生きるための図書館/竹内悊

生きるための図書館: 一人ひとりのために (岩波新書)』を読んだよ。図書館界の重鎮らしい。

図書館関係の本を少しずつだけと読み続けているけど、「生きるための」っていうちょっと重そうな形容詞がつく本書。新刊だったから、それほど深く考えずに読み始めたけど、そもそもの図書館の有り様を幾つかの事例を中心にまとめているよ。

前半は戦後直後からの図書館の有り様を考えて、実践していった図書館関係者の話。主に、子供の読書環境についての活動。それは戦前の教育からの脱却でもあり、一人ひとりが生きていくために知識を取得し、考えていくための読書を目指す。題名の「生きるための」とは、そういうこと。そして、副題の「一人ひとりのために」にも繋がっていく話。

そして、後半は図書館とは何かという根本的な問いに。自分のような生半可な知識ではダメだったことを知ることになるんだけど。

例えば、図書館が教育に資するということをどう捉えるか。

その「教育」の中で、「教」とは集団教育のイメージが強いのですが、図書館は一人ひとりへの支援が仕事ですから、「育」を担当するといえます。この二つを総合して「教育」が成り立つのです。
と。そう、ここでも、「一人ひとり」というキーワードが出てくるんだよね。

最後は司書という役割について。

そこで本と新しい媒体の組み合わせと、誰もがそれを自由に使える条件が必要です。それには、それぞれの組み合わせを援助する「本と人をつなぐ人」とその考え方とが大事になります。
ということ。それがまさに司書という仕事。図書館が無料貸本屋ではあり得ない意義がそこにはあるんだよね。
図書館には頑張ってほしいなぁ~。

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リーダーシップ入門/金井壽宏

リーダーシップ入門 (日経文庫)』を読んだよ。エクササイズが必要。

前回の同様に夏休みの宿題の中で参考文献として紹介されていたものが本書。新書版だけど、それなりの内容で分かりやすいとのこと。そして、前回の組織開発の続きという位置づけ。その組織開発のうちのソフト的な側面が人の問題。その中でもリーダーシップって、職位の問題にも絡んできて、重要なキーワードになるのだと思う。

まずは、先入観の解消から。リーダーシップというと偉人?という連想になるけどれも、そうではなく、誰でもがリーダーシップを経験することができるし、発揮することもできるということ。

ポイントは、偉人も生まれつきそうだったのでなく、いろいろ経験を経て、スケールの大きなリーダーシップを取るようになったという側面にある。
ということ。だから、偉人のリーダーシップを学ぶのも大切だけど、そこから持論をもって他者に展開していくことも大切ってこと。そんなコンセプトの本だから、随所にエクササイズを展開し、鑑賞するように本書を読まないようにと何度も主張する。通読したとしても、あとから必ずエクササイズをやってみるように…とも。

この説明が前半でかなり長く続き、その後で実践家の事例紹介。松下電器松下幸之助とかクロネコヤマト小倉昌男とか。それに続き、研究者による分析を紹介しているよ。どの実践家も研究者もリーダーシップは基本的には2つの軸で整理しているということが基本線になっているよ。そして、その2軸とはP(パフォーマンス)とM(メンテナンス)。この二次元で4象限を作って整理してみるとスッキリ分かるということになる。PとMの内容は書き出すとキリがないので書かないけど、大事なのはリーダーシップにはフォロワーが大切だということ。誰でもリーダーシップを発揮できるとは、フォロワーの力もあるからね。

最後に、筆者の主張。持論を持て、そしてそれを語れ…と。リーダーシップには様々な原則があり、その中でもいくらか矛盾があるものもあり、それを解決するのが持論ということ。そして、それを語ることで自分の落とし込んでいくエクササイズとする。いや、リーダーシップは奥が深いわ。

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金井 寿宏
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入門 組織開発/中村和彦

入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書)』を読んだよ。やっぱりY理論。

夏休みの宿題をやる中で、参考文献として紹介されていた本書。新書だけど、内容も質もよいということだったので、手にとってみる。もちろん、テーマにも興味があったわけで、組織というものを、ハード的にもソフト的にも考えてみたかったから。

