失速・事故の視覚/柳田邦男

失速・事故の視角 (文春文庫 240-1)』を読んだよ。政治的殺人か…。

柳田邦男氏の航空機事故追跡ルポシリーズ(あっ、自分が勝手に呼んでいるだけ)の1冊。昭和51年の『失速』と昭和53年の『事故の視覚』という単行本から航空機問題に絞って、再編集したもの。ということで、事故の事例は古いものだけど、システムという観点で見ると、十分に現代に通じるものなのは確か。

単行版のあとがきが本書で紹介されているので、ここではまとめてそれを抜粋。
まずは、『失速』について。

ロッキード事件は、日本の戦後史を画する一大事件であり、さまざまな角度から書かれなければならないが、本書の第?部は、この事件を、アメリカの航空産業全体の眺望の中でとらえ、その歯車の中にわれわれがどのように噛みこまれているのかを、俯瞰しようとしたものである。
と筆者。そう、航空産業はシステムが巨大であるが故に、それによる得られる利益も大きいということで、あのロッキード事件のようなものが起こり得る。事故そのものよりも、そういう背景をもその要因となり得るってわけだよね。

もう一つの『事故の視覚』については、

なぜここで事故調査という言葉の定義をあらためて持ち出したかというと、本書をすでに読んだ方は理解していただけると思うが、事故というものを過失責任論優先の発想でとらえがちな日本の精神的風土を逆転させて、事故調査を安全技術論としてとらえる視点(フィロソフィー)を定着させる道を探ってみようかというのが、本書のねらいだからである。
と言っているよ。『マッハの恐怖』全日空羽田沖事故も同じような事例だよね。事故調査委員会の結論はパイロットのミスだったわけだからね。

そして、大切になってくるのがシステム的思考。

システム的思考のないところには、合理的な事故調査は成立し得ない。
と筆者。日本人はどうしても精神論というか、周囲のことも考え過ぎて、事実の把握が曖昧になるよね。事実と責任は別物という考え方をしないとダメだよなぁ〜。
失速・事故の視角 (文春文庫 240-1)
失速・事故の視角 (文春文庫 240-1)柳田 邦男

文藝春秋 1981-07
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