メタ思考トレーニング/細谷功

メタ思考トレーニング』を読んだよ。応用範囲広し。

細谷功氏の著作は2冊め。前回の『「無理」の構造』は世の中の理不尽を考えるものだったけど、視点としては「バカの壁」。だから、バカの壁を超えるには、発想の転換や視点を変える必要がある。その視点の変え方で有用なのが、「メタ思考」。本書はそのメタ思考について、その獲得の仕方を解説する。とは言っても、「バカの壁」を超えるのは土台無理なんだと思うけど。

まずは、そのメタ思考について。

要は、様々な物事を「一つ上の視点から」考えてみることが重要だ、というのが本書で伝えたいメッセージです。
とあっさり解説。俯瞰的に物事を見渡すとかと同じこと。これはよく言われることなのでわかるのだが、その獲得の方法は人によって様々かも。

で、その獲得方法。それは自分を客観視すること。そして「無知の知」、すなわち、

無知の知を実践するための一つの方法は、何か理解できないことや自分の価値観と反する事象に遭遇した際には、「相手がおかしい」と思うのではなく「何か自分の理解できない世界がある」と思ってみることです。
うん、これも「バカの壁」があるということに気がつくということだよね。

さらに、問題解決への応用。

このように、問題解決におけるメタ思考とは、いきなり問題を解き始めるのではなく、まず「問題そのものについて」考えることを意味するのです。
この考え方が好き。「そもそもこの問題でよいのか?」という思考。そして、「なぜ?」を追求する。なんだか、人に嫌われそうな気がするけど…。

メタ思考の他に、アナロジー思考についても書かれているけども、細谷氏の他の著作にもあるみたいだから、今回は省略。どちらにしても、メタとアナロジーはセットで獲得したほうがよい思考方法だよね。癖をつけていきたいね。

わたし、定時で帰ります。/朱野帰子

わたし、定時で帰ります。』を読んだよ。タスクと品質の管理。

これも、AmazonのPrime Readingから選書。気になっていた本が出ているのを見つけると得した気分になるよね。いや、それこそがAmazonの戦術なのかもしれないけど、今後も利用しない手はないよね。

で、本書はいわゆる「お仕事小説」の部類。主人公は30代なかばの女子。会社はWeb制作会社っぽい。だから、ちょっとIT系が入っているので、基本的にはキツイ仕事のイメージ。
でも、この女子は定時退社を貫く。それは、定時で帰らないとハッピーアワーに間に合わなから。それはそれで正当な理由だよね。でも、周りがそれに付いていかない。休まないのが美徳、残業するのが当たり前という人種は当然ながらいるからね。そんな人種に対し、この女子は、

「最初から残業をあてにするのはダメです。ぎりぎりに工数を組むと、トラブルが起こった時にスケジュールが燃えます」
と主張するけど、通じない。まさに、納期と工数とタスク管理の問題なんだよね。

と、前半は定時に帰るという話が中心なんだけど、後半はそうも言っていられなくなる。無理な案件の受注だとか、人員の割当だとか、品質の維持だとか。チームで仕事をするにあたって、奮闘する女子。社長に直談判したり。最後は、

「──会社のために自分があるんじゃない、自分のために会社があるんです。」
と。これが基本だと思う。働く場所は選べばいい。「24時間戦う」昭和世代はそのうちに消えてなくなるんだろうからね。
さて、我社のタスク管理のあり様でも考えてみるか…。

神様のカルテ/夏川草介

神様のカルテ』を読んだよ。細君がいい。

これも長らくの積ん読本。多分、シリーズの初巻だからセールをしていたのだと思う。映画も公開されていたので、それで知っていたということもあったし。

物語の舞台は信州松本。そして、24時間365日体制を謳っている一般の病院。そこに勤務する医師、看護師の勤務は過酷だ。いや、そういうリアルな話ではなく、そのような環境下における人間ドラマがこの物語の本質。
主人公はその病院に勤務する医師。そして、その妻。当然ながら、その病院の同僚の多数を巻き込みながら、物語は進む。夫婦の住む下宿?の住人も事件を起こす。さらには、患者と医師のドラマ。

なんとなく森見登美彦に近い感じもしなくはない。主人公のセリフの言い回しとかが、哲学ぶっている感じとか。例えば、クリスマスイブを、

イエス・キリストの誕生日の前日だな」
とひねくれて言ってみたり。そんな感じが自分好みなんだけどね。そして、夏目漱石が好きだということになっているんだけど、漱石はこんなにひねくれぽかったっけ?

