女流阿房列車/酒井順子
『女流阿房列車 (新潮文庫)』を読んだよ。一番贅沢な旅。
いわゆる乗り鉄の酒井順子氏。徹底しているのが、乗ること以外にはそれほどテツに興味がないこと。それを証明するのが、乗っても寝てしまうこと。外の景色が素晴らしかろうが、どんなに珍しいテツ関係のオブジェクトがあろうが、寝る時は寝る。乗っているだけで幸せっていうのも、分からなくもないけど。あえて、もう一つ、筆者の興味をあげれば、駅弁か…。ここがいかにも女子らしい。
ということで、そんな酒井氏のテツの旅。徹底した乗りテツなので、プランすら立てない。だから、プランは出版界一の鉄人・新潮社のT氏。T氏のプランに従って日本全国を乗りまくるんだけど、このT氏のプランがかなりのくせ者。ハードというか、耐久レースというか…。筆者はこの感覚を、
線路に、ダイヤに、そしてT氏のプランに緊縛される感覚は、確かに決して悪いものではないのです。
と表現し、妙に癖になるとも。これも女子的感覚なのか…。
では、どんな過酷な旅なのか。
まずは、「メトロな女」では、1日で東京の地下鉄を全線完乗するというもの。6:58に渋谷を出発して、終着は23:20に代々木上原。16時間22分も乗り続ける。決して楽ではなく、途中でロングシートに寝っ転がったり、混雑の中で食事をしたり。まさに、地下鉄マラソン…。
さらに、「膝栗毛の女」では東海道を主に鉄道を53回乗り継いで京都まで行ったり、「鈍行列車の女」では鈍行列車で24時間でどこまで行けるかの耐久レースをしたり、最近ブームの秘境駅に行ってみたり…。
最後に、筆者が鉄道に乗る理由。根室本線に8時間も乗るにの根室に着かないというヘンなプランが提示された時に、
しかし私、「長い時間、鉄道に乗る」という行為は、嫌いではありません。というより「乗ってさえいればいい」という時間は、長ければ長いほど嬉しいのであり、
「八時間? ええ、乗りますとも!」
と、即答していたのでした。
と書く。乗っていれば幸せ…。
テツと言えば、男子と決まっていたのは、つい最近まで。女子テツというより、女流テツというところがまたギャプがあって、本書が楽しめるんだよね。
女流阿房列車 (新潮文庫) | |
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