天才/石原慎太郎

天才 (幻冬舎文庫)』を読んだよ。意外と知らなかった…。

内閣総理大臣田中角栄の自伝風小説。しかも、筆者が石原慎太郎。単行本が出た時に、あの石原慎太郎があの田中角栄をどのように描くのかという点でちょっと注目。そして、文庫版も意外に早く出た。しかも、字がデカイ。なんでこのポイントなんだろ。あっ
本文には何の関係もないけど。

内容としては、田中角栄の生涯をざっくり知るにはちょうどいい感じ。その生い立ちから政治家になるまで、そして、政治になってから、総理大臣になってから、脳梗塞で倒れてから引退、死の直前まで。それらが、「俺」という一人称で綴られているよ。

では、その「俺」がどんなことを語っているのか。誰もがそうだけれども、幼少期の体験がその後の人生に大きく影響を及ぼすことが多い。で、「俺」は、

それで俺が幼いなりに悟ったというか、これからの人生のために体得したことは、何事にも事前のしかけというか根回しのようなものが必要ということだった。
とか、
金の貸し借りというものが人間の運命を変える、だけではなしに、人間の値打ちまで決めかねないということをその時悟らされたような気がした。
と。後者の「金」には、生涯に渡って、彼の身につきまとうことになろうとは…。

そして、佐藤首相の時代。彼は通産大臣。当時の福田赳夫外務大臣の失態について、

これは福田の責任というより、もともと無能で腰抜けの外務省という役所の限界の露呈としかいいようがない。
と言う。そっか、これが彼の娘眞紀子の「伏魔殿」発言に繋がっていくのかと思うと、不思議だよね。あぁ、小説だから石原の演出かもしれないけど。

最後に、その石原慎太郎は彼について、どう言っているか。

そのために彼はアメリカという支配者の虎の尾を踏み付けて彼等の怒りを買い、虚構に満ちた裁判で失脚に追い込まれたが、その以前に重要閣僚としてアメリカとの種々の交渉の中で示した姿勢が明かすものは、彼が紛れもない愛国者だったということだ。
と「長い後書き」で言っているよ。ロッキード事件アメリカ政府の陰謀か。こういう展開になるとは思っていなかったので、意外な結論。いや、ここでは「愛国者」ということに注目すべきだろうね。こんな政治家はもう現れないだろうね。

天才 (幻冬舎文庫)
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