全・東京湾/中村征夫

全・東京湾 (新潮文庫)』を読んだよ。身近そうで、実はそうでもないのが東京都民の東京湾

著者の中村征夫氏が出演していたNHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」を視聴。そういえば、椎名誠の本にもよく出ていたっけ、ということを思い出し、氏の著作を検索。一番身近な東京湾をテーマにしたものを選択した結果が本書。

中村氏の仕事は水中写真家。前半は東京湾のアチコチを潜水した際に撮影した生物たちの様子を綴る。特にお台場付近のヘドロの海に生きる生物について語る部分は驚くばかり。どう考えても生物なんていそうもない海にも、逞しくも生きる生物がいるなんて。

こういう生物たちを見ていると、東京湾に生物がいないと決めつけるのは人間の勝手な想像で、彼らはわれわれが思う以上にはるかにたくましいのだということがわかる。豊富な東京湾の幸である魚貝類だけが東京湾の生物だと思うのは大きな間違いである。われわれ人間の目に触れないところにも、こうした目立たないかわいい生物たちがいるということを知ってもらいたい。
イソギンチャク、ウミウシ、ホヤ、ゴカイなど海には美しい華が咲いているんだぁ〜。

東京湾の内湾の入口は、富津岬観音崎を結んだ線。それぞれの場所を取材した中村氏は、その共通点を発見する。それは、両者の漁師とも、そこには東京湾のゴミが流れ着く場所だと思っていること。確かにゴミが海流に乗れば、ぐるっと回って辿り着くのは、富津岬観音崎っぽいよね。特に富津岬はそのとんがり具合からいかにもゴミが引っ掛かりそう。

三章以降は東京湾の漁師の紹介。ノリ漁、底引き網船、潜水船での貝漁など。それぞれの東京湾へのこだわりを胸に、漁をする。そして、そのどれもが豊漁。東京湾でも、これだけの海の幸に恵まれているとは、本当に驚きだよ。

そして、人間と自然の関係。湾奥の行徳・浦安沖の三番瀬

スズガモたちは夜を待ち、日が暮れると市川市船橋市の沖合に残る三番瀬へと飛んでいく。夜明け前からノリやアサリや、底曳網の漁師たちで一日中にぎわう三番瀬に、夜はドッとスズガモが押しかける。三番瀬は人間や野鳥たちにとっても貴重な海なのである。
本書は昭和61年当時の話だけど、アッシの印象は、今の東京湾はその当時とそれほど変わっていないのではないかなぁ〜という感じ。さらにいうと、もっと良くなっているのではないかと。それでも、単なる希望的観測かもしれないけど。
とは言え、本書によって、多少は東京湾が身近に感じられるようになりました〜。
全・東京湾 (新潮文庫)
全・東京湾 (新潮文庫)中村 征夫

新潮社 1992-11
売り上げランキング : 497254

おすすめ平均 star
starあらゆる人に読んでもらいたい!
star別の姿に映る海

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