国家と教養/藤原正彦

国家と教養 (新潮新書)』を読んだよ。教養は怖い。

藤原先生の新刊を読むのは久しぶり。既刊のもので読みたい本リストに上がっている本が幾つかあるけど、最近のものの方がより過激になりつつあるような…。まぁ、その辺りが藤原先生の本の楽しみでもあるんだけど。で、今回はどのくらい過激になっているか、楽しみ。

内容的にはタイトル通りだけど、「国家」と「教養」はちょっと分断されているという感じ。ざっくり言うと前半が国家の話、後半が教養の話と言ってもいいかも。

冒頭は冷戦終了後の日米関係について。アメリカに狙い撃ちされた日本を嘆き、そのアメリカを糾弾するところから始まる。そして、日米の差は情報格差。情報量もあるけど、価値のある情報を取捨選択する能力の違いが大きく、その嗅覚は教養によって養われるということ。でも、その教養って何なのか…。結構、難しいよね。

その後は、紙数を大量に消費して、主にヨーロッパを中心とした教養の歴史。ここでは、英仏独のものの考え方の違いがよく分かる。そもそも教養の対する考え方が違うから。それが世界史を変えていく。特にドイツの考え方は特徴的だよね。日本に似ているし。

振り返って、日本はどうか?武士道精神に代表される日本古来の形を忘れた教養が跋扈している戦後の日本。それに対し、

西洋人にとってはともかく、日本人にとって、日本人としての形から切り離された教養とは、まさに根無し草であり、国難に当たって何の力も発揮できないひ弱な存在だったのです。
と藤原先生。基盤の上に立つ教養ではないんだよね。上っ面だけの教養…。

最後に民主主義との関係について、

国民が教養を失い、成熟した判断力をもたない場合、民主主義ほど危険な政治形態はありません。民主主義は最悪の形態に成り果てます。各国の国民が十分な教養をもつようにならない限り、混迷した世界の現状は、今後永遠に続くということです。
と言う。いや、本当にヤバイかも。民主主義を根底から揺さぶる教養。怖くなってきたわ。

国家と教養 (新潮新書)
藤原 正彦
新潮社
売り上げランキング: 686

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