[小説]フェルマーの最終定理/日沖桜皮
『[小説]フェルマーの最終定理』を読んだよ。恋愛風ドラマになるとは…。
数学本の中で、アッシが今一番面白いと思っているのが『フェルマーの最終定理』。図書館や本屋で、フェルマーの最終定理関連の本を見つけると、必ず読むようにしているんだけど、これもその一冊。小説なのに、図書館では、何故か数学関連に分類されているよ。
では、どんな小説なのか。カニーというあだ名の青年がなぜか数学、特にフェルマーの最終定理に取り付かれる。そして、香織という女性。ちょっと気になる存在なんだけど、特に恋人とかそういう相手ではなく…。二人で、『フェルマーの最終定理』という本を読み解いていくのが全体のストーリー。
読み解く中で、フェルマーの最終定理を証明する課程が解説されていくので、証明までの流れささっと知りたい場合は、小説と言えども、本書は有効。
さて、本書の中で、アッシの気になるセリフを幾つか紹介。
カニーが香織に、フェルマーの最終定理を説明するシーン。証明されてしまったものを何を今更ながら研究する必要があるのかと、香織に言われたカニーは、
「新しい何かを研究するというよりは、この定理が解かれていく歴史的経緯をしっかり理解して、近代から現代の数学の発展を俯瞰するっていう感じですかね」と答える。そう、この感じ。細かいところまでは理解できなくても、俯瞰することだけでも、その意味を理解することはできるんだよね。それを知っているのと知らないのとでは大違いといったような。
そして、この日記でもよく出てくる「架け橋」という言葉。
フェルマーの最終定理を解く鍵が、モジュラー形式というある種の周期性をもつ関数によって張られることになるんだけれども、
モジュラー形式は微分可能、つまり「連続的な世界」を扱っているのですが、これが実は「非連続」である素数の性質に関係が深いというのは、異なる世界を結ぶ架け橋として、たいへんおもしろい事実なんです。と、カニーの解説。「架け橋」という概念が好きなアッシは、ここでもこの概念が登場して、うれしい気分。さらに、カニーがよくぞここまで勉強して理解したと褒めてやりたくもなる。
最後に、カニーのもうひとつのセリフ。
「ひとつ思うのは、こういうのって証明した人はもちろんですけど、提唱した人がスゴいと思うんです。」と。そう、フェルマーが提唱しなければ、それを解こうという人も現れないわけで。しかも、この予想が数学をより高い次元に引き上げたわけだから。
カニーの見識の高さに脱帽のアッシでした〜。
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