やがて消えゆく我が身なら/池田清彦
『やがて消えゆく我が身なら (角川ソフィア文庫)』を読んだよ。死に対する恐怖はありません。
池田清彦氏のエッセイ集。アッシの池田本との出会いは『環境問題のウソ』から。ちくまプリマー新書だったけど、かなり衝撃的な内容で、ここからアッシの環境問題への関心が深まったと言っても過言ではない。
とは言え、今回は環境ではなく、池田氏の専門の生物学のお話と言ってもいいかも。テーマは「死」。でも、それは人間の生き方と言ってもいいかもしれないよね。どう生きるべきか…って、死んでしまったらそんなこと考えなくてもいいわけだからね。つまりは、どうしたら有限の命を面白く生きられるかを池田氏なりに考える本っていうわけ。
では、池田氏の持論を紹介。
人は、大げさに言えば、自分なりの倫理、という物語を生きる動物であるから、利害に左右されて、首尾一貫した物語を構築できないような状況になると、自分の人生を楽しめないのではないか、と私は思う。と。これはやっぱり人は社会的な動物ってこと。それをうまいこと表現しているよね。っていうか、常にこれに悩まされていると言ってもいいかも。
もう一つは、生物多様性について。
生物が生きるということは、他種や他個体とコミュニケーションしながら変化していくということだ。いかなる権力をもってしてもこの変化を止めることは不可能である。と言い、当たり前だけど進化を止めることは不可能であることを主張する。だから、生物多様性の保全って、たかだか人間の考えた理念にすぎないとも言っているよ。そう、だから、自然保護って何なんだろとつい思ってしまう。池田氏の理屈に納得しているから。
ところが、理屈に納得しない場合に対して、
身も蓋もない私の主張に対する曲解や反論を読むと、人々が死守しようとしているのは結局は己の情緒であって、論理や理論ではないことがよくわかる。と池田氏。うん、己の情緒って、前述の自分なりの倫理と同じだよね。いや、それは人のサガなんだからと言ってしまえば、それまでなんだけど…。
おっと、池田氏に人のサガがないってことではないんだけれども…。やっぱり、理解され難いかもね。
やがて消えゆく我が身なら (角川ソフィア文庫) | |
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