消える大学 生き残る大学/木村誠

消える大学 生き残る大学 (朝日新書)』を読んだよ。国公立の方が厳しい現状かも。

最近、大学関連の本が続く。特に、研修の為というわけではないんだけど、最後のレポート提出のためには、念の為に情報は多めに仕入れておいた方がいいかとも思って。

本書の前半は、大学の設立形態別(国公私立)に、その現状と課題を探るもの。国立大学においては、ご存知のように全ては独法化の影響。そして、競争的資金の大学間格差も如実に現れているし。これには、旧帝大系の競争的資金の取り方のスキルと実績の差が一番大きいのだとか。スタッフの問題でもあるよね。

では、地方国立大学はどうなるか。
地域連携・地域貢献というキーワードがあるけれども、さりとて、公立大学と私立大学との差別化が図れるかという問題。学費では十分に競争力はあるけれども、それ以上のものを提供できないとね。和歌山大学琉球大学では、観光立国としての地域貢献に力を入れているとか…。私立大学並みの戦略だよね。

後半は、分野別の事例検証。とは言っても、最近キーワードとなっている分野、医歯薬系学部と法科大学院について。
医歯薬系については、6年制課程が誕生してそろそろ最初の卒業生が出る時期。それでも、色々な問題を抱えている。医については、医者不足による定員増への対応について。歯薬については、逆に歯科医、薬剤師の供給過多による定員割れ問題。

国は医療人養成に関して、長期の展望を持つべきだ。
と筆者。国家試験合格という目標があり、それに向かって6年間も勉強したのに就職口がないなんて…。ある意味、悲劇だよね。
もうひとつの法科大学院についても、同じ。
法曹界への人材供給を目的としていたのに、今では志願者激減。募集停止する大学院も出始めている状態。筆者は、これも文部科学省法務省の縦割り行政の弊害だと指摘しているよ。

最後は、今注目の就活。
社会人基礎力とか就業力とかいう言葉が流行っているけれども、それが大学教育とどう結びついていくのか、実はよく分かっていない。これに関して、本文からの引用。

「今の大学のやるべき仕事の一つは、従来型の職業構造ではなく、これからの職業構造に対応できる基本的な力を学生に与えることだと思います。従来型の職業に結びつけるようなキャリア教育ではなくて、新しい職業構造に中で仕事を見つけて働けるような態度を学生に身につけさせるような教育ですね」
と。某教授。でも、やっぱり、これが難しい。暗中模索といったところなのは確か。だからこそ、いろいろなところで話題になるんだろうけど。
社会的な要請が強まる中で、本当に日本の大学はどこに行くのか。
消える大学 生き残る大学 (朝日新書)
消える大学 生き残る大学 (朝日新書)木村 誠

朝日新聞出版 2011-04-13
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