数学に魅せられた明治人の生涯/保阪正康

数学に魅せられた明治人の生涯 (ちくま文庫)』を読んだよ。一庶民の戦争の記録。

“数学”という文字に反応して、すぐにメモ。図書館でも予約して借りたくらいだから、新刊はどんな本でも人気なのかも。“数学”というとそれほど借り手はいないと思っていたから、これは意外。
では、どんな内容か。
主人公は、茂木学介という人物。仮名となっていて、モデルになった人物は実在の人。本書の執筆に際し、筆者が実際にインタビューをしているよ。最晩年の頃だと思うけど。
タイトルには“明治人”となっているけど、これは主人公が明治生まれということ。だから、日清戦争日露戦争第二次世界大戦を経験している。このことは、この話のポイントになるよ。
そして、“数学”。数学好きの主人公が挑むのは、「フェルマーの最終定理」。戦争に明け暮れる時代は、それほど打ち込む時間は無かったけれども、戦後の晩年は、寝ても暮れても「フェルマーの最終定理」の証明にすべてを捧げる。

さて、実際にはどんな生涯だったのか。
前述の通り、明治に生まれ、二十歳そこそこで日清戦争に従軍。配属された部隊は、おとり作戦のおとり役に指示され、死を覚悟して突撃したが、敵側攻撃の失敗で死は免れる。そこで、中国人の苦学生の死に遭遇。これが心に留め置かれることになる。
その後、日本に帰り、ひょんなことから中学の教員に。就職が決まった直後の浅草見物の際にも、中国からの留学生が日本人に囃し立てられている場面に遭遇し、日本人に注意するも無力…。
その後、再び日露戦争で、満州へ行くも、帰国後は教員を辞めて、故郷の村の村長に就任。ここでは、得意の数学を活かして、灌漑工事などを進めることになる。
しかし、また戦争。
村の収入役とその息子の事件があったりで、この戦争について深く考えるようになる主人公。そして、村長を退任した後は、「フェルマーの最終定理」に没頭するようになる。
しかし、その理由は何か?単に数学が好きだからとか、研究を続けていたからという理由ではない。自分の人生の中で、過ぎて行ったそれぞれの墓標に思いを募らせたから…。詳しい理由は本書に譲るけれども、何となく理系人間としては分かるような…。

そう、本書は数学の本というより、戦争の記録。しかも、日清戦争から第二次世界単線まで生きたのは、この時代の明治生まれの人たちだけだからね。主人公は長寿だったのは、「フェルマーの最終定理」という打ち込むものがあったからかもしれないね。あっ、ちなみに、主人公は最後はこの定理の証明を達成します〜。

数学に魅せられた明治人の生涯 (ちくま文庫)
数学に魅せられた明治人の生涯 (ちくま文庫)保阪 正康

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