陰陽師 飛天ノ巻/夢枕獏

陰陽師 飛天ノ巻 (文春文庫)』を読んだよ。博雅はよい漢。

陰陽師シリーズの第2弾。第1弾が面白かったので、この第2弾はだいぶ以前にkindle本で購入済み。積読状態だったけど、やっとこの度読了。
そして、今回も安倍晴明源博雅の名コンビによる事件解決の物語集。いつものように晴明の謎解きは圧巻だけど、それはもうこの物語の前提条件になっているよね。

さらに、それぞれの物語の面白さに加えて、彩りを添える描写もいい感じ。例えば、博雅が晴明宅を訪れる際のシーン。

繁るにまかせているようにも見えるが、よくよく眺めてみれば、薬草として利用できるものが多い。博雅自身にはわからないが、意味のないように見える他の草や花も、案外晴明にとっては意味のあるものなのかもしれない。
とか、
ただ生えるにまかせているだけでなく、どこかに晴明の意志が働いているからなのだろう。
という感じ。この、草花の繁りは意味があるのかないのか、微妙な状態がこれから始まる物語の危うさを匂わせるし、晴明の不思議さも醸し出しているよね。

そして、今回の注目はワトソン役の博雅自身についてのこと。

「そうさ。博雅という才能、あるいは 呪 は、この晴明という呪にとっては、対のようになっているものではないか。博雅という呪がなければ、晴明という呪などは、この世にないも同然かもしれぬぞ」
と晴明自身から言わしめるほど、持ち上げられる。さらには、
その自分の奏でる笛の感応力に、博雅自身が気づいてないという節があるようなのも、まことに好ましく、博雅の友人である安倍晴明が、おりに触れて言うごとくに、この人物が、
“好い漢である”
ことを示しているように、筆者には思えてしまうのである。
と筆者自身の言葉まで出て来るよ。うん、この物語にそこはかとなく漂うやさしさは、この博雅から発せされているように思うよ。第3弾も期待できそうだな…。
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人生がおもしろくなる! ぶらりバスの旅/イシコ

人生がおもしろくなる! ぶらりバスの旅 (幻冬舎文庫)』を読んだよ。バス旅はローカル色が現れる。

このところ、旅もの本が続いているけれども、特に深い意味はないんだけど、やっぱりつい手に取ってしまうということなのかと自己分析しているところ。で、今回はバス旅。日本国内のバス旅もローカル色が豊かで楽しいはずだけど、世界に目を向けてみると、これまた様々なバス旅があり、その土地土地の文化が色濃く反映されるのがバス旅なんじゃないかと思うほど。

もひとつ驚いたのが筆者が男性だったこと。だって、「イシコ」だから。しかも、籍を入れていない妻がいるし。いや、男性でなければ、こんな旅はできないし、妻子があっても、こんな冒険旅はできないだろうな…と想像する。

では、どんな旅なのか。
まずは、日本で。しかも、都内の路線バス。

昔、利用していたバスに乗ると車窓に自分の人生が詰まっていることに気づかされる。車窓から見える風景と地名から記憶を呼び起こし、時間の流れが入り交じったタイムマシーンに乗っているかのようだ。
と筆者。自分の場合は「あの頃は何を考えて生きていたのだろうか…。」という疑問になるんだけどね。

そして、長距離の高速バスでは、

既に窓際のカーテンは閉められていた。カーテンを少しめくると先ほどまで自分が立っていた場所が別世界のように見える。夜行バスは外の世界を感じさせてくれるから好きなのだ。
と言う。そう、狭い車内、狭い座席がひとつの空間となり、そことの対比がそんな印象になるんだろうね。まるで、宇宙船から地球を眺めるような感覚…。

最後に海外編。ベトナムでは、

「すぐ」という時間の感覚は人種や住む地域によって違う。もっと言えば人によって違う。僕が旅を続けたことで得た物の一つに時間感覚の多様性を受け入れられるようになったことがある。何の役に立つかと聞かれると困るけれど。
と言う。そう、「soon」という単語は一つだけど、それを意味する時間が人や状況によって、確実に違うからね。

たまには高速バスなんぞに乗ってみたいと思うけど、長距離の場合、どこまで耐えられるのだろうか…。さすがに青森とはキツそうだなぁ〜。試してみるか?

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考えるヒント/小林秀雄

考えるヒント』を読んだよ。考える以前に理解が…。

小林秀雄の著作の中では最も有名なものと思われる本書。自分が本屋に通い始めた頃から、文春文庫の棚には必ず見かけたものだし、この黄色の表紙はシンプルだけどインパクトがあるよね。そんなわけで子供の頃から気になっていた本書。どうして手を付けていなかったかというと難しそうだな…という印象から。

では、実際はどうだったか。そう、やっぱり難解。特に、「考えるヒント」と書かれた括りの部分では、頭にスッと入ってきたのはそれぞれの小文の冒頭部分だけ。あとは、一気に難しくなり、最後は???で終わる感じ。これは辛い読書。
そして、中間の「四季」という括りの部分では、難解さが緩み、ホッとする。そして、次の「ネヴァ河」で難解さがぶり返し、最後の「ソヴェットの旅」で多少緩むという繰り返し。

