ためらいの倫理学/内田樹

ためらいの倫理学―戦争・性・物語 (角川文庫)』を読んだよ。アッシの知性の無さを認識…。

内田先生の初めての単著を文庫化したもの。書き下ろしではなく、ホームページなどに公開していたテクストを編集者がまとめたものということになっているよ。結局、本書がきっかけに、著作を多数発表するようになったみたい。内容はかなり刺激的だけど、こういう思考を書ける人がいなかったのかもしれないね。今でもいないかもしれないけど。

その「こういう思考」について、内田先生曰く、

おそらく、そのころにメディアの一部に、「専門家」でもなく、その中間くらいの言葉づかいで評論的な文を作る人間に対する需要が存在したからであろう。
と分析しているよ。もう少し云うと、「生活者の実感」と「専門家の理屈」のあいだの「ずれ」を架橋しようとする志向だとか。それでも、哲学用語(それはドイツ語)も多いし、難しい熟語も出てくるし、アッシの知性では理解までには程遠し。最近の著作はそれほど難しく書かれてはいないので、前述の通りホームページなどに書き連ねたものなので、読者レベルを想定せずに書かれたからなんだろうね。

では、どんな書きものか。そこかしこの書きものに対して、内田先生の思いのたけをぶつける感じ。それを、本書のサブタイトルにもある「戦争」、「性」、「物語」の3つのカテゴリに分類。
「戦争」については、戦後論について。いわゆる戦争責任の問題を考える。「性」については、フェミニスト上野千鶴子宮台真司を正面切って批判。この二人、態度が何となく似ているような…。「物語」については、本書のタイトルになった「ためらいの倫理学」が面白いよ。カミュのためらいの話。難しそうで、読んでみるとそうでもなく、アッシでも理解できた感じ。カミュの『異邦人』を読んでみる気になったよ。

で、結局、内田先生の言いたいことは何かというと、それはあとがきに書いてある。途中でも何度も出てくるので、これは見逃してほしくない見解。知性とは何かを考えさせられるし、今の内田先生の思考は変わっていないと思うから。
そのあとがきに、それぞれのテクストの解題がついているんだけど、ここがアッシ的にはお気に入り。内田先生の反省文が書いてあるから。でも、テクストは修正するつもりはないしね。
内田先生の原点に辿りついた感じで、これから益々先生のテクストが楽しみになりました〜。

ためらいの倫理学―戦争・性・物語 (角川文庫)
ためらいの倫理学―戦争・性・物語 (角川文庫)内田 樹

角川書店 2003-08
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