働かないアリに意義がある/長谷川英祐

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)』を読んだよ。働くか否かは相対的なものか…。

人間の世界でもよく言われる2:8の法則(パレートの法則)。ある集団において、そこで働く人のうち、本当に働く人はそのうちの2割。その2割の人たちがその集団の収益のほとんどを稼いでいたりするという。ただ、その2割の人たちがいなくなると、残りの8割の人たちの中から働く人たちが2割だけ登場するという。なんとも不思議な現象だけど、誰もが経験的に知っていることのような気がする。
そんな不思議な現象は人間だけの世界ではなく、虫の世界では現れるという。これを科学的に解説するのが本書の趣旨。虫の場合、働かないのは7割で、人間より少ないけど…。

観察の対象となるのは、アリとハチ。女王がいて、あとはワーカーというリソースで、システムとしてどうコントロールしているのかという点から始まる。誰もが指示することなく、粛々と仕事が進むこととか、「齢間分業」という仕組みの役割分担など。なんともよく出来た仕組み。これだけでも、驚きだけど、さらに高度な技が「反応閾値モデル」という考え方。個体差を利用したモデルなんだけど、これによって、コロニー内の仕事を効率よく処理しているという。
これらの考え方によれば、2:8の法則は本当っぽい。それでも、8割の虫たちは、働きたくないわけではなく、本当は働きたいんだけど働けないだけであることも分かってくる。ここが人間と違うところなんだけど。

最後は社会との関係。

やはりここでも、個体の利益と社会の必要性の狭間で個体が採り得る選択肢を選んだ結果、人間から見ると信じられないようなシステムが進化してきたのです。個体にとって「げに恐ろしき」は社会の存在といえましょう。
と。社会があるから、色々な個体がそれぞれの性質を発揮するわけで、それが生物の進化にも影響を及ぼす。だから、まったく偶然の産物なんだけど、結果良ければすべて良しという感じになってくるんだよね。

進化論は、考えれば考えるほど不思議の世界。不思議と科学の融合が面白さを生み出しているのかもしれないね。

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)
働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)長谷川 英祐

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