思考する豚/ライアル・ワトソン

思考する豚』を読んだよ。豚に対する偏見…。

筆者はライアル・ワトソンという動物行動学者。そして、訳者は福岡伸一先生。実は本書も福岡先生の本の中で知った訳。それだけに本書の期待は大きかったんだけど、その厚さにちょっと手が出ず、しばらく放置。幸いにも図書館の予約が多かったので、すぐに読むことはなかったんだけど…。

さて、本書。あえて一言で言えば、豚を見直す本。人々の豚に対する偏見が強すぎるから。どう見直すかというと、その進化論的な位置づけとか、生物学的な分析とか、これまでの人類との関わり方だとか。どちらにしても、豚のアレコレが全て分かるという感じ。

冒頭では、筆者が豚に興味を持った理由を説明。豚はつかみどころがない生物。構造的には未発達で未分化であり、強情なほど原始的。にもかかわらず、猿やイルカと並ぶほどの高度な知性を持つという。こういう単純さと複雑さを兼ね備えるという矛盾に興味をそそられたのだと。
高度な知性を持つ理由はよく分からないけど、我々人間との共通性は「雑食性」ということ。

カワイノシシと我々の祖先とが、少なくとも旅仲間として同じ雑食性の道をたどり、警戒心とある程度の好奇心を持って互いをじろじろ見ていたと考えるとわくわくするではないか。
人間様としては納得できないかもしれないけど、進化の仕方が同じなんだよね。

そして、豚の役割。大半の豚は食べられてしまうけど、それ以外の目的で人間の役に立つ豚もいる。トリュフを探し出す豚、どんな犬にも負けないくらい仕事熱心な狩猟豚、盲導豚、牧羊豚、ショーガールならぬショーピッグ、はたまた軍用豚まで登場するよ。しかし、仕込みの難しさがあるという。

豚は人の指図を受けるのがあまり得意でない。そうなるには頭がよすぎるのだ。だから、同じことを繰り返す退屈な作業を快く感じない。
この点においては、確かに人間的。ひとところに留まらない、常に前向きなのかもね。

文化的にも人間と豚は関係が深い。

人間と豚の間には長い歴史の中を糸のように走っている絆があって、両者を結びつけているのは、人間を豚で、また豚を人間で表すような作法なのだ。
といい、人間は豚に魅せられているだという結論。

なんとも奇妙な結論だけど、これだけの豚と人間に関する状況証拠を上げて、述べられると、どうもそういう気にはなってくる。ブーブー言って、人間に食べられるだけの豚ではないことは十分認識したので、その点で筆者の目的は達成できたのではないだろうか…。

思考する豚
思考する豚ライアル・ワトソン 福岡伸一

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starとてもためになりました。
star「豚のことがわからないものを大統領にしてはいけない。」
starファーブルの昆虫記ならぬ、豚の観察研究記録。そして訳者は、あの福岡伸一さん。

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