ニッポン・サバイバル
『ニッポン・サバイバル』を読んだよ。さらりと読める姜尚中。
ある女性誌のポータルサイトに掲載されていたものをまとめたもの。副題に「不確かな時代を生き抜く10のヒント」とあるように、全10章で構成。まえがきにもあるように、上司や顧客、先輩が、何かの拍子に突然北朝鮮の核問題に対して、日本も核を持つべきだとか言った話をし始めた時に、しなやかに対応するためのヒントを提供するといった主旨の本。確かに突然そんな話をされ出したら、普通は笑って誤魔化すとか、肯定とも否定ともつかない相槌を打つとかだよね。日本人として人間として自分の考えをきちんと話せるようになるのが理想なんだけど…。
例えば、「自由」について。
内田樹の『下流志向』にも書かれていた“新自由主義”的な自己責任の考え。これを日本に持ってくるといわゆる“世間”が束縛となり、悲惨なことになるという。
ところがこの新自由主義をそのまま日本に持ってくると悲惨です。潜在的な能力を制度的に摘み取られている社会で、自己責任に基づく自由競争をやられると、これはもう過酷です。だから、潜在的な能力が生かされる社会にしないと、この先、日本はもっと自殺者が増えるでしょう。世間はなくならないと思う。だから、新自由主義の考え方を止めるしかないのか…。
「友人」についても。
“しがらみ”は友達には当てはまらない。だから、自由度が高い人間関係。だから、自由度が高い分、もっともその人の人間的な側面が表れるという。
人間にとって自由が本質であるとするならば、友人関係こそ、もっとも自分自身の人間性が問われる関係だということです。友達を見れば、その人がどんな人かわかるとも。まさに“類は友を呼ぶ”だね。
中国の「反日」感情については、政治学者らしく。
今の日本経済の足腰は中国に支えられているのだと。中国経済の活況のおかげで日本も恩恵を受けていることや、アメリカとの貿易摩擦は中国が緩衝になっていることなどを上げ、この先に中国との関係がダメになったら、間違いなく、経済的な可能性がそぎ落とされるだろうという。
お互いに抱きつかれ、自分も抱き締めているのに、あばたもエクボではなく、何かひどい古傷に見えてしまう。今はそういう関係だといえるでしょう。と分かりやすい表現。その他に歴史をきちんと知ることも大切だとも言っているよ。
最後は「幸せ」について。
まずは、快・不快が幸せの判断基準ではないことを確認する。その上で、
他者に関心を持たないで、自分の幸せを社会や世界と切り離して考えること自体が、じつはものすごく非現実的です。世界と切り離された幸せなんてディズニーランドのようなものです。一歩外に出れば否応なしに現実が待っています。ディズニーランドは、まさに「快」かもしれないけど、そんなことは幸せとはなにも結びつかないんだよね。ましてや、人と比較しても意味がない。
さらっと読めて、でもちょっと考えさせられる。姜尚中の人気の秘密が分かったような気がします〜。
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