知らないと恥をかく世界の大問題10/池上彰

知らないと恥をかく世界の大問題10 転機を迎える世界と日本 (角川新書)』を読んだよ。翻弄され続ける日本。

このシリーズの10作目。最初はベタなタイトルに違和感があったけど、さすがに10作目となると全く違和感無し。むしろ、このタイトルでないとダメだな…と積極的に支持する気持ちも沸いてくる。人間なんてそんなもの…。

さて、今回はどんな話題か。
やはり、米中が中心かな。そこに北朝鮮が絡んできて、ちょっとだけEUと日本の話題。

そして、今回もトランプには辛口の池上氏。
例えば、

トランプは、中国からの輸入品に関税をかけると税金は「中国負担」と誤解していました。そうではありません。
と、関税は誰が払うものなのかが分かっていなかったと指摘。そう、関税とは輸入業者に課税されるので、結局は輸入した側の負担ということになるんだよね。それを理解していないとは…。
もう一つ。朝鮮戦争は休戦状態であることを知らなかったという話。だから、
トランプ大統領は政治の世界ではまったくの素人です。
と、一刀両断。政治家の基礎知識が欠如か…。でも、日本の政治家にもこのレベルがいそうだけど…。

そして、アジア情勢について。

米中の冷戦の狭間で、東アジアは翻弄されることになりそうです。
と。米ソ冷戦が終結後の世界は、またもや冷戦時代か。対立構造って、人間世界では必然なのかな…なんて考えてしまった。

さて、シリーズ11が出る頃の日本の政治体制、EUのイギリス離脱の影響とかも気になってきた~。

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「読まなくてもいい本」の読書案内/橘玲

「読まなくてもいい本」の読書案内 (ちくま文庫)』を読んだよ。それでも読まずにはいられない。

この本はなんだろうか…。巻末の解説には、

本書が名著であるのは、読書案内の体裁を借りながら、従来の通説を塗り替える秀逸な現代思想史になっているからだ。
と説明有り。思わず納得しそうだけど、読書案内の体裁なのは本の題名だけ。そして、現代思想史を語るのは本の力を借りる以外にないのだろうと思うけど。

そして、著者が素直なことに、

本書刊行後、「現代の進化論」の興味深いトピックを集めて、『言ってはいけない―残酷すぎる真実』(新潮新書)という「スピンオフ」を書いた。
と文庫版あとがきで白状しているよ。本書がオリジナルであるとも。だから、本書の方が読み応えがあるし、ストーリーもしっかりしているような。

その現代思想史のテーマはさまざま。でも、それらは事例に過ぎず、

この本では“知のパラダイム転換”への入り口として、大小さまざまな驚きを集めてみた。
と言う。そう、“知のパラダイム転換”がキーワードということ。そのために、複雑系、進化論、ゲーム理論脳科学功利主義の考え方を紹介しているけれども、それぞれが世間的にはあまり評判がいいとはいえないらしい。
それは素朴な感情を逆なでするからだろうけど、ちゃんと考えれば当たり前のことばかりでもある(そう思ったでしょ)。
と説明。あぁ、これは『言ってはいけない―残酷すぎる真実』のスタンスだね。

ちょっとネガティブ風に書いてしまったけど、それぞれの事例やテーマは非常に興味深いことばかり、読まなくてもいいというより、ますます読みたくなりました~。

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マインドフルネス/ハーバード・ビジネス・レビュー編集部

マインドフルネス (ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ])』を読んだよ。集中力の問題?

言葉としては知っていて、その中身は何だろうかとは思っていたけど、積極的に知ろうとはしていなかった「マインドフルネス」。どういうわけか、今回は意識が向いてしまい、お手軽そうな1冊を選んで、借りたのが本書。もともとは、ハーバード・ビジネススクールの機関誌に掲載された論文や記事をまとめたもの。だから、編者が同誌の編集部になっていて、書いた人は様々。

では、「マインドフルネス」とは何か?冒頭の記事では、

人間が毎日仕事に集中する姿勢を、本来満たされるべき力を取り戻すためには、心身と環境との関係を新しく立て直すことが必要です。そのためには、場と方法が必要になります。それを提示するのが「マインドフルネス」です。
と定義しているよ。自分的には集中するための力を取り戻す方法?って、勝手に解釈してみたけど。だから、禅とか瞑想とかとはちょっと違うかな。もちろん、それらは手法の一つではあるけれども。

