街場の大学論/内田樹

街場の大学論 ウチダ式教育再生 (角川文庫)』を読んだよ。文科省の本音はどこに。

副題が「ウチダ式教育再生」とあるように、筆者は内田樹先生。去年、大学を辞めたので、もう先生ではないか…。とは言っても、アッシ的にはウチダ先生という呼称は暫く変わらないと思う。

で、本書はそのウチダ先生が、ブログに書きまくった教育関係のネタ(ウチダ先生の表現)を、編集者が編集して1冊の本に仕上げたもの。1本のネタが短いので、比較的読み易く、気軽にスイスイと読める感じ。とは言え、先生のお考えには通底するものがあって、それは大学が生き残るためには、どうしたらいいかということ。幾つかのヒントと事例を以下に紹介するよ。

大学をどう存続されていくのかという議論に対し、大学教員の中には、そんな話はしたくないという意見が出るという話。経営とか金のことを全く気にしなくてもいいのなら、教育の中身の話だけをしていればいいんだろうけど、今はそういう場合ではないのに。ウチダ先生曰く、

しかし、それは家が火事になりかかっているときに「消化活動については聞きたくない。それより新しい家具の購入計画やその配置について話したい」と言っているのに似ている。
と。最後に「ファンタスティックだ。」とも。これが大学を現実…。

大学の自己点検・評価活動についても、その事例と比喩が分かりやすい。
自己点検・評価とは問題点を洗い出す活動なのに、「大学教員は自分たちの美点をショウオフすることに熱心である」と。

どうも教員のみなさんは「堤防の穴」の発見よりも、「穴はともかく、堤防の桜の木は美しい」とか「穴はともかく、堤防から見える富士山はすばらしい」というようなことを言いたてる方にいそがしい。
うん、この表現も凄くよく分かるよね。ちなみに、「問題点が表面化しないような考課システムに作り替えてほしい」とかなりの教員の方々が提言されたとか…。世間を舐めているか、知らないか…。

本書の後半は、文科省官僚との対談をまとめたものと、対談そのものを収録したもの。大学教員と文科省官僚との対談なんて、ウチダ先生だからできること?なんて思うけど、大学教育について、かなり本音トーク。あとがきにも書いているけど、この対談でウチダ先生の考え方が少し変わるよ。それは、文科省の狙いを大学側がどう解釈するかの問題として行き着く感じ。なんせ、文科省の指導って、基本的に罰則がないからね。有っても、補助金の削減くらい。緩〜く操縦されているって感じだよね。結論的には、評価疲れしないようにね…ってことなんだよね。

街場の大学論 ウチダ式教育再生 (角川文庫)
街場の大学論  ウチダ式教育再生 (角川文庫)内田 樹

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