随所に医師らしいセリフも。

「本人にどう話すかを考えるんだ」
私は医者である。
治療だけが医者の仕事ではない。
とか。そして、患者の側からは、
病いの人にとって、もっとも 辛いことは孤独であることです。先生はその孤独を私から取り除いてくださいました。
と。そう、これがあるから、病院の物語はヒューマンドラマになりやすいんだろうね。

さて、シリーズの2巻に進むかは悩み中。ずっと悩み続けるような気がするけど。

女性の品格/坂東眞理子

女性の品格』を読んだよ。男子も同じ。

以前から読みたい本リストに入っていた本書。この度めでたくAmazonのPrime Readingに登場したので、他の積ん読本を差し置いて、読んでみる。読みたい本リストに入れた当時、「品格」がテーマの本が流行っていたような気がする。『国家の品格』とか。筆者は、昭和女子大学前学長の坂東眞理子氏。現在は、理事長・総長になっているみたい。

では、「女性の品格」とは何だろうか。冒頭では、

この本は女性の品格について書いたつもりでしたが、結果として、人間の品格とは何か、品格ある生き方とは何かについて考えざるをえませんでした。
ということ。女性である前に、人間としてどうなんだということは考えざるを得ないよね。

そして、話し方について。

基本的にはどの相手にも、です・ます調の丁寧語を使いつづけるのが安全です。
と。敬語を無理に使うより、丁寧語がいいよね。最近は敬語と丁寧語が混同されている日本語が多すぎるし。シンプルにすることも品格の一つだよね。

複雑になりがちな人間関係についても。

品格ある女性の第一歩は一人で生きていけること、群れないことから始まります。
そう、これは重要。自由度を増すことが重要なんだよね。どっぷりと浸かってしまうと、行動や目的が制限されてしまうからね。

最後に、

神様や仏様など人間を超越した存在(something great)から見て恥ずかしいことをしていないと断言できる行動をするのが、人間の品格の基本です。
と、倫理観で締める。神がかってくるとは思わなかったけど、最後はそれしかないか…。

それにしても、最近の昭和女子大学はどうなんだろ。理事長になって、さらに加速しているのだろうか、気になるところではあるね。

Airbnb Story/リー・ギャラガー

Airbnb Story』を読んだよ。旅という概念を考え直す。

いわゆるシェアビジネスという単語が巷で話題になっていた頃、その代表格として取り上げられていたのが、UberとこのAirbnb。読み方が難しいなと思っていたけど、2つのBはBreakfastとBedのことだと本書で知る。これで、この企業の意図することに納得。日本ではどちらかというとUberの方が先行していて、特にUber eatsでその存在が顕在化した感じ。特にこのコロナ禍での「おうちで」モードでは、有効だったかもね。

おっと、Airbnbの話だった。そのAirbnbは、

「世界中を居場所にする」
それがエアビーアンドビーのミッションで、究極の目標だ。
ということ。明確でわかりやすいよね。その後の困難においても、このミッションに立ち戻って考え、乗り切っているよ。こういう基本が大事。

そして創業者3人のうち、2人がデザイン系ということも特徴だよね。

デザインとは、プロダクトからインターフェースからエクスペリエンスまで含めて、「すべてがどううまく機能するか」、ということだ。ふたりのこの考え方は後に、会社のすべての面に染み込んでいく。
と。すべてをデザイン思考で考える会社かな。そういう意味で会社の方針がわかりやすいとも言えるよね。これが企業文化にも繋がっていく。つまりは、
文化が強力であればあるほど、社員を信頼でき、その分正式な規則や手続きが少なくて済む。手続きが少なければそれだけ管理も軽くなり、イノベーションが生まれやすい環境ができる。
あぁ、これは凄い凄い。こういう考え方が好き。いや、職場はこうでなくちゃという感じ。ルールより文化を作らないとね。

