考える技術
『考える技術』を読んだよ。大前研一氏は自身たっぷり。
大前研一氏は初読書。本書の単行本が出たのが2004年11月だから、書かれている話題が多少古かったりもするけれども、考え方は変わらないわけで、今回