感興を引いたかはしらないが、私にはこの高原の、ことに薄曇りのした静寂がなんとなくうれしかった。
と。自然の感覚を素直に表現しているように思えて、読者もホッとするかも。

研究しつくされている芥川作品も、難しい解説は抜きにして、素直に読んでみるのもいいかもしれないね。

羅生門・鼻・芋粥 (角川文庫)
KADOKAWA (2012-10-16)
売り上げランキング: 167,770

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

小説 ほしのこえ/大場惑

小説 ほしのこえ (角川文庫)』を読んだよ。SF風ノスタルジー

映画『天気の子』が公開されて、本屋に行くとその文庫本が山積み。『君の名は。』で一世を風靡した新海誠の最新作ということだけど、新海氏の原点が本書の原作となったアニメ作品『ほしのこえ』。たった25分だという。
自分的には『君の名は。』を読んだ後は、原点に戻るつもりで、本書を読みたい本リストに登録していていたんだけれども、そのまま放置が続いてしまった。今回の映画『天気の子』を契機にやっと手に取ったというわけ。

物語は2046年から始まる。だから、SF的な背景。主人公はノボルとミカコの中学三年生。だから、ホロ苦な恋愛小説。この時期、基本的には女子の方がしっかりしているから、どちらかというと、引っ張られ気味の男子。同じ高校に進学しようとお互いに思っているが、ミカコは中学を卒業することもなく宇宙に旅立っていく。

原作のアニメは25分という短さだから、この小説よりもう少しコンパクトだったらしい。結末をさらに膨らませてノベライズしたことがあとがきに書かれているよ。アニメを見ていないので、これはこれで良い結末だったと思う。

最後に新海誠の言葉。

学校の友達からも親からも聴くことの出来ない何か大切な「声」が、そういう深夜の時間には耳に届くような気がした。
中高生の頃、深夜に自室過ごす夜。何を考えていたんだろ。自分も誰かの「声」を聞いていたのだろうか。そして、その「声」によって、今の自分の基盤が形成されていったのだろうか。Internetもメールもない時代。深夜ラジオだけが「声」だったけど。

小説 ほしのこえ (角川文庫)
大場惑
KADOKAWA (2016-11-17)
売り上げランキング: 29,027

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

富士山はどうしてそこにあるのか/山崎晴雄

富士山はどうしてそこにあるのか: 地形から見る日本列島史;チケイカラミルニホンレットウシ (NHK出版新書)』を読んだよ。あるべくしてある。

思わず興味を惹かれるこのタイトル。地学好きの自分だからかもしれないけど。少し前だっただけど、ブラタモリでも甲府盆地の成り立ちをプレートの衝突という考え方で説明していたよね。本書も基本的な考え方は同じ。プレートの衝突とマグマの生成が連動して火山ができるわけだから。

おっと、いきなり本題に入ってしまったけど、本書の全体構成としては、富士山の話はごく一部。どちらかというと、副題の「地形から見る日本列島史」が本書の内容をよく表しているかな。そうそう、ちょっと前に読んだ『日本の地形』の最新版という感じ。貝塚先生の話も本書に出てくるし、貝塚先生にも『富士山はなぜそこにあるのか』という似たような著作があるし…。でも、どうして富士山の位置がこれほどまでにテーマになるのか。それは、

富士山が日本の自然景観の象徴である理由は先に述べましたが、その土台は富士山の位置にあります。富士山の美しい山容は、現在の位置でなければ決してできませんでした。
という説明で分かるように、富士山ができた理由だけではなく、美しさにも関係しているんだよね。科学的にいうと、プレートテクトニクス上の特異点といえるようなんだけど。

それでも、この美しさは地球の歴史的スパンで見ていくと、ちょっと変わってくる。

しかし、この美しい姿も、過去からずっと同じであったわけではありません。激しく変化し続ける環境の歴史の中で、富士山が美しいのは現在の一瞬であることも忘れないでください。
と筆者。地球史的には富士山はまだ若い。だから、すくっとしている。この美しい富士山を見ていられるのは、人類の歴史の間だけかもしれないね。なんという奇跡というか、ロマンというか…。何かに思わず感謝したくなるな~。

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

知らないと恥をかく世界の大問題10/池上彰

知らないと恥をかく世界の大問題10 転機を迎える世界と日本 (角川新書)』を読んだよ。翻弄され続ける日本。

このシリーズの10作目。最初はベタなタイトルに違和感があったけど、さすがに10作目となると全く違和感無し。むしろ、このタイトルでないとダメだな…と積極的に支持する気持ちも沸いてくる。人間なんてそんなもの…。

