「無限」に魅入られた天才数学者たち/アミール・D.アクゼル

「無限」に魅入られた天才数学者たち』を読んだよ。「無限」は直観の世界を超える。

科学読み物の翻訳では第一人者の青木薫氏の訳。だからこそ、信頼して手に取ることができるよ。信頼してというのは、難しすぎて、途中で投げ出さずに、読み切ることができる本であるということ。お蔭さまで、今回も無事に読み終えることが出来たんだけど。

さて、テーマは「無限」。登場人物は数学者。その中心となるのが、カントール。そして、彼の命題は「連続体仮説」というもの。簡単に言ってしまうと、無限というテーマを集合論として取り扱ったものということなんだけど、そこには信じられないような数学的事実がたくさん出てくる。例えば、「整数と偶数はどちらが多いか?」という問題。数学的には「同じ」という結論になって、人間の直観とは異なる。これは「無限」という概念がその結論を導いているわけ。しかも、「無限」には階層があって、数えられる無限以外にも実無限という論理の世界でしか見ることが出来ない世界が広がっていると。あ〜、もうこの辺から、混乱しそう。

そんなわけだから、このような無限の性質を発見したカントールは、

「我見るも、我信ぜず」
と友人の手紙に書いている。自分の発見を、どう解釈したらいいか、皆目見当がつかなかったのだと。うん、自分の結論にたじろぐって感じなんだろうね。

カントールの「連続体仮説」を引き継いだのは、あの不完全性定理ゲーデル。この不完全性定理を筆者は、

有限な宇宙の内部に存在している人間の心には、そのシステムを超えて広がる大きな実態を捉えることはできないということだ。
と説明しているよ。そう、この結論は「連続体仮説」に通ずるわけ。

そして、カントールゲーデルも精神を蝕まれる。

連続体仮説には何かしらこの世ならぬところがあり、長期間それだけを考え詰めることをできなくさせる。この問題に取り組むことは、人間の精神を蝕んだ―それから逃げたければ、証明を諦めて別の分野に乗り換えることだ。
連続体仮説」は悪魔の問題なのか?それとも、「無限」という神の領域に人間は手出しができないということか。そう、無限は神だとすれば、納得できるよね。数学って、何なんだ…。

「無限」に魅入られた天才数学者たち
「無限」に魅入られた天才数学者たちアミール・D. アクゼル Amir D. Aczel

早川書房 2002-02
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