100年の難問はなぜ解けたのか/春日真人

『100年の難問はなぜ解けたのか』を読んだよ。数学とはどこまで恐ろしい学問なのか…。

2007年10月にNHKスペシャルで放映されたことがある同名番組を書籍化したもの。アッシはその番組を見たけれども、どうもその記憶が薄いような。
で、もう一度、その難問に挑んだ数学者の物語を読みたくなり、図書館で見つけたその日に借りることに。

その難問とは「ポアンカレ予想」。そして、その難問を解いたのはロシアの数学者ペレリマン博士。
100年の難問と言われていただけに、ペレリマン博士は当然のごとくフィールズ賞を受賞したのだけれども、博士はそれを拒否。賞金は100万ドル。あ〜、もったいない…。

さて、その難問を解く長い物語の前に、まずはポアンカレ予想とはどんなものか。ずばり、「単連結な三次元閉多様体は三次元球面と同相である」というもの。これはあくまで数学的な表現なのだけれども、これが実は宇宙の形がどうなっているのかを予想した命題であるという。そして、

たった一本のロープを使うだけで、「宇宙の形が丸いか、丸くないか」を確認できるはずだとポアンカレは考えた。
とさ。これの凄さは、地球が丸いのを地球の外から見て確認のではなく、地球に居ながらにして確認すること以上の難しさがあるということ。うん、そう言われると、確かにそう。

そこで、ポアンカレが考えたトポロジーが登場。数学的には新しい分野。さらに、「ポアンカレ予想」の証明に取り組んだ数学者たち。玉砕した数学者は数々。彼らを本書では、「白鯨に食われた」と表現しているよ。

そして、「ポアンカレ予想」の解明に一歩近づいたのが、サーストン博士。「幾何化予想」という予想を提唱したんだけれども、実はこの「幾何化予想」はこれが証明できれば、同時に「ポアンカレ予想」も証明したことになるという優れもの。一つのアプローチが開けたわけだ。だから、当然サーストン博士はこの「幾何化予想」の証明に取り組みわけだが、何故かその証明を諦めてしまう。その理由の予想が本書に書かれているけれども、これも数学者らしくて、興味深い。

そして、ついにペルリマン博士が登場する。ペルリマン博士はこの「幾何化予想」と「ポアンカレ予想」を証明するのだ。しかも、トポロジーの考え方ではなく、旧来の微分幾何学と物理学を使って。その発表方法も不思議。ただ、インターネットに公開されただけ。
これに気がついた数学者たちが、ペルリマン博士を招聘し、講義をお願いする。そこで、「ポアンカレ予想」が証明されたことがハッキリするんだけど、その講義でその証明を理解した人は数少なかったとも…。

途中に挿入されている幾つかのコラムも分かりやすくて楽しめる。NHKドキュメンタリー風の進行で、スイスイ読めるのもよい。またまた、数学読み物のファンになりました〜。

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影
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