弱肉強食の大学論/諸星裕,鈴木典比古

「弱肉強食」の大学論 生き残る大学、消える大学 (朝日新書)』を読んだよ。かなり真面目な内容なので、タイトルに違和感…。

大学改革についてメディアで発信を続ける桜美林大学の諸星先生と、前ICU学長で現在はAIU学長の鈴木先生による対談集。勿論、テーマは大学論。て言うか、ズバリ「昨今の大学改革に物申す」。

いきなり結論じみたことを書いてしまうと、冒頭に書いたミッションの問題に辿り着くということ。諸星先生曰く、

日本の大学には致命的な欠陥がいくつもあります。それを克服していかないと大学の未来はないと言い続けてきましたが、その欠陥の第一が、繰り返しますが、日本の大学にはミッションがない、ということなのです。
と。ここでは「繰り返しますが」と言っているけど、本書のそこかしこでミッションという言葉が語られる。だから、昨今の猫も杓子もグローバルという状況は何なのか?ミッションに基づいたグローバルへの取り組みなのか?と、二人は苦言を呈するわけ。

さらに、ミッションと入学者選抜について。

ミッションがないということは、選抜や合否の基準について、大学側が主体的な価値観を持っていないということを意味するはずです。しかしそういう発想がないから、結局、知識だけを競って入試で一点を争う、学力だけの一発試験に頼ってきた。日本の大学はそういう長い歴史を持っています。
鈴木先生。あぁ、ここでもミッション。ミッション不在による悪循環っていうやつだよね。

さらにミッションと大学教員の話が続き、いろいろ書きたいけど、今回は省略。

最後はリベラルアーツ。単なる教養教育だと勘違いしそうだけど、本来のリベラルアーツとは何ぞや。グローバル化が進む世界で、「個人vs全世界」という構図が見えてくる。諸星先生は、

だとするならば、「vs全世界」というスタンスの取り方に耐えられる、あるいは個として世界と向きあえる「個」の強さ、したたかさ、こういう個人の力が問われることになってきます。いわゆる「個」の確立です。
と言い、これこそが日本の教育に欠けている視点だとも。そう、人口植林型の人材育成ではなく、雑木林型が必要なのはこれなんだよね。

すべてが「ミッションに始まり、ミッションに終わる」。改めて認識させられる意外に真面目な一冊でした〜。

「弱肉強食」の大学論 生き残る大学、消える大学 (朝日新書)
「弱肉強食」の大学論 生き残る大学、消える大学 (朝日新書)諸星 裕 鈴木典比古

朝日新聞出版 2014-08-08
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