もう一つの定義。

簡単に言えば、どんな状況でも、一瞬一瞬において、「いま、この瞬間をとらえる」力であり、「気づく」力である。
うん。こちらの方が端的で分かりやすいね。

もっと分かりやすいのは、「マインドフルネス」に対比する言葉。

人は何をする場合でも、それを「マインドフル」か「マインドレス」か、どちらかの状態で行う。
そう、日本語でいうと「心ここにあらず」かな。おっと、日本語の方が分かりやすかったか。

確かに、会議中に上の空になってしまうこともある。それはそれで仕方がないこととして、如何にそこから回復するか、その力をつけるか。あぁ、眠くなった時の対策が先か…。

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空飛ぶタイヤ/池井戸潤

空飛ぶタイヤ 上下合本版』を読んだよ。ビジネス・エンターテイメント。

上下合冊のKindle版。716頁もの大作だけど、グングンと引き込まれて、その勢いを継続したまま読了という感じ。久しぶりに読了後の達成感も高し。

ある運送会社のトラックからタイヤが外れ、歩行者に直撃し死亡。その原因がリコール対象なのか、整備不良なのかという点について、運送会社の社長と自動車メーカーが戦っていくという物語。…と簡単に書いてしまうと、それまでだけど、運送会社にも自動車会社にも社内の物語があり、そこに登場する人間にも家族の物語がある。それが複雑に展開していき、それでも、物語としての構造が維持されていく。

運送会社の物語的には、

タイヤが外れる前に、こいつらの心からもっと大切な部品が外れちまったんじゃないか?
と、自動車会社の人間に対する不信感を募らせる言葉が象徴的。

対する自動車会社の人間は、

沢田に興味があるのは、むろん、事故の真相ではない。社内の勢力図のほうだ。〝品証〟に万が一のミスがあったら、それをつついて奴らの鼻っ柱を折ることができる。日頃の憂さ晴らしという奴だ。
と、事故のことより、社内政治に躍起になる。

事故の真相究明は捗々しくはないし、誰もが心が折れそうになるんだけど、運送会社の社長は何度も挫けそうになりながらも、最後は、

そう──自分の力で。
と心に誓い、諦めることはない。社員、家族のためにも。その勇気と行動力に感動し、涙する一冊でした~。

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素数はなぜ人を惹きつけるのか/竹内薫

素数はなぜ人を惹きつけるのか (朝日新書)』を読んだよ。素数に萌え?

数学の中でも数論はその王様的存在と言われているけども、その数論の中のテーマでも王様的な存在が素数。普通の人が素数の存在を知るのは、中学かな?それでも、その素数の定義にふ~んというリアクションだと思うけど、ギョーカイ的には注目されているテーマであることは事実。特に、暗号化技術では素数の性質を応用しているわけだし、これだけ現代に活用されている数学的技術(って言っていいのか?)はないとも言えるかな…。

さて、その素数について、フツーの人たちにその面白さを伝えようと試みたのが本書。いつものサイエンス・ライターの竹内薫氏だけど。とは言え、フツーの人が本書を手に取るだろうかという根本的な疑問はある。自分のような似非数学オタクなら、喜んで手にとるのだろうけど。

そして、話の中心はリーマン予想素数の出現を公式として定義するというもの。それでも、証明されたわけではないから、あくまでも予想。そして、そのリーマン自身はその証明を「今はちょっと置いておく。」と放置してしまったという。はぁ…。

リーマン予想そのものはゼータ関数の研究という方向に向かっていくんだけれども、そのゼータ関数がまた魅力的なもの。原子核のエネルギーをあらわす公式や超ひも理論などの物理の問題にも頻出するという数式。だから、

なにやら、神様が、宇宙の法則である物理学と宇宙を記述する言語である数学に隠した暗号みたいではありませんか。
という風に、ミステリアスなイメージを抱かせる。それがロマンになり、数学オタクを惹きつけることに…。

もうひとつ。宇宙を記述する方程式を研究していると素数が突然顔を出すことがあるという。これについて、

言葉は悪いのですが、ごちゃごちゃした、ある意味汚い現実世界に、美しい天女が舞い降りたような、現実か夢かわからない状況があるのです。
と筆者。あぁ、天女が舞い降りるようなユメウツツ…。でも、やっぱり数学オタクにしか、分からないだろうなぁ~。

