道路の権力/猪瀬直樹

道路の権力 (文春文庫)』を読んだよ。改革とは戦いだ。

今となっては、「元」東京都知事猪瀬直樹氏。本職はノンフィクション作家なわけで、政治の世界を描いているうちに、政治の世界に引きずり込まれ、そのまま政治を仕事としてしまった典型的なパターンだよね。結局、「素人」でしたと言って、辞任してしまったけれども。
その猪瀬氏が本格的に政治家と接触するようになったきっかけが、小泉元首相の行革断行内閣の成立。その中で、特殊法人改革の目玉として、日本道路公団をはじめとする道路関係四公団の分割民営化を猪瀬氏が任されることになる。そのことと経緯を洗いざらいにしたのが本書っていうわけ。

本書は二部構成。第一部は「行革断行評議会編」で、小泉内閣のもと、石原行革担当相(当時)の諮問機関としての行革断行評議会での活動をまとめたもの。いわゆる最初の突破口なわけだけど、冒頭から国交省との対立。そして、道路族と言われる政治家との対決も始まる。そんな話の中で突然登場するのが太宰治

太宰は、国鉄道路公団も民営化したらよい、と知っていた。陸軍も海軍も、中枢は戦闘集団ではなくただの官僚機構にすぎなかった、と結果をみて太宰はわかったのである。
といい、道路公団に代表される特殊法人は戦前の陸軍と同じだと猪瀬氏。もちろん、太宰の当時に道路公団が存在していたわけではないけれども、同じような組織(陸軍)があって、失敗していたってこと。歴史は繰り返すか…。

第二部は「道路公団民営化委員会編」。最初の壁は人選。ありとあらゆる方法を使って、猪瀬氏の委員会入りを阻止しようとする抵抗勢力。そして、委員会が始まると、抵抗勢力国交省だけでなく、道路公団も大きな抵抗勢力となる。そこでも、猪瀬氏の「誰のための民営化なのか」という原点となる発想はブレない。

彼らには道路四公団の民営化は特殊法人改革の一環ということ、一部の投資家や道路公団の職員のためではなく国民のための、道路利用者のための改革であるとの認識がきわめてうすい。
と。そう、政治とは国民のため。それが政治の役割なのに。

なんだか、都知事にならなかった方が猪瀬氏らしかったような気がする。本書の原点『日本国の研究』も読まなくてはいけないね。

道路の権力 (文春文庫)
道路の権力 (文春文庫)猪瀬 直樹

文藝春秋 2006-03-10
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