日本の難点/宮台真司
『日本の難点 (幻冬舎新書)』を読んだよ。社会学ってなんだろ。
宮台真司氏を初読み。いきなり難解な本を選択してしまったのかもしれないけど、氏の著書はほとんどこのペースなのかも。あとがきで、「記述の難解ではなくて、事柄の難解さである。」って言っているけど、そうでもないような。やっぱり言葉の難解さ。難しい言葉と独自の言葉が頻繁に登場するから。
ということを前提に、本書の紹介。
タイトルは「日本の難点」だけど、内容的には「宮台版・日本の論点」。現代日本の問題点を社会学的立場から洗い出すという感じ。
第1章では人間関係について。特にグローバル化が何をもたらすかという議論では、本書のキーワードが続々と登場するよ。例えば、<生活世界>。
<システム>の全域化(これがまさにグローバル化であるけれども)によって<生活世界>が空洞化する。
社会が包摂性を失うのです。と筆者。この「包摂性」も本書のキーワード。だから、包摂性を回復するためには、「個人の自立」より「社会の自立」であると。現代社会は「自己責任」というキーワードで進んでいるけれども、やっぱり地域とか家族とかの相互扶助の考え方が必要なのかも。
第2章の教育論で登場するのは、「感染的模倣」というキーワード。
「本当にスゴイ奴」には浅ましい印象がなく、自分がある程度スゴイ奴であることが分かっているから、その上の「本当にスゴイ奴」になりたがるのだと。その上で、
「本当にスゴイ奴」を探し求めるとは、「ありそうもない衝動」に突き動かされる人間を“思わず”探し求めることであると同時に、そうした存在に“思わず”「感染的模倣」をすることを通じて、自分自身が「ありそうもない衝動」に突き動かされる存在になっていくことだ、というふうに思います。これって、齋藤孝氏の「あこがれ」教育論に近いかも。
第4章の米国論では、アメリカという国の特徴をコミュニティとアソシエーションという言葉で説明しているよ。
コミュニティは自生的な事実性ですが、アソシエーションは目標を共有する者の集まりです。通常の国家はコミュニティだと観念されますが、米国だけは完全に違うのです。うん、これでアメリカという国の考え方がスッキリ分かるような気がするなぁ〜。
最後は日本論。
昨今の日本の政治はますます迷走しているけど、これをズバリ言い当てるような言葉があるよ。
統治権力のエリートたちが「民主的決定に任せますよ」と念押ししつつ、心の中で「どうなっても知らねえよ」と呟くような状態です。これを宮台氏は「民主的決定の非社会性ゆえの市民政治化」と表現する。分かり難いでしょ?
難解な部分がありながらも、現代日本のありかたをズバリ一冊でまとめているので、これは読む価値があると思うよ。それにしても、社会学って一番理系っぽくない学問のような気がするなぁ〜。
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