「世間」とは何か
『「世間」とは何か』を読んだよ。阿部謹也シリーズ第3弾。
いよいよ「世間」の本丸本…と思ったら、ちょっと予想外の内容。
日本人が世間に対して思っていたことや対峙していたことを、過去の文学作品の中から探り出そうという試みの本だよ。
万葉集の和歌から始まって、徒然草の吉田兼好、親鸞らの真宗教団の教え、江戸時代に入っては井原西鶴、近代は夏目漱石、永井荷風、金子光晴らの作品を取り上げているよ。
そういう意味で理屈を捏ねていないから、読みやすかったよ。引用とその解説というパターンの繰り返しも多かったし。
で、自分に振り返ってみて。
社会の法律だとか規則とかより、世間様の常識とか礼儀が優先しているような気がするんだ。そして、ほとんどの人が振り回されているような…。それがいいようで悪いような…。いや、イヤだと思っていても、それを無視する勇気もない。結局、どう自分の中で折り合いをつけていくかなんだろうね。
最後に引用。夏目漱石『坊ちゃん』について、筆者が語る。
明治以来私達は、私達を拘束している「世間」の存在に感づいていたにもかかわらず、それを対象化することができず、そのために坊ちゃんに身を寄せて架空の世界の中で「世間」をやっつける楽しみを味わってきたのである。文学の世界を持って、世間との折り合いをつけるという例か…。
「世間」とは何か (講談社現代新書) | |
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