小説 ほしのこえ/大場惑

小説 ほしのこえ (角川文庫)』を読んだよ。SF風ノスタルジー

映画『天気の子』が公開されて、本屋に行くとその文庫本が山積み。『君の名は。』で一世を風靡した新海誠の最新作ということだけど、新海氏の原点が本書の原作となったアニメ作品『ほしのこえ』。たった25分だという。
自分的には『君の名は。』を読んだ後は、原点に戻るつもりで、本書を読みたい本リストに登録していていたんだけれども、そのまま放置が続いてしまった。今回の映画『天気の子』を契機にやっと手に取ったというわけ。

物語は2046年から始まる。だから、SF的な背景。主人公はノボルとミカコの中学三年生。だから、ホロ苦な恋愛小説。この時期、基本的には女子の方がしっかりしているから、どちらかというと、引っ張られ気味の男子。同じ高校に進学しようとお互いに思っているが、ミカコは中学を卒業することもなく宇宙に旅立っていく。

原作のアニメは25分という短さだから、この小説よりもう少しコンパクトだったらしい。結末をさらに膨らませてノベライズしたことがあとがきに書かれているよ。アニメを見ていないので、これはこれで良い結末だったと思う。

最後に新海誠の言葉。

学校の友達からも親からも聴くことの出来ない何か大切な「声」が、そういう深夜の時間には耳に届くような気がした。
中高生の頃、深夜に自室過ごす夜。何を考えていたんだろ。自分も誰かの「声」を聞いていたのだろうか。そして、その「声」によって、今の自分の基盤が形成されていったのだろうか。Internetもメールもない時代。深夜ラジオだけが「声」だったけど。

小説 ほしのこえ (角川文庫)
大場惑
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富士山はどうしてそこにあるのか/山崎晴雄

富士山はどうしてそこにあるのか: 地形から見る日本列島史;チケイカラミルニホンレットウシ (NHK出版新書)』を読んだよ。あるべくしてある。

思わず興味を惹かれるこのタイトル。地学好きの自分だからかもしれないけど。少し前だっただけど、ブラタモリでも甲府盆地の成り立ちをプレートの衝突という考え方で説明していたよね。本書も基本的な考え方は同じ。プレートの衝突とマグマの生成が連動して火山ができるわけだから。

おっと、いきなり本題に入ってしまったけど、本書の全体構成としては、富士山の話はごく一部。どちらかというと、副題の「地形から見る日本列島史」が本書の内容をよく表しているかな。そうそう、ちょっと前に読んだ『日本の地形』の最新版という感じ。貝塚先生の話も本書に出てくるし、貝塚先生にも『富士山はなぜそこにあるのか』という似たような著作があるし…。でも、どうして富士山の位置がこれほどまでにテーマになるのか。それは、

富士山が日本の自然景観の象徴である理由は先に述べましたが、その土台は富士山の位置にあります。富士山の美しい山容は、現在の位置でなければ決してできませんでした。
という説明で分かるように、富士山ができた理由だけではなく、美しさにも関係しているんだよね。科学的にいうと、プレートテクトニクス上の特異点といえるようなんだけど。

それでも、この美しさは地球の歴史的スパンで見ていくと、ちょっと変わってくる。

しかし、この美しい姿も、過去からずっと同じであったわけではありません。激しく変化し続ける環境の歴史の中で、富士山が美しいのは現在の一瞬であることも忘れないでください。
と筆者。地球史的には富士山はまだ若い。だから、すくっとしている。この美しい富士山を見ていられるのは、人類の歴史の間だけかもしれないね。なんという奇跡というか、ロマンというか…。何かに思わず感謝したくなるな~。

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知らないと恥をかく世界の大問題10/池上彰

知らないと恥をかく世界の大問題10 転機を迎える世界と日本 (角川新書)』を読んだよ。翻弄され続ける日本。

このシリーズの10作目。最初はベタなタイトルに違和感があったけど、さすがに10作目となると全く違和感無し。むしろ、このタイトルでないとダメだな…と積極的に支持する気持ちも沸いてくる。人間なんてそんなもの…。

