航空機は誰が飛ばしているのか/轟木一博

航空機は誰が飛ばしているのか(日経プレミアシリーズ)』を読んだよ。交通機関の仕組みの解明にワクワク。

去年の11月に金沢への出張があり、その際の移動に航空機を選択。航空機に乗るのは、かれこれ15年ぶりくらい。だから、乗る前から、子供のようにワクワク、ドキドキ。周りを見ても出張慣れしたサラリーマンがほとんどで、離陸時に手に汗を握っていたのはアッシだけだったかも。
で、羽田での離陸の際に滑走路が渋滞していたのが印象的。今から思うと8時台だったので、確かに離陸が混雑する時間帯だったんだよね。そんな訳で、ちょっと航空機のことが知りたいなぁ〜と思っていたところにちょうど本書が発刊。いいタイミングだよね。

まずは航空機が飛ぶシステム。飛行場、管制官の視点からの解説。管制官といっても、役割によって4種類の管制官がいるんだね。地上、滑走路、飛行場周辺空域、飛行場間の空域で、それぞれの役割が違うから。当然だけど、それぞれが航空機の運航に重要な役割を果たしているから、連携しあっているわけ。どれひとつ欠いても航空機は飛ばないよ。

そして、本書のメインテーマは、発着容量の考え方。
複雑な航空機の発着を、安全且つ効率的に運用するための考え方を解説する。その中で問題になるのは、定時運航をどこまで担保するかという点。日本の航空会社は定時運航では信頼性が高いよね。ただ、その為に、発着容量に余裕を持たせているのだとか。例えば、全天候型の発着容量の設定。航空機の場合、悪天候時は飛ばし難くなるからね。つまりは、常に好天時のダイヤ設定にしていれば、もっと飛ばせるのに…ということ。
勿体ないけど、新幹線と競合する日本の航空会社はそういう戦略を取らざるを得ないんだろうね。

さて、発着容量の考え方が理解できたところで、実際に羽田空港で国際線がどのくらい飛ばせるのかをシミュレーションする。
まずは現在の3本の滑走路の運用方法を説明。実はこれだけでもかなり複雑。風向き、天候による違いがまずは大きいよね。その他に羽田の場合は騒音対策による制約が大きいよね。基本は東京湾を有効に使っての、離着陸を想定しているからね。
あとは、航空機の大きさによる制約も。航空機が大きいと、後方乱気流の関係で後続機との間隔を十分に開ける必要があるから。特に羽田の場合はヘビー機の割合が多いので、その点で発着容量に不利なのだとか。

そして、今年の秋に共用化される4本目の滑走路。単純計算で、発着容量が増えるということにはならず、飛行場内の運用も複雑に。本書では、5本目の滑走路ができた場合の想定までしているけど。

最後は、羽田と成田の棲み分けの問題。筆者の見解は、

現在成田に就航しているアジア便の一部を羽田に移転させ、全体の需要を掘り起こした上で、「成田は日本の玄関、羽田はアジアへの窓口」という新たな棲み分けの下で、首都圏空港全体の効率を向上させることを目指していくべきと考える。
と言っているよ。千葉県の意向を考慮して、羽田を「アジアへの玄関」とは言っていないところがミソだね。これは多分に政治的問題を孕むし。

金沢へ出張した時の話に戻る。
こんな複雑なことをしながら、航空機が飛んでいるなんて、考えもせずに安心して乗っていられた訳。でも、結局はそれが大事なポイント何だよね。全航空機関係者に感謝です〜。

航空機は誰が飛ばしているのか(日経プレミアシリーズ)
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