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本物の教養/出口治明

人生を面白くする 本物の教養 (幻冬舎新書)』を読んだよ。教養について考える強化月間。

「教養とは何か?」シリーズ(自分で勝手に名付けたけど)の第2弾。同系統の本を連続で読むことは少ないけど、今回はたまたまタイミングがそうなっただけかな。著者はAPU学長の出口治明氏。出口氏の講演を聞く機会があり、この人は面白いと思ったのが本書を手に取るきっかけ。もっとも、本書の執筆時はライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEOだったけど。

早速として、出口氏の教養の定義は、

もし、そう質問されたら、私の答えは「教養とは、人生におけるワクワクすること、面白いことや、楽しいことを増やすためのツールです」という一言に尽きると思います。
ということ。この後に何度も出てくるけど、出口氏の生き方は楽しむこと、ワクワクすることがすべての軸になる。そのために、教養が必要なのだと言っているよ。

さらに、「自分の頭で考える」ためのコツ。
ひとつは「タテ・ヨコ」で考えるということ。「タテ」は時間軸、歴史軸。「ヨコ」は空間軸、世界軸。二次元で考えよと。

「タテ」の発想で先人が繰り返した試行錯誤から学び、「ヨコ」の発想で世界の人々の考えや実践法を学ぶことは、大きなヒントになります。時間と空間を乗り越え、市場の淘汰にさらされてなお残っているものは、合理的な最適解である確率が高いのです。
ということ。至極最もで、先人の知恵、他者の見解は広く知っておくことは新しい発想の土台になるよね。

もうひとつは、「数字・ファクト・ロジック」で考えるということ。言い換えると、「国語ではなく算数で」ということ。これは、物事の本質を捉えるために必要な考え方。

物事の本質は、たいていシンプルなロジックでとらえることができます。なぜなら、人間は本来シンプルな生き物だからです。
と筆者。枝葉末節に陥ると、それはシンプルさには程遠い議論になるからね。ありがちだけど。

後半の「本・人・旅」の話も、教養の為のツールだよね。それぞれの経験を面白がれば、自然に身に付くものだから。あぁ、どれも楽しいよね。一生を掛けての楽しみだな…。

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おとなの教養/池上彰

おとなの教養 私たちはどこから来て、どこへ行くのか? (NHK出版新書)』を読んだよ。リベラルアーツブーム。

いつもの池上彰氏の教養本だけど、単に知識を得る為ではなく、そもそも「教養とは何か?」をそれぞれの教科の観点から事例を取り出して解説し、本書のテーマに沿ってまとめたもの。以前から読みたい本リストには入っていたんだけど、今回、この続編が出たみたいなので、慌てて手に取ったというわけ。

早速だけど、池上氏の教養の定義。

それは「自分がどういう存在なのか」を見つめていくことなのではないでしょうか。「自分自身を知る」ことこそが現代の教養だろうと私は思います。自分はどこから来て、そこに行こうとしているのか。この場合の「自分」とは、文字通りの自分のことでもあるし、日本人あるいは人類のことでもあります。
ここで言う「自分」とは人類って考えた方が分かりやすいかもしれないね。あまり自分自身を考えてしまうと小さな話になってしまうし。もうひとつ、「自分はどこから来て、そこに行こうとしているのか。」は本書に通底するテーマ。それを考えるために、「知る」ということが必要になってくるんだよね。

そして、リベラルアーツ(自由七科)。池上氏は「現代の自由七科」を、「宗教」、「宇宙」、「人類の旅路」、「人間と病気」、「経済学」、「歴史」、「日本と日本人」と定義し、それぞれについて講義する。

そのうちで、自分的に合点がいったのを幾つか紹介。ひとつは「経済学」から、

つまりマルクスは、資本主義が持っている法則を読み解いた上で、その法則に従えば、最終的には資本主義は限界に達して社会主義が樹立されると考えたのです。
というもの。それでも、マルクスはその具体的な手法については言及していないとか…。それが社会主義の課題だったのかも…。

もう一つは「歴史」から、

ですから、私たちが学んだ歴史は言ってみれば氷山の一角で、実はそれ以外にも知られざる歴史がたくさんあるということを、常に頭の隅にとどめておいてほしいのです。
というもの。よく「勝者の歴史」っていうけど、まさにこれだよね。客観性を求めれば、敗者の歴史も、第三者の歴史も必要になるはずだよね。

さて、これだけで「自分はどこから来て、そこに行こうとしているのか。」が分かったとは思えないけど、これらの知識をベースに自分の頭で考えないといけないね。

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