陰陽師 飛天ノ巻/夢枕獏

陰陽師 飛天ノ巻 (文春文庫)』を読んだよ。博雅はよい漢。

陰陽師シリーズの第2弾。第1弾が面白かったので、この第2弾はだいぶ以前にkindle本で購入済み。積読状態だったけど、やっとこの度読了。
そして、今回も安倍晴明源博雅の名コンビによる事件解決の物語集。いつものように晴明の謎解きは圧巻だけど、それはもうこの物語の前提条件になっているよね。

さらに、それぞれの物語の面白さに加えて、彩りを添える描写もいい感じ。例えば、博雅が晴明宅を訪れる際のシーン。

繁るにまかせているようにも見えるが、よくよく眺めてみれば、薬草として利用できるものが多い。博雅自身にはわからないが、意味のないように見える他の草や花も、案外晴明にとっては意味のあるものなのかもしれない。
とか、
ただ生えるにまかせているだけでなく、どこかに晴明の意志が働いているからなのだろう。
という感じ。この、草花の繁りは意味があるのかないのか、微妙な状態がこれから始まる物語の危うさを匂わせるし、晴明の不思議さも醸し出しているよね。

そして、今回の注目はワトソン役の博雅自身についてのこと。

「そうさ。博雅という才能、あるいは 呪 は、この晴明という呪にとっては、対のようになっているものではないか。博雅という呪がなければ、晴明という呪などは、この世にないも同然かもしれぬぞ」
と晴明自身から言わしめるほど、持ち上げられる。さらには、
その自分の奏でる笛の感応力に、博雅自身が気づいてないという節があるようなのも、まことに好ましく、博雅の友人である安倍晴明が、おりに触れて言うごとくに、この人物が、
“好い漢である”
ことを示しているように、筆者には思えてしまうのである。
と筆者自身の言葉まで出て来るよ。うん、この物語にそこはかとなく漂うやさしさは、この博雅から発せされているように思うよ。第3弾も期待できそうだな…。

陰陽師 飛天ノ巻 (文春文庫)
文藝春秋 (2012-09-20)
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