この国のかたち〈5〉/司馬遼太郎

この国のかたち〈5〉1994~1995』を読んだよ。ネタが尽きないのがスゴイ。

「この国のかたち」シリーズの第5弾。毎回、同じようなテーマなんだけど、ちょっとづつネタが違って、話が尽きなくなってきている感じ。雑誌の連載モノなので、尽きることは前提ではないんだろうけど、それにしても、いろいろとよく出てくるものだと思う。取材、調査の量が凄いのだろうね。

さて、今回はどんなテーマか。前回までは、どちらかというと幕末から明治に掛けての話が多かった傾向にあるけれども、今回はもう少し時代を遡る。鎌倉時代から室町時代が中心かも。
その中でも、神道についての話題に多くを割いているよ。そう、歴史の教科書を見ても、仏教のことは書かれていても、神道のことはほとんど書かれていないような。だから、神社って何?って問われて、それなりに答えられる日本人って少ないかも。
冒頭でこんな記述があるよ。

むろん、社殿は必要としない。社殿は、はるかな後世、仏教が伝わってくると、それを見習ってできた風である。
と。う〜む、なるほど。そう言われると、確かにそう。山を神様として崇めるわけだから、社殿の必要性はないわけだし。そこに、仏教の影響があるわけなんだよね。

そして、神道の特徴のもう一つ。教義がないわけだから、論じないこと。神道は限りなく沈黙に近い寡黙。それが中世になると能弁に語り始める。これも、仏教の影響だとか。うん、それでも神道は寡黙であって欲しい。だって、ご神体が教義を語るなんて、想像したくないよね。

鉄の話題にもかなりのページ数を割く。鉄の生産には火を使う。古くは木炭を使っていたわけだけど、それは木材を消費することになり、しいては森林の伐採が大規模に進む。日本の自然環境は、その点で恵まれていた。

ともかくも日本では樹木の再生力が高かったことが、その後の日本史の展開の基礎的なものになった。
と筆者。鉄を使った道具の進化は、人類を発展させたし、文化にも影響を及ぼすからね。

本書の最後は、口述筆記した「人間の魅力」。幕末に活躍した人物について、つれづれに筆者が語る。どうも、司馬先生がこの時代の人物を語ると、誰もが魅力的に思えるから不思議。いや、本当に魅力的なんだろうけど、その語り口で魅力が増幅しているんだろうね。

この国のかたち〈5〉1994~1995
この国のかたち〈5〉1994~1995司馬 遼太郎

文藝春秋 1996-03
売り上げランキング : 437643


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