そして、本書に書かれていることは、ハードとソフトの両面だけれども、やっぱり重要なのはソフト。組織開発といっても、組織の構造とかについては、ほとんど言及していないということもあるから。いや、ハードといえば、組織構造の他に制度などもハードと言える。それでも、やっぱりソフトが重要。特に、人と人、人と組織、組織と組織の関係をどう築いていくかが基本的なテーマになるような。筆者は、

前述したように、組織開発で変革する対象は、プロセスという人間的側面(ソフトの側面)であるとしていました。そういう意味では「ヒューマンプロセスへの働きかけ」が最も組織開発らしく、組織開発の歴史もそこから始まっています。
と言っているよ。ここでは、ヒューマンもプロセスも重要な概念なんだよね。さらに、
組織開発での究極的な問いは、「あなたはどのような職場や組織をつくりたいのか?」、さらに絞り込むと、「あなたはどのような関係性が育まれている職場や組織をつくりたいか?」ということだと私は考えています。
とも。組織という箱は柔軟性に欠けるわけで、それをヒューマンプロセスというソフトで対応していくんだよね。

もう一つの注目点。それは、ポジティブな面に着目するAIという組織開発アプローチのこと。問題点を課題として解決することは重要だけど、悪い方に目を向けてばかりだと、ストレスフルに陥る。だから、

組織の健全性が高まるには、できていないこと(問題やネガティブな側面)に目を向けるだけではなく、できていること(ポジティブな側面)にも目を向けることの重要性をAIは教えてくれます。
と筆者。副題の「活き活きと働ける職場をつくる」って、まさにこういうことを言っているんだろうね。あっ、これがY理論か。

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小説 天気の子/新海誠

小説 天気の子 (角川文庫)』を読んだよ。天気ってなんだろう。

話題の映画「天気の子」のノベライズ版。映画の公開と同時に本書も発売で、この人気ではすぐに読むことはないだろうな…と思っていたら、意外に早く図書館からゲット。本屋でもビニールに包まれている文庫は珍しい。300頁もの小説を立ち読みで済ませる人は少ないだろうけど、それだけ人気ということなんだろうね。

新海誠の作品は映像作品が原作で、同時にノベライズする形がほとんど。映像と小説の違いについては、あとがきで筆者が書いているけれども、小説はディテールを言葉で表現しているけど、映像は絵とか音楽でそれを補完しているということ。だから、映像は人の感性に依存する部分が大きいってことだよね。となると、自分的には小説派かな…。

さて、本書。基本的には、少年と少女の恋愛物語。でも、キーワードが天気。天気というか、気候と言ったほうがいいかもしれない。そして、その気候は人間に対してどうインパクトを与えるのか。特に精神的な側面で。気候を人間が制御するなんておこがましい。だから、

「そもそも天気とは天の気分」と、ようやく咳がおさまった神主が語り出す。
というシーンが出て来るよ。

さらに、気候の影響が社会までも変えていく。ラスト近くの社会の変化は「そうきたか。」という感じ。だから、

「世界なんてさ――どうせもともと狂ってんだから」
という須賀さんの言葉は、ある意味真実を言い当てていると思うよ。天気って地球そのものなんだよね。

おっと、物語の話から外れてしまったかも。もちろん、小説としての面白さも十分に楽しめる一冊でした~。

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オリエント急行の殺人/アガサ・クリスティー

オリエント急行の殺人 (クリスティー文庫)』を読んだよ。誰もが犯人を知っている。

本書も既読。やっぱり、高校生くらいかな…。ミステリーにハマった時期があったから、当然にして、手に取ったのだと思う。そして、当時も読む前から犯人を知っていた。自分が知っていたということは、当時の世間の人たちの多くが知っていたということで、こういうミステリーも珍しいよね。

そして、犯人を知っているのにどうしてこのミステリーを読むのか?自分的には、ポアロの論理的な思考を追うことの楽しみとか、その鮮やかな解決というか…。そういう魅力があるんだろうね。
そのポアロの魅力とはなんだろう。一つは観察力。いや、よく見ているわ。もう一つは記憶力。人が言ったことをしっかりと記憶しているってこと。そして、それらを繋げていく。まるで、データベースの幾つかのテーブルをJOINしていくイメージか?