ただただ難解だとだけ言っていたのでは、読んだ意味がなくなってしまうので、短文で読めば、それなりになるほどと思われる箇所が多数あったので、その中から幾つかを紹介するよ。

まずは、

政治とは巨獣を飼いならす術だ。それ以上のものではあり得ない。理想国は空想に過ぎない。巨獣には一とかけらの精神もないという明察だけが、有効な飼い方を教える。この点で一歩でも譲れば、食われて了うであろう、と。
と。ここでの巨獣とはもちろん社会全体のこと。いや、まさに言い得て妙。その大きさといい、身勝手さといい…。

さらには、

考えるとは、合理的に考える事だ。どうしてそんな馬鹿気た事が言いたいかというと、現代の合理主義的風潮に乗じて、物を考える人々の考え方を観察していると、どうやら、能率的に考える事が、合理的に考える事だと思い違いしているように思われるからだ。当人は考えている積りだが、実は考える手間を省いている。そんな光景が到る処に見える。物を考えるとは、物を摑んだら離さぬという事だ。
とか。そっか、合理的と能率的は確かに違う。手間を省いてしまったのでは、考えたことにならないわけだよね。

すべての文章が昭和30年代に書かれたもの。50年以上経った今でも色褪せない内容に頭が下がるよね。考えるってことは、普遍なんだよね。

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旅作家が本気で選ぶ! 週末島旅/小林希

旅作家が本気で選ぶ! 週末島旅 (幻冬舎文庫)』を読んだよ。島国だから島の良さが分かるのか?

本屋の平台でたまたま見つけた本書。旅ルポものは嫌いではないので、手に取ってみる。テーマは“島”。ちょうど、NHK南硫黄島の生態系調査の番組を見たばかりでもあったので、あぁ島もいいな…と感じていたところ。ただ、島となると、基本は船での移動だから、天候が不順になると、週末だけでヒョイと行ってくる気になるかは疑問があるが…。
で、本書は旅作家の小林希氏が自身が訪れたことがある60の島々のうちから、10島を選んで紹介したもの。それぞれの島にそれぞれのテーマをつけた紀行文。

まずは、島旅の良さって何だろ…というところ。筆者曰く、

それぞれの島には、独自の文化や風習がある。もちろん、今いる場所を出れば、同じ日本にいても、こんなにも言葉や食、建築様式など、目に見える大きなことから、些細なものまで、地域によってずいぶんと違うのだとびっくりする。
と。なるほど、島っていわゆるガラパゴス化しやすいからね。あとは、自然現象に大きく影響を受けるってこともあるかもしれないね。

同様に、

日本は有人島無人島あわせて6852島が織りなす島国で、その一つひとつの島には、固有の風俗や文化、歴史がある。島は、言葉も違えば、思想も違う。それぞれがまるでひとつの小国のようなのだ。
とも。だから、島旅は楽しい。新たな発見や新たな視点があるんだよね。

さて、気になるのが島にいる猫。猫が多い島がかなりあるという話なんだけど、どうしてなんだろ。自分なりの仮説なんだけど、漁港という餌場の為なのかなぁ…とも。
さて、何年も島には行っていないけど、どこかに行ってみたいな…。

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日本国の研究/猪瀬直樹

日本国の研究 (文春文庫)』を読んだよ。日本国の本質は変わっていないような…。

猪瀬直樹氏の著作は継続的に読んでいこうと思っているけど、読みたい本が次々と登場する中で、後回しになりがち。そのうちに、図書館からも無くなり、kindle本にもならなければ、読めなくなるという焦りもあり…。ということで、文庫版としては1999年3月発行の本書。発表は1996年の雑誌「文藝春秋」に。

さて、本書で何を筆者が訴えるのか。基本的には、当時の行財政改革の行方について。とは言っても、結局は補助金行政のあり方なんだろうか。その事例として、冒頭の第一部では、朝日連峰の林道建設と長良川河口堰の建設を巡って、繰り広げられる。結局は、政府、官僚、自治体の三つ巴でお互いが利益になるような動きになる。猪瀬氏は、

地方分権とは地方自治体の自決の論理のはずである。情勢に変化が生じて水が余るという地元自治体の判断があれば、無理に公共事業をやることはない。地元が自決できないのは補助金のせいである。
とキッパリ。うん、そうなんだけど、そこに入り込むのが公団とか協会とかいう名称の特殊法人という厄介なもの。これがかなりことを複雑にしているわけ。これが第二部以降の話題。

公団は特殊法人だが、その傘下に子会社を作ったり、社団・財団法人を作ったりで、結局、関係者間で利益が巡回しているという構図。しかも、その原資が税金だとしたら、どうなのだろうか…。しかも、官僚との関係も明らか。

