陰陽師 付喪神ノ巻/夢枕獏

陰陽師 付喪神ノ巻』を読んだよ。鬼にもヒトの心アリ。

陰陽師シリーズの3巻目。率直に言ってしまうと、面白いんだか、面白くないんだか分からない…。でも、3巻まで読んでしまうと、まぁ次も読んでみようかという気になるのが、摩訶不思議。ということで、4巻目もKindle本で入手済み。

で、今回は2つのキーワードに着目してみる。
1つ目は「鬼」。この物語では鬼の存在が欠かせないから。では、その鬼とは何なのか。

「鬼が人の心に棲むからこそ、人は歌を詠み、琵琶も弾き、笛も吹く。鬼がいなくなったら、およそ人の世は味けないものになってしまうだろうな。それにだ──」
と晴明。鬼との共存…。いや、現代でも鬼のような恐れの存在があるからこそ、歌を歌ったり、楽器を弾くのかもしれないね。

もう一つは「呪」。

「おまえが、あの桜の花びらが落つるのを見て、美しいと想ったり、心を動かされたりしたら、それはおまえの心の中に、美という呪が生じたということなのだ」
と晴明。「美という呪」という概念が論理的には理解し難いけど、感覚的には分かる。結局は鬼と同じなのかもしれないね。

さらに晴明は、

「人が、それを見、それを石と名づけて──つまり、石という呪をかけて初めて石というものがこの宇宙の中に現われるのだ」
とも。いや、これは無理矢理感有り。いつものように、博雅を煙に巻く手法なのかもしれないけど。

最後にその博雅。

「晴明、人の世に関わるのもほどほどにせい。我等が人の世に関わるは、 所詮座興よ。どうだ、晴明、ぬしもそうであろう」
と珍しく晴明に釘を刺す。うん、やっぱりこの小説の面白さは、この二人の掛け合いにあるのかもしれないね。