初代 竹内洋岳に聞く/塩野米松

初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫)』を読んだよ。登山に対する思いが伝わる。

作家で聞き書きの名手と言われている塩野米松氏がプロ登山家の竹内洋岳氏をインタビューし、その様子をまとめたもの。インタビューなので、聞き手との会話があるはずなんだけど、いわゆる独白として編集されているよ。
内容としては、『登山の哲学』と重複する部分が多いんだけど、こちらの方がかなり詳細まで語られいるよ。基本的にインタビューなので、語られた内容は編集していないんだろうね。

インタビューの時期は、2008年1月から2009年7月まで。つまり、竹内氏が2007年のガッシャブルムIIでの雪崩事故で大きな怪我を負った後から。この段階で8000m峰を9座登頂しているわけで、その後インタビュー終了時は12座まで登頂に成功しているよ。

そして、インタビューは少年時代から始まり、高校生、大学生と続いていく。そして、既に大学2年生で最初の8000m峰シャシャパンマ。続けてマカルーに登頂する。ここまでが、組織的な登山(極地法)での登頂であり、この後からアルパインスタイル(無酸素)に変更するよ。それでも、竹内氏は極地法を否定するわけではなく、

誤解している方が多いんですが、アルパインスタイルというものが絶対に優れたものでは全然ないんですよ。なぜか、世の中ではアルパインスタイルというのが、いわゆる究極の進化形であるかのようにとらえられるんですけど、アルパインスタイルというのは、実はアルパインスタイルができる所でやっているだけの話なんです。
そう、マラソンと障害物競走で走り方が違うのと同じこと。極地法でしか登れない山だってあるわけ。でも、アルパインスタイルの方がスマートな感覚だけどね。

そして、エベレスト、K2など、順調に8000m峰の登頂に成功する竹内氏。そして、10座目のガッシャブルムIIでの雪崩事故。事故直後の様子や帰国後の手術、そして入院中の様子を物語る。見舞客は皆が「運が良かった。」と言うけれども、仲間が死亡しているわけで、「運」について考える竹内氏。

それは、運がいいとか何とかって話ではもはやないんです。
うん、分かるような気がする。

最後に竹内氏の山に対する思い。共感した本の話の中で、

あれを読むと「そうなんだ、やっぱ山って、そんな屁理屈をこねて登るもんじゃないんだよ」って思うんです。すごい、山って面白いんだよなって、共感したのはあの本だけですね。
と語る。理屈もなく面白い。そう、それが好きってことだよね。アッシも山が理屈抜きに好きだから。
初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫)
初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫)塩野米松

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