知に働けば蔵が建つ

『知に働けば蔵が建つ』を読んだよ。内田樹もまた新しい視点を与えてくれそう。

最近、気になっていた筆者のひとり、内田樹。ブログでの発言も面白そうと思っていたら、本書も結局ブログに書き散らしたものをまとめたものだとか。新しい論壇の登場は、アッシにとって新たな視点を開拓してくれるという意味で楽しみ。

さすがに、「はじめに」はブログではないと思うけど、これがやけに長い「はじめに」。しかも、教養とは何かといった阿部謹也先生風の命題。雑学と教養の違いを述べているのだけれども、時間というファクターで分析しているのがユニーク。筆者自身は強引にまとめたと言ってはいるけれども…。

勿論、本文にも新たな視点。ブログで書いたものとは思えないほど、きちんとした長文もある。とくに「貴族と大衆」は面白いよ。これは、このタイトルから想像できるかもしれないけど、格差社会への一考。
その冒頭では驚きの報告を上げている。ある本の引用だけれども、

「意欲をもつ者ともたざる者、努力を続ける者と避ける者、自ら学ぼうとする者と学びから降りる者との二極分化の進行であり、さらに問題と思われるのは、降りた者たちを自己満足・自己肯定へと誘うメカニズムの作動である。」
もう少し噛み砕いていうと、相対的に「勉強しない」生徒たちほど、「自分は人よりすぐれているところがある」という意識が強いということ。なんとなく、そういう世の中になってきているような気も薄々は感じていたけど、やっぱりそう思う人が増えていたんだね。
そして、この「降りたものを自己満足・自己肯定へと誘うメカニズム」について、大衆社会との関連を述べているよ。つまりは、
大衆社会では、この自己満足・自己肯定の度合いは自分と同じようにふるまう人間の数と正比例するからである。
と。これを突き詰めていくと、今後、「降りる人間」が等比級数的に増えていくことも十分考えられるような…。なんとも恐ろしき大衆社会…。
実は、思想家たちも、この大衆社会について、考察しているんだね。ニーチェは「大衆」を「畜群」と呼び、それに対する概念として、「貴族」あるいは「超人」を対置させていると。

「貴族と大衆」の話が長くなってしまったので、これまでにするけれども、日中問題の話も分かりやすくて面白いよ。

しばらくは、アッシの中で、内田樹ブームが続きそうな予感です〜。

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知に働けば蔵が建つ (文春文庫)内田 樹

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