そこに日本人がいた!/熊田忠雄

そこに日本人がいた!―海を渡ったご先祖様たち (新潮文庫)』を読んだよ。まさにグローバルな日本人。

副題が「海を渡ったご先祖様たち」。ご先祖様っていうと、かなり遡った感じがするけど、本書に登場するご先祖様は基本的には明治から戦前に掛けての人たちが対象。勿論、江戸期の人たちも登場するけど、彼らは自分の意思で海を渡ったわけではなく、漂流という事故の結果がほとんど。と、書いてしまったけど、本書の中心は「自分の意思で海外に出ていった日本人」の話。彼らは、どんな事情で、どんな理由で、日本を脱出していったのだろうか。

まずは、海外で一旗揚げようという人たち。当然、失敗して帰国した日本人のいただろうけど、本書で紹介されているのはその成功例。持ち前の勤勉さと熱心さで成功しているわけだよね。さらに、世界情勢を日本に伝える役割も担っていたという事例も。マダガスカルでは、島に寄港したバルチック艦隊の動向を通報したホテル経営者とか、イスタンブールでは、海峡を通過するロシア黒海艦隊を監視し、本国へ暗号を使って打電していた貿易会社の経営者とか。日露戦争での勝利の陰には、これらの人々の協力があったとは…。

その他のパターンとしては、労働者としての移民とかも事例多数。そして、もっと特徴的なのが、地域性。海外に渡った人たちの多くが、長崎とか熊本の人たち。結局、海外事情にアクセスする機会もあっただろうし、他の地域と比べて情報量も多かったんだろうね。
最後に忘れてはならないのが、いわゆる「からゆきさん」たちのこと。彼女らの出身地もほとんどが長崎と熊本。そして、どこの土地に行っても、必ずからゆきさんがいる。そして、ほとんどの人たちが、その儲けを本国に送金していたという。

日本人の逞しさがここに有り。それに比べて現代人。当時と比べて、海外の情報量は格段に増えているはずなんだけど、今の日本人は本当にグローバル化に対応できているんだろうかと疑問になるわけで。やっぱり、ハングリー精神の不足ってことかなぁ〜。

そこに日本人がいた!―海を渡ったご先祖様たち (新潮文庫)
そこに日本人がいた!―海を渡ったご先祖様たち (新潮文庫)熊田 忠雄

新潮社 2010-05-28
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