楽隊のうさぎ/中沢けい

楽隊のうさぎ (新潮文庫)』を読んだよ。今の自分にもうさぎが欲しい。

新潮文庫編集部が毎年出している「中学生に読んでほしい30冊」シリーズ。ということで、夏休みはこの中から1冊ということで本書。

主人公は、奥田克久という中学生。中学に入学してから吹奏楽部に入部し、打楽器パートを担当することになる。まずは同級生で同じパートの部員との関係。そして、同じパートの上級生との関係から、人間関係が築かれていく。その間にも小学校が同じだった同級生との関係、両親との関係の中で、いろいろな経験を積みながら、成長していく。

2年生になると、打楽器パートでも重要な役割を担うようになり、下級生、上級生、さらに卒業した先輩たち、先生との関係も絡んでくる。そして、気になる女子も。

少しだけ、克久の成長の過程を追ってみる。
1年生の最初は、ひたすら机を叩くだけの練習。単調ではあるけれども、音の粒が揃うと気持ちがいいことを知る。

音の粒が揃うと、身体の血の巡りが良くなる。克久は心臓が微笑するような感覚がそこにあるのを発見した。
と。

そして、本番での大会では、

そこにあるものは、目に見えるものではなかった。が、克久は全身で、そこに確かにある偉大なものに参与していた。入るとか加わるとか、そういう平たい言葉では言い表せない敬虔なものであった。感情というようなちっぽけなものではなくて、人間の知恵そのものの中に、自分が存在させられていた。それが参与ということだ。
という「参与」という感覚に気がつく。

最後は、

幸福がそこに立っているという輝かしさだ。
に辿り着く。中学生がこういう経験をすることが貴重だよね。でも、実体としての中学生はただただ夢中なのかもしれない。小説だから、この体験が後付けで概念化されるんだろうね。あぁ、疑似中学生になった感じ。
楽隊のうさぎ (新潮文庫)
楽隊のうさぎ (新潮文庫)中沢 けい

新潮社 2002-12-25
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