空飛ぶタイヤ/池井戸潤
『空飛ぶタイヤ 上下合本版』を読んだよ。ビジネス・エンターテイメント。
上下合冊のKindle版。716頁もの大作だけど、グングンと引き込まれて、その勢いを継続したまま読了という感じ。久しぶりに読了後の達成感も高し。
ある運送会社のトラックからタイヤが外れ、歩行者に直撃し死亡。その原因がリコール対象なのか、整備不良なのかという点について、運送会社の社長と自動車メーカーが戦っていくという物語。…と簡単に書いてしまうと、それまでだけど、運送会社にも自動車会社にも社内の物語があり、そこに登場する人間にも家族の物語がある。それが複雑に展開していき、それでも、物語としての構造が維持されていく。
運送会社の物語的には、
タイヤが外れる前に、こいつらの心からもっと大切な部品が外れちまったんじゃないか?と、自動車会社の人間に対する不信感を募らせる言葉が象徴的。
対する自動車会社の人間は、
沢田に興味があるのは、むろん、事故の真相ではない。社内の勢力図のほうだ。〝品証〟に万が一のミスがあったら、それをつついて奴らの鼻っ柱を折ることができる。日頃の憂さ晴らしという奴だ。と、事故のことより、社内政治に躍起になる。
事故の真相究明は捗々しくはないし、誰もが心が折れそうになるんだけど、運送会社の社長は何度も挫けそうになりながらも、最後は、
そう──自分の力で。と心に誓い、諦めることはない。社員、家族のためにも。その勇気と行動力に感動し、涙する一冊でした~。