では、このミステリーの魅力はなんだろうか?犯人の意外性も去ることながら、自分的には2つの解決方法をポアロが提示したことではないだろうか。頭が硬いガチガチ人間ではなく、それこそ、名探偵ができることがそれだったのかと思うよ。

最後に。このミステリーでは、様々な国の人々が登場する。だから、それぞれが特徴づけられているのも楽しい感じ。例えば、

ここで初めてアメリカ人らしい声になった。
とか、
わたしはああいうタイプのイギリス人というものを知っています。
とか。何となく分かるので、それもそれで楽しかったりする。まさに国際的な豪華列車の旅というものは、そういうシチュエーションなんだろうね。
あぁ、列車ミステリーという魅力があるのを書き忘れた~。

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四畳半神話大系/森見登美彦

四畳半神話大系 (角川文庫)』を読んだよ。京都の街に詳しくなる。

kindle本の角川文庫セールで購入し、積読していた本書。筆者の森見登美彦を知っていたわけではなく、特段に興味があったわけでもなく。でも、ちょっとした時に読めるオモシロ小説を準備しておきたいな…という感覚で、同著者本を3冊ほどのゲット。残りの2冊はいずれ読んで、ここの紹介することになるだろうから、今回は書かないでおく。

さて、本書。全四話からなる小説なんだけど、ユニークな構成。第一話を読み終わった段階では、単なる青春小説風だと思っていると…。第二話からそのカラクリが見えてくる。何じゃこりゃ~と言いたくなるような展開。そして、第四話ではさらに新しい展開となる。あぁ、ネタバレしたい気分になるのは、自分だけではないと思う。

書評サイトを見るとパラレルワールドという表現が目につくけど、それを本文中の中で探すと、

ほんの些細な決断の違いで私の運命は変わる。日々私は無数の決断を繰り返すのだから、無数の異なる運命が生まれる。無数の私が生まれる。無数の四畳半が生まれる。
と。ただ、結局はどうなったかというのも、この物語の楽しみの一つ。あぁ、言えないけど。

それにしても、小津という主人公の友人。彼こそがマルチバースを渡り歩く、宇宙人のような存在。いや、人類を超えているというか。それを考えるとやっぱりSFなのかなぁ~。

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爆笑問題の日本史原論 偉人編/爆笑問題

爆笑問題の日本史原論 偉人編 (幻冬舎文庫)』を読んだよ。そもそも偉人って何だろう。

前作『爆笑問題の日本史原論』が面白かったので、このシリーズ2冊目。テーマは人物「偉人編」。古くはヤマトタケルから始まって、直近は吉田茂までの総勢12名が様々な分野から選ばれているよ。自分的に面白い選択だと思ったのは、天草四郎空海かな。

で、相変わらず、太田のボケぶりが楽しめるよ。例えば、太田が芸能人の本名を暴露するシーンが頻発。聖徳太子の本名(最近の教科書ではその本名が正式名として教えられているらしい。)から始まるんだけど、松田聖子の本名はともかく、千利休の本名とか、伊集院光の本名も。人の本名で楽しめるって芸名があるからこそ。いや、本名の意外性が楽しめるだけなんだけど、芸能人ってそれまでネタになるのか…と妙なところで関心したりする。

さて、それぞれの人物の詳細は本書を読んでいただくとして、ここでは全般的な話を。
本書の収穫として、それぞれの人物がどのように現代に伝わっているかという点について、それが歴史の面白さのひとつだと認識したよ。例えば、資料によって作られた人物像っていう可能性もあるよね。これについて本書では、

そうして作られていった秀吉像は、史実とは違った 虚像である。だが、史実はどうだったのかを探ることと同じく、この虚像がどのように成り立ち、人々がどのようにその虚像を享受してきたのかを考えることも、歴史学の大事なテーマだ。伝説は時に「史実」以上に、人々の暮らしに大きな影響を与えてきたからである。
と言っているよ。作られた人物像によって、社会が変わる。人々の意識が変わる。なんだか、不思議な世界だよね。あぁ、人間ってそういうものなんだと思う瞬間なんだけど…。

歴史って尽きないなぁ~というのが読後の感想。自分の一生だって、自分自身で網羅できないわけだからね。

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