さて、今回はどんな話題か。
やはり、米中が中心かな。そこに北朝鮮が絡んできて、ちょっとだけEUと日本の話題。

そして、今回もトランプには辛口の池上氏。
例えば、

トランプは、中国からの輸入品に関税をかけると税金は「中国負担」と誤解していました。そうではありません。
と、関税は誰が払うものなのかが分かっていなかったと指摘。そう、関税とは輸入業者に課税されるので、結局は輸入した側の負担ということになるんだよね。それを理解していないとは…。
もう一つ。朝鮮戦争は休戦状態であることを知らなかったという話。だから、
トランプ大統領は政治の世界ではまったくの素人です。
と、一刀両断。政治家の基礎知識が欠如か…。でも、日本の政治家にもこのレベルがいそうだけど…。

そして、アジア情勢について。

米中の冷戦の狭間で、東アジアは翻弄されることになりそうです。
と。米ソ冷戦が終結後の世界は、またもや冷戦時代か。対立構造って、人間世界では必然なのかな…なんて考えてしまった。

さて、シリーズ11が出る頃の日本の政治体制、EUのイギリス離脱の影響とかも気になってきた~。

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

「読まなくてもいい本」の読書案内/橘玲

「読まなくてもいい本」の読書案内 (ちくま文庫)』を読んだよ。それでも読まずにはいられない。

この本はなんだろうか…。巻末の解説には、

本書が名著であるのは、読書案内の体裁を借りながら、従来の通説を塗り替える秀逸な現代思想史になっているからだ。
と説明有り。思わず納得しそうだけど、読書案内の体裁なのは本の題名だけ。そして、現代思想史を語るのは本の力を借りる以外にないのだろうと思うけど。

そして、著者が素直なことに、

本書刊行後、「現代の進化論」の興味深いトピックを集めて、『言ってはいけない―残酷すぎる真実』(新潮新書)という「スピンオフ」を書いた。
と文庫版あとがきで白状しているよ。本書がオリジナルであるとも。だから、本書の方が読み応えがあるし、ストーリーもしっかりしているような。

その現代思想史のテーマはさまざま。でも、それらは事例に過ぎず、

この本では“知のパラダイム転換”への入り口として、大小さまざまな驚きを集めてみた。
と言う。そう、“知のパラダイム転換”がキーワードということ。そのために、複雑系、進化論、ゲーム理論脳科学功利主義の考え方を紹介しているけれども、それぞれが世間的にはあまり評判がいいとはいえないらしい。
それは素朴な感情を逆なでするからだろうけど、ちゃんと考えれば当たり前のことばかりでもある(そう思ったでしょ)。
と説明。あぁ、これは『言ってはいけない―残酷すぎる真実』のスタンスだね。

ちょっとネガティブ風に書いてしまったけど、それぞれの事例やテーマは非常に興味深いことばかり、読まなくてもいいというより、ますます読みたくなりました~。

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

マインドフルネス/ハーバード・ビジネス・レビュー編集部

マインドフルネス (ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ])』を読んだよ。集中力の問題?

言葉としては知っていて、その中身は何だろうかとは思っていたけど、積極的に知ろうとはしていなかった「マインドフルネス」。どういうわけか、今回は意識が向いてしまい、お手軽そうな1冊を選んで、借りたのが本書。もともとは、ハーバード・ビジネススクールの機関誌に掲載された論文や記事をまとめたもの。だから、編者が同誌の編集部になっていて、書いた人は様々。

では、「マインドフルネス」とは何か?冒頭の記事では、

人間が毎日仕事に集中する姿勢を、本来満たされるべき力を取り戻すためには、心身と環境との関係を新しく立て直すことが必要です。そのためには、場と方法が必要になります。それを提示するのが「マインドフルネス」です。
と定義しているよ。自分的には集中するための力を取り戻す方法?って、勝手に解釈してみたけど。だから、禅とか瞑想とかとはちょっと違うかな。もちろん、それらは手法の一つではあるけれども。

もう一つの定義。

簡単に言えば、どんな状況でも、一瞬一瞬において、「いま、この瞬間をとらえる」力であり、「気づく」力である。
うん。こちらの方が端的で分かりやすいね。

もっと分かりやすいのは、「マインドフルネス」に対比する言葉。

人は何をする場合でも、それを「マインドフル」か「マインドレス」か、どちらかの状態で行う。
そう、日本語でいうと「心ここにあらず」かな。おっと、日本語の方が分かりやすかったか。

確かに、会議中に上の空になってしまうこともある。それはそれで仕方がないこととして、如何にそこから回復するか、その力をつけるか。あぁ、眠くなった時の対策が先か…。

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