最後に「ミレニアル層」気になる単語。何度も出てくるんだけど、このミレニアル層がAirbnbを支持しているということがよく分かる。そう、人が変わるということは世の中が変わるということ。次のZ世代?に支持されることってなんだろう?って考えないとね。

若草物語/L・M・オルコット,吉田勝江

若草物語』を読んだよ。子供の頃に読んでいたら…。

児童文学というカテゴリの作品ってほとんど読んでいないけど、この歳になって読むのもどうかとは思うけど、人生は短しで読まないで終わるのも勿体ないような気がするということで本書。いや、正直に言うと、本書を原作とした映画を見ようかと思っていたので、その雰囲気とか背景を知りたかったというのもある。

19世紀後半のアメリカを舞台とした四人姉妹の物語。しかも、ある都市の1年間の出来事。クリスマスで始まって、クリスマスで終わるから。四人姉妹といっても、全員が十代。一般的に多感と言われている時期なので、その思いは複雑。それぞれに役割があり、細々とした仕事をしなくてはならず、とは言え遊びたい気持ちも抑えきれず。うん、そんな時代だったな。

そして、十代だからこそ、長女から四女の成長の差は歴然とする。

ジョーは、この二週間のうちに姉がびっくりするほどおとなになってしまって、自分などついていくこともできないような遠いところへ行ってしまうのだ、という気がしてならなかった。
そう、1学年の違いが大きかったように、「びっくりするほど」成長する時期なんだよね。

そして、父母との関係。大人になりつつも、まだ両親に甘えたく、頼りたいという気持ち。微妙というか、複雑というか…。それを乗り越えた先に大人の世界が広がっていくんだよね。
あぁ、自分の十代はこんなだったのだろうか。もう思い出せないほど、遠い昔の物語になってしまったわ…。

限界費用ゼロ社会/ジェレミー・リフキン

限界費用ゼロ社会』を読んだよ。コストをどこに掛けるか。

モノのインターネットといえばIoTというわけで、IoTビジネスとか今後の展望を期待して手に取った本書だけど、それよりもさらにスケールの大きな話だった。期待外れというわけではなく、別の視点を得ることができたという感じ。副題は「<モノのインターネット>と共有型経済の台頭」。だから、主題は後者の「共有型経済の台頭」ということになる。「台頭」というより、「転換」と言ってしまったほうがよいような…。本書はその主題をひたすら語り続けるといった感じ。途中で飽きてくるけれども。

では、IoT、限界費用ゼロ、共有型経済はどのように結びついているのか。本書の説明では、

IoTの可能性をめぐる大きな興奮の陰に隠れてしまっているが、あらゆる人とモノを結びつけるグローバルなネットワークが形成され、生産性が極限まで高まれば、私たちは財とサービスがほぼ無料になる時代に向かってしだいに加速しながら突き進むことになる。そしてそれに伴い、次の半世紀の間に資本主義は縮小し、経済生活を構成する主要なモデルとして協働型コモンズが台頭してくる。
といった感じ。一応、ストーリーになっているよね。

そして、それを支える3つのインフラ。それは、

インフラには三つの要素が必要で、そのそれぞれが残りの二つと相互作用し、システム全体を稼働させる。その三つとは、コミュニケーション媒体、動力源、輸送の仕組みだ。
これらの有り様が劇的に変化することも重要な要素ということ。そして、共有型経済への移行は必然になっていくんだよね。

最後は人間の価値観の変化。

生活の大半が協働型コモンズで営まれるという高度に自動化された世界に生きる私たちの子孫にしてみれば、人間の価値はほぼ絶対的に当人の財やサービスの生産高と物質的な豊かさで決まるという考え方そのものが、原始的に、いや、野蛮にさえ思え、人間の価値をひどく減じるものとしてしか捉えようがないはずだ。
となりそうだね。その萌芽が見えてきているし、その恩恵にも預かりつつある。自分が生きている間にも世の中がすっかり変わっていくんだろうなぁ~。