生きていく民俗/宮本常一

生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)』を読んだよ。生きるって大変。

『忘れられた日本人』をひょっとしたことから知り、読み始めた宮本常一氏の著作。民俗学って特に興味があるわけではなかったけど、日本人の原点っていうか、我々の先祖はどうやって生きてきたのかを知ることは、現代に生きる我々を知ることにもなるのだと痛感する次第。例えば、童唄の「ずいずいずっころばし」に茶壺という単語が出てくるけど、この茶壺の意味が本書で解説されているよ。何も考えずに、小学校の音楽の時間に歌っていたけどね。

で、本書。題名の「生きていく」とは民族が生きていくわけではなく、日本人が「生きていく」ことを表しているわけ。だから、副題の「生業の推移」の方が本書の内容を端的に表しているかも。

序章の職業観の話から始まって、第1章はくらしのたて方。昔の生活は自給自足が原則だと思っていたけど、それは思い過ごし。

そして日本には、早くからこうした自給中心の村と交易中心の村があったと思われる。
と。そして、交易中心の村から、職業の分化が発生してくるわけ。単なる役割分担だったんだろうけどね。

そして、第2章は職業の起り。どちらかというと貧しさゆえ「生きていく」ために、いろいろな職業が起こっていったと読み解く。人身売買の話も登場するわけで、明治大正時代の紡績や製糸の女工などは、こうした前借(実質的な人身売買)で工場に雇われていたという。それが、日本の繊維産業の発展に寄与しているんだけどね。

最後は、都会と職業。町の発達と農業の関わりを述べているよ。

日本の都市も新しい産業も、古くからの産業の発達にともなって新しい産業が進展してきたのではなく、古くからの産業構造はそのままにして、その中に含まれている古い家族組織や労働慣習に基づいて新しい産業と産業社会を生み出してきたといっていいのである。そしてこの古い慣習や組織が今日の日本の繁栄を生み出しているともいえるのである。
そう、古い構造物の上に立つ新しい構造物。構造的には複雑なんだろうけど、それが日本人の生き方だったのかもしれないね。だからこそ、その古い構造物を知ることが大切なんだろうね。
生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)
生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)宮本 常一

河出書房新社 2012-07-05
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