「みんなの意見」は案外正しい/ジェームズ・スロウィッキー
『「みんなの意見」は案外正しい』を読んだよ。この「案外」というのがミソなんだけど。
どの本だったか記憶に無いのだけれども、以前に読んだ本で紹介されていたもの。本屋の店頭で本書を発見した時に、すぐにピンときたぐらいだから、アッシの記憶の片隅にかなりのインパクトを残したのだと思う。っていうか、タイトルが印象的なだけなのかも。
で、論旨はと言うと、要は集合知。一人の専門家の判断と、大勢の素人集団の判断のどちらが正しいのかという問題。アメリカでの多くの事例を紹介しながら、考察しているよ。
では、どんな時にも「みんなの意見」が正しいのかというとそうでもない。条件として筆者は、
正しい条件の下で正しい課題を与えられたら、多様性、独立性、分散性という予測市場の基本的特性は、必ずみんなの意見を正しい方向に導く。と言っているよ。特に、前者2つの多様性、独立性は重要みたい。
独立性については、いろんなひとがお互いが影響や情報交換しない立場でいることが正しい方向に導くのだと。そうそう、空気を読んではいけないのだ。空気を読むということは独立性が損なわれること。空気を読むと正解には辿り着かないのかも。なんとなく分かるなぁ〜。
多様性については、似たもの同士の集団は、それぞれが持ち込む新しい情報がどんどん減ってしまい、学べることが少なくなるのだと…。
では、専門家の判断はどう考察されてるか。
専門家はまた、自分の見解がどれくらい正しいか推し測るのが、驚くほど下手だ。彼らも素人と同じように自分の正しさを過大評価する傾向にあることがわかっている。と。さらには、自分がどれぐらい間違っているかすらまったくわかっていないと言い放つ。
分かりやすい例え。
曇りの日に傘を持って出るか否か、どう判断するか。天気予報の降水確率よりもみんなが信じるのは、街を歩いている人が傘を持っているかどうか。それだけのことで、結構うまくいったりする。まさに、専門家(降水確率)よりみんなの意見が優先される事例だよね。
もうひとつ、行列の例。
行列に割り込むのはよくない。でも、それを公権力で強制される訳でもないのに、割り込む人は少ないよね。みんなの自発的慣習が、強制もせず、多大な労力も費やさず、それでいて大勢の人を調整するのに不可欠な役割を担っているわけだよね。
グーグルの検索結果の表示順が、この「みんなの意見」は案外正しいという原則でシステム化されているということは周知の事実のようだよね。でも、それは多様性と独立性に担保されたもの。日本人の世間論では通用しないような気もするよ。あ〜、誰かが日本人のみんなの意見について、もっと深く考察してくれないかなぁ〜。阿部謹也先生だったら、やってくれるかなぁ〜。
「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫) | |
小高 尚子 角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-11-25 売り上げランキング : 10287 おすすめ平均 名著は文庫でも名著 Amazonで詳しく見る by G-Tools |