大学破綻/諸星裕

大学破綻 合併、身売り、倒産の内幕 (角川oneテーマ21)』を読んだよ。タイトルが大袈裟なような…。

『危機の大学論』でも登場した桜美林大学大学院教授の諸星先生の単著。内容的には『危機の大学論』とかぶる箇所もあるけれども、昨今の大学をめぐる話題は限定されているから、特にかぶりは気にしない。整理といった感じで読めばいいかも。

さて、以下で、大学を巡る話題とそれに対する諸星先生の持論を幾つか紹介。

ひとつ目が学生は勉強しないことについて。
これは専門領域の問題として捉える。データとしては、入学時に選択した専門領域をそのまま専門として3、4年次に上がっていく学生は30%程度だということ。7割の学生は他の分野に興味が変わるということ。ところが大学側はそれを知ってか知らずか、専門領域の変更を原則許していない。これでは、学生の勉強意欲は当然ならが低下するよね。専門領域の変更を許さないのは、教員側の都合でしかない。人気がないと縮小されるから…。

アッシが気になる女子大について。
諸星先生は、女子大の存在意義が理解できないという見解。あえて言うなら、「良妻賢母」というコンセプトとそれに沿ったミッションの大学だけであるとも。そして、アメリカの事例として、

こうして名門と言われる女子大学は独立した大学としてのアイデンティティを保ちながら、共学の他大学に依存しつつ存続しているのが現状です。
と言い、大規模大学とアライアンスを取りながら存続する女子大(セブン・シスターズ)の現状を紹介しているよ。
ここで、ミッションという言葉が出てきたけど、これは、本書のキーワードのひとつ。
独自のミッションが立てられるかどうか、そこが勝負の分岐点であり、絶対的な前提条件になるでしょう。
と言う。小規模大学はミッションが立てやすい。大規模大学はスケールメリットで生き残る。中規模大学が一番難しい立場。中規模でもミッションを立てられるか。あるいは大規模に吸収合併されるか…。

最後は大学のプロダクトについて。
大学のプロダクト、生産物は何かと考えた時に、つい「学生」って答えたくなるけど、それは違うと諸星先生。大学のプロダクトは「授業」であると。その発想から派生するのは、授業料の考え方。「授業」がプロダクトであれば、授業(単位)単価で授業料が設定されるべきではないかという考えも出てくるわけ。うん、これは筋が通る話で、近い将来はそういう方向へ行くような気がする。

そうそう、最近は秋入学も気になる話題。大学はまだまだ改革すべきところがたくさんあります〜。

大学破綻 合併、身売り、倒産の内幕 (角川oneテーマ21)
大学破綻  合併、身売り、倒産の内幕 (角川oneテーマ21)諸星 裕

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