一般に公団といえばすぐにエリート官僚の天下りが取り沙汰される。高額な退職金をもらいながら、公的機関を渡り歩くから、いつしか、“渡り鳥”と呼ばれるようになった。さらにエリート官僚につづき公団プロパーが傘下の企業群に天下る。しかし、問題の本質は役得ではない。表に現れた天下りという現象の底に“無責任”という深い闇が横たわり、惰性の共同体が沈んでいるのだ。
と猪瀬氏。

そして、最後に猪瀬氏は、

最後に、言いにくいことだがあえて言う。官僚だけが悪いのではなく国民にも問題がある。お上の権威に弱くいちいちお伺いを立てて、ややこしいことは役人に任せてきた。
と言う。
さて、20年経った今、日本は変わっているのだろうか。いまだに何とか協会とかは多いはず。やっぱり警戒していかなくてはいけないんだろうなぁ〜。

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宇宙に命はあるのか/小野雅裕

宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八 (SB新書)』を読んだよ。いつでもどこでも、イマジネーション。

宇宙兄弟(1) (モーニングコミックス)』の表紙に惹かれて、手に取った本書。元々、宇宙モノは嫌いではないので、面白そうなものは必然的に読むことになる。同じことを考える活字中毒の方々はたくさんいるようで、図書館の予約でかなり待ったけど。
筆者はNASAジェット推進所に研究者として勤務する小野雅裕氏。根っからの学者という感じではなく、夢が膨らむ若手研究者という感じかな。

前半は宇宙開発の歴史を人物を中心に語っていく。だから、それが人間ドラマになる。しかも、有名人ではなく、周辺でサポートした人たち。しかも、そういう人たちがある事柄に対して、突出した貢献をしているんだよね。結局、宇宙開発のようなデッカイプロジェクトはそういう人たちの集合のようなものでないと成功は叶わないんだろうね。そして、それらの人たちは、一人ひとりが夢を必死に追いかける人たち。手段を選ばすという場合もあるんだけど。
そんな彼らに共通する能力が想像力(イマジネーション)。

全ての技術はイマジネーションから生まれた。なぜなら、もし全ての人が今存在するものしか見えなかったら、新技術は決して生まれないからだ。目を瞑り、常識から耳を塞ぎ、想像力の目で未来を見た先駆者がいたからこそ、車も、電気も、電話も、飛行機も、ロケットも、月軌道ランデブーも、アポロ誘導コンピューターも、全ての技術が生まれたのである。鳥は翼で空を飛ぶ。人はイマジネーションの力で月に行ったのである。
ということ。ジュール・ヴェルヌの小説がなかったら、宇宙に行くなんて想像も起こらなかったかもしれないね。いや、誰かがそんなことを考えていたかもしれないな…。

後半は地球外生命を探す宇宙探査の話。そして、ここにもあるイマジネーションが存在する。それは、

そこに何かいるのか?
そこに何がいるのか?
その問いの答えを追い続けた人類の、数百年積もりに積もった好奇心が解き放たれる瞬間の、破裂するような興奮なのだ。
ということ。

エピローグでもイマジネーションについて、

もしかしたら現代は、人々がイマジネーションを働かせる余裕に乏しい時代かもしれない。
と筆者。情報がドンドン流れてくる時代に、知らないことを知るためにイマジネーションを働かせるなんて…と思う人は多いかもね。だからこそ、現代はイマジネーションが重要になってくるんだよね。結局、宇宙の話をしながら、イマジネーションがテーマだったのかもしれないなぁ〜。
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あやしい探検隊 北へ/椎名誠

あやしい探検隊 北へ 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ』を読んだよ。北だけではなく、南にも行く。

椎名誠の「あやしい探検隊シリーズ」の第2弾。タイトルは「北へ」となっているけれども、なぜか突如として南に行くことになるのもいかにも怪しいし、シーナ的とも言えるかも。

では、あやしい探検隊はどこに行くか。前半は新潟県の粟島。観光地化されていないから、誰にも邪魔されずに思う存分キャンプができる適地。それでも弱点があって、荒天で船が欠航することがあること。実際に帰れなくなったあやしい探検隊。
福島県の某海岸では、夜中に暴風雨にあい、びしょ濡れの悲惨なことにもなる。でも、それがそれで楽しかった思い出なんだよね。例えば、こんなセリフ。

沢野もすでに起きていて、歯をみがきながら「おいシーナ、雨だよ、雨はまいったなあ」と、そのわりにはずいぶん楽しそうな顔で言った。
…だよね。

キャンプの楽しさってなんだろ。必須アイテムは焚き火かな。シーナ的には、

焚火というのはヒトが手をつくすことによっていかようにも変化していく可変可動の自然造形物なのである。
と言っているよ。手をつくさなくても、眺めているだけでもいいものだよね。あぁ、もう何年も焚き火なんかしていないな…。

最後に本当にあやしい話。

あいにく今夜は月明かりはないが、ゆっくりつかってその温泉で酔いをさまそう、と言いつつ、じつは新しい焼酎を一本ぶらさげておれたち八人が三台の車に分乗した。もちろん運転手はどちらの車も相当酔っている。
これ、相当にあやしくてヤバくないか…。八丈島だから?あるいは時効成立?探検隊は無法地帯だぁ〜。
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