新釈 走れメロス/森見登美彦

新釈 走れメロス 他四篇 (角川文庫)』を読んだよ。メロスの本当の気持ちはわからない。

森見登美彦氏のKindle本を一気に3冊も買って積ん読にしていたけど、最近になって徐々に読み始めて、ついに3冊目。3冊も読むと、森見氏の論調というか、傾向と対策が読めてくる。それが癖になるかならないかが、4冊目に手を出すかどうかの分かれ目になるんだけど…。

本書は表題作の他4篇の短編集。とは言え、5篇が微妙に絡み合っていて、登場人物が主人公になったり、脇役になったり。特に、最初の「山月記」に登場する斎藤秀太郎という人物は本書全体として象徴的な人物として位置づけられているような…。その斎藤という人物。

人間の文明というものは、突き詰めればただ言葉と数学のみに拠っている。数学を選ばぬ以上、言葉を極める人間が最もエライに決まっていると彼は言った。それゆえに俺はエライに決まっていると。
と、甚だ勘違い野郎として描かれているよ。そう、この勘違い野郎が森見氏の小説の傾向と対策の肝になる。

さらには、

何者にも邪魔されない甘い夢を見続けていたいがために、いつ果てるとも知れない助走を続けて、結局俺は自分で自分を損なったのだ。
と青春にありがちな甘い思いをいつまでも引きずっている感じ。いや、それが青春そのものなんだろうけど。

桜の森の満開の下」では、

なぜならば、奇想天外な品々に囲まれて息をひそめ、好きなように文章を書き散らしていると、時折、もうどうしようもなく、幸福で幸福でたまらない気持ちになるからでした。いつまでもこの時間が続けばよいと思えるからでした。
とも。あぁ、これも人生が一生続くと勘違いした青春の大きな勘違い。そうそう、自分もそんなようなことを考えていたっけ。それを思い出させてくれたのもこの小説もおかげだね。

新釈 走れメロス 他四篇 (角川文庫)
森見 登美彦
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