動的平衡/福岡伸一

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』を読んだよ。また、読みたくなる福岡ハカセの本。

福岡ハカセの本は出る度に読んでいるのだけれども、今回の本もかなりの人気。図書館から借りるのにかなりの時間を要したよ。
で、今回の『動的平衡』は過去本と比較すると、最初のベストセラー『生物と無生物のあいだ』に近い内容。
生物は機械とは違う。機械の場合、パーツがひとつでも欠ければ、それは機械として機能しない。しかし、生物は違う。それがどう違うのかを「動的平衡」というキーワードで解説したって感じかな。

冒頭で興味深い話を展開。歳を取るとどうして1年が早く感じるのかという疑問に、分子生物学的に回答しているよ。それは体内時計の問題。細胞分裂におけるタンパク質の新陳代謝速度が遅くなることに起因するのだと。

タンパク質の代謝回転が遅くなり、その結果、1年の感じ方は徐々に長くなっていく。にもかかわらず、実際の物理的な時間はいつでも同じスピードで過ぎていく。だから?だからこそ、自分ではまだ1年なんて経っているとは全然思えない。自分としては半年くらいが経過したかなーと思った、その時には、すでにもう実際の1年が過ぎ去ってしまっているのだ。
第1章から、このような興味をつなぐ話。うまい掴みだよね。

そして、第2章からいよいよ生命活動とは何かを探り出す。
まずは、生命活動とはアミノ酸の並べ替えであるという。つまりは、タンパク質の合成と分解。

合成と分解との動的な平衡状態が「生きている」ということであり、生命とはそのバランスの上に成り立つ「効果」であるからだ。
この効果により、生命は環境に適応するように自分自身の状態を調整することができるのだと。そう、やっぱりパーツの問題じゃないよね。

パーツの組合せではないという証拠として、生物には細胞というパーツ間に、エネルギーと情報のやりとりがあるということ。そして、それは生命現象の効果でもある。さらに、その効果が現れるために必要なのが「時間」という観念。この不可逆的なものに対し、無理矢理に再プログラミングすることが、クローン技術であり、ES細胞技術。

時間に対して作用を及ぼせば、私たちはその分のツケをどこかで払わなければならないことになるだろう。それが動的平衡というもののふるまいだから。
「時間」まで制御しようとする人類。本当にそれが可能だと思っているのだろうか…。

最後は、エントロピーが登場し、動的平衡との関係でまとめているよ。

したがって「生きている」とは「動的な平衡」によって「エントロピー増大の法則」と折り合いをつけているということである。換言すれば、時間の流れにいたずらに抗するのではなく、それを受け入れながら、共存する方法を採用している。
と言い、生命はエントロピーの増大に追いつかれないように自転車操業をしているのだと。自転車操業って、イメージが湧くけど、生命ってお忙しいのね…。

生命とは、流れの中にあり、一瞬の「淀み」のようなもの。それでも、毎日を生きている自分。われわれはどこに行くのか、生物学的な解のヒントがここにあるのかなぁ〜。

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか
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