さて、今回はどんな話題か。
やはり、米中が中心かな。そこに北朝鮮が絡んできて、ちょっとだけEUと日本の話題。

そして、今回もトランプには辛口の池上氏。
例えば、

トランプは、中国からの輸入品に関税をかけると税金は「中国負担」と誤解していました。そうではありません。
と、関税は誰が払うものなのかが分かっていなかったと指摘。そう、関税とは輸入業者に課税されるので、結局は輸入した側の負担ということになるんだよね。それを理解していないとは…。
もう一つ。朝鮮戦争は休戦状態であることを知らなかったという話。だから、
トランプ大統領は政治の世界ではまったくの素人です。
と、一刀両断。政治家の基礎知識が欠如か…。でも、日本の政治家にもこのレベルがいそうだけど…。

そして、アジア情勢について。

米中の冷戦の狭間で、東アジアは翻弄されることになりそうです。
と。米ソ冷戦が終結後の世界は、またもや冷戦時代か。対立構造って、人間世界では必然なのかな…なんて考えてしまった。

さて、シリーズ11が出る頃の日本の政治体制、EUのイギリス離脱の影響とかも気になってきた~。

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「読まなくてもいい本」の読書案内/橘玲

「読まなくてもいい本」の読書案内 (ちくま文庫)』を読んだよ。それでも読まずにはいられない。

この本はなんだろうか…。巻末の解説には、

本書が名著であるのは、読書案内の体裁を借りながら、従来の通説を塗り替える秀逸な現代思想史になっているからだ。
と説明有り。思わず納得しそうだけど、読書案内の体裁なのは本の題名だけ。そして、現代思想史を語るのは本の力を借りる以外にないのだろうと思うけど。

そして、著者が素直なことに、

本書刊行後、「現代の進化論」の興味深いトピックを集めて、『言ってはいけない―残酷すぎる真実』(新潮新書)という「スピンオフ」を書いた。
と文庫版あとがきで白状しているよ。本書がオリジナルであるとも。だから、本書の方が読み応えがあるし、ストーリーもしっかりしているような。

その現代思想史のテーマはさまざま。でも、それらは事例に過ぎず、

この本では“知のパラダイム転換”への入り口として、大小さまざまな驚きを集めてみた。
と言う。そう、“知のパラダイム転換”がキーワードということ。そのために、複雑系、進化論、ゲーム理論脳科学功利主義の考え方を紹介しているけれども、それぞれが世間的にはあまり評判がいいとはいえないらしい。
それは素朴な感情を逆なでするからだろうけど、ちゃんと考えれば当たり前のことばかりでもある(そう思ったでしょ)。
と説明。あぁ、これは『言ってはいけない―残酷すぎる真実』のスタンスだね。

ちょっとネガティブ風に書いてしまったけど、それぞれの事例やテーマは非常に興味深いことばかり、読まなくてもいいというより、ますます読みたくなりました~。

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マインドフルネス/ハーバード・ビジネス・レビュー編集部

マインドフルネス (ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ])』を読んだよ。集中力の問題?

言葉としては知っていて、その中身は何だろうかとは思っていたけど、積極的に知ろうとはしていなかった「マインドフルネス」。どういうわけか、今回は意識が向いてしまい、お手軽そうな1冊を選んで、借りたのが本書。もともとは、ハーバード・ビジネススクールの機関誌に掲載された論文や記事をまとめたもの。だから、編者が同誌の編集部になっていて、書いた人は様々。

では、「マインドフルネス」とは何か?冒頭の記事では、

人間が毎日仕事に集中する姿勢を、本来満たされるべき力を取り戻すためには、心身と環境との関係を新しく立て直すことが必要です。そのためには、場と方法が必要になります。それを提示するのが「マインドフルネス」です。
と定義しているよ。自分的には集中するための力を取り戻す方法?って、勝手に解釈してみたけど。だから、禅とか瞑想とかとはちょっと違うかな。もちろん、それらは手法の一つではあるけれども。

もう一つの定義。

簡単に言えば、どんな状況でも、一瞬一瞬において、「いま、この瞬間をとらえる」力であり、「気づく」力である。
うん。こちらの方が端的で分かりやすいね。

もっと分かりやすいのは、「マインドフルネス」に対比する言葉。

人は何をする場合でも、それを「マインドフル」か「マインドレス」か、どちらかの状態で行う。
そう、日本語でいうと「心ここにあらず」かな。おっと、日本語の方が分かりやすかったか。

確かに、会議中に上の空になってしまうこともある。それはそれで仕方がないこととして、如何にそこから回復するか、その力をつけるか。あぁ、眠くなった時の対策が先か…。

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空飛ぶタイヤ/池井戸潤

空飛ぶタイヤ 上下合本版』を読んだよ。ビジネス・エンターテイメント。

上下合冊のKindle版。716頁もの大作だけど、グングンと引き込まれて、その勢いを継続したまま読了という感じ。久しぶりに読了後の達成感も高し。

ある運送会社のトラックからタイヤが外れ、歩行者に直撃し死亡。その原因がリコール対象なのか、整備不良なのかという点について、運送会社の社長と自動車メーカーが戦っていくという物語。…と簡単に書いてしまうと、それまでだけど、運送会社にも自動車会社にも社内の物語があり、そこに登場する人間にも家族の物語がある。それが複雑に展開していき、それでも、物語としての構造が維持されていく。

運送会社の物語的には、

タイヤが外れる前に、こいつらの心からもっと大切な部品が外れちまったんじゃないか?
と、自動車会社の人間に対する不信感を募らせる言葉が象徴的。

対する自動車会社の人間は、

沢田に興味があるのは、むろん、事故の真相ではない。社内の勢力図のほうだ。〝品証〟に万が一のミスがあったら、それをつついて奴らの鼻っ柱を折ることができる。日頃の憂さ晴らしという奴だ。
と、事故のことより、社内政治に躍起になる。

事故の真相究明は捗々しくはないし、誰もが心が折れそうになるんだけど、運送会社の社長は何度も挫けそうになりながらも、最後は、

そう──自分の力で。
と心に誓い、諦めることはない。社員、家族のためにも。その勇気と行動力に感動し、涙する一冊でした~。

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素数はなぜ人を惹きつけるのか/竹内薫

素数はなぜ人を惹きつけるのか (朝日新書)』を読んだよ。素数に萌え?

数学の中でも数論はその王様的存在と言われているけども、その数論の中のテーマでも王様的な存在が素数。普通の人が素数の存在を知るのは、中学かな?それでも、その素数の定義にふ~んというリアクションだと思うけど、ギョーカイ的には注目されているテーマであることは事実。特に、暗号化技術では素数の性質を応用しているわけだし、これだけ現代に活用されている数学的技術(って言っていいのか?)はないとも言えるかな…。

さて、その素数について、フツーの人たちにその面白さを伝えようと試みたのが本書。いつものサイエンス・ライターの竹内薫氏だけど。とは言え、フツーの人が本書を手に取るだろうかという根本的な疑問はある。自分のような似非数学オタクなら、喜んで手にとるのだろうけど。

そして、話の中心はリーマン予想素数の出現を公式として定義するというもの。それでも、証明されたわけではないから、あくまでも予想。そして、そのリーマン自身はその証明を「今はちょっと置いておく。」と放置してしまったという。はぁ…。

リーマン予想そのものはゼータ関数の研究という方向に向かっていくんだけれども、そのゼータ関数がまた魅力的なもの。原子核のエネルギーをあらわす公式や超ひも理論などの物理の問題にも頻出するという数式。だから、

なにやら、神様が、宇宙の法則である物理学と宇宙を記述する言語である数学に隠した暗号みたいではありませんか。
という風に、ミステリアスなイメージを抱かせる。それがロマンになり、数学オタクを惹きつけることに…。

もうひとつ。宇宙を記述する方程式を研究していると素数が突然顔を出すことがあるという。これについて、

言葉は悪いのですが、ごちゃごちゃした、ある意味汚い現実世界に、美しい天女が舞い降りたような、現実か夢かわからない状況があるのです。
と筆者。あぁ、天女が舞い降りるようなユメウツツ…。でも、やっぱり数学オタクにしか、分からないだろうなぁ~。

素数はなぜ人を惹きつけるのか (朝日新書)
竹内 薫
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