縦糸横糸

『縦糸横糸』を読んだよ。テーマは日本人論?

新聞に連載されていた河合隼雄のエッセイ集。その時々の時事から話題を選んで論じているよ。キーワードは、子育て、教育、科学技術、文化社会、宗教など。

1996年からのエッセイなんだけど、子供が絡む事件が多いよ。だから、教育とか家庭がテーマとなる。そして、やはり比較になるのは欧米との比較。それが筆者なりの日本人論に繋がっていくよ。
例えば、個人主義について。欧米の個人主義キリスト教を支えとしている点に特徴があるという。この為に個人主義が利己的にならないとも。では、日本はというと、

日本は「イエ」の倫理で生きてきた。昔からの「イエ」は無くなったかのように見えるが、日本人は意識的、無意識的に代理の「イエ」をつくり出してきた。
という筆者。そうそう、この「イエ」って、まさに「世間」を言っているんだろうなぁ〜。阿部謹也氏の考え方に近いんだろうなぁ〜。
ただ、阿部先生と違うのは、河合氏はここに日本人の宗教性を見ていること。この「イエ」によって、日本人は安心立命をはかったきたという。
日本人は宗教や倫理の問題を、日常生活のなかに混入させて、生きてゆく方法を知っている不思議な民族なのである。
と。この生き方、日本人らしいなぁ〜。

もうひとつ。キリスト教以前に、中西部ヨーロッパに住みケルト語を話していた住民ケルトの話題。ケルトは相当な文明を持っていたが、文字を持たなかったことなどがあり、キリスト教文明によって消滅させられていったという。ここで引用。

ケルトは文字を持たなかった。それは未発達なためではなく、むしろ文字を持たない文化をどんどん発達させてゆくためなのだ。これは西洋近代の知の在り方とまったく異なることだ。人間と自然、精神と肉体、などが明確に区別され、それらを記号で表し、それらの関係を明確にしてゆくのが西洋近代の知だ。それに対して、ケルトはその文様のように何もかもがからみ合っていると考える。
西洋近代の知と数字や数式で表されるものと考えれば、ケルトの文化はまさにクオリアの世界なんじゃないかなぁ〜?だから、両方とも必要で、二者択一的な問題じゃないんだろうね。
縦糸横糸
縦糸横糸河合 隼雄

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