地下鉄は誰のものか/猪瀬直樹

地下鉄は誰のものか (ちくま新書)』を読んだよ。東京都知事選挙の結果に影響があったのか…。

『東京の副知事になってみたら』に引き続き、猪瀬直樹氏。
この『東京の…』は、東京都全般の課題とその対応について書かれているものだったけど、本書ではその中の地下鉄に完全に特化。道路公団といい、この地下鉄といい、交通行政は猪瀬氏の得意分野なのか…?まぁ、交通も「土地」に係わる部分が大きいけどね。
乗り物好きのアッシにとっても、交通に係わる政治的な話題も気になるわけで、本書が本屋に並んだ直後から目を付けていた本。

内容的には、猪瀬氏の主張する東京メトロ都営地下鉄の統合にまつわるお話。基本的に、統合すべしがスタンスだから、その優位性を裏付ける事実とデータを述べているよ。
その中で一番は、やはり利用者の利便性。東京の山手線の内側は地下鉄網で張り巡らされているけれども、メトロと都営の乗り換えがその利便性を損ねている事例が多数。
まずは、料金。乗り継ぎ割引っていうのがあるけど、たった70円。なんだかなぁ〜とは思っていたけど、それを考えると多少の遠回りをすることもあるのは事実。
そして、乗り換えの不便さ。事例として、九段下の駅が紹介されているけれども、壁一つを隔てて、メトロと都営が同じホームを使っているとは…。九段下は馴染みのある駅だけに、今度じっくり見てみようと思う。

では、統合の可能性は…。
都営の赤字をメトロが被るという印象が強いけど、実際は大江戸線の開通で乗客数は伸びていて、毎年赤字を返済している状況が続いている。メトロも副都心線を最後に新線建設の負担はない訳で、両者の統合は全く問題なさそう。で、結局、統合反対派は東京メトロ側のみということになりそう。

では、その東京メトロという会社は何者なのか?ということで、その歴史が展開される。
そこには、日本で始めて地下鉄を開通させた早川徳次強盗慶太こと五島慶太の争いという物語があるわけ。読めば読むほど、五島慶太のやり方には気分が悪くなるばかり。心情的には早川側を応援する気分だけど、結果は事実上の早川側の敗北。喧嘩両成敗でその後の営団地下鉄の設立ということになるんだけど。

さて、話を元に戻して、利用者の利便性について。
猪瀬氏の思いついたことが、アッシ的にはなるほどと思わせること。それは、「定期代も安くなり、企業にもメリットがある。」ということ。猪瀬氏は東京商工会議所会頭にもその提案を伝える。これによると約200億円もの経費削減になるのだとか。これは凄い効果だよね。これで東京が元気になれば…。

毎日乗っている地下鉄も、その背景や現状を知ると、面白いよね。運転手や車掌、ましてや駅員は、こういう事実を知っているのか…。知っていたとしたら、どう思って仕事をしているのかとも思う。
さて、石原知事。どう動くか。そして、副知事としての猪瀬氏の今後が注目されます〜。

地下鉄は誰のものか (ちくま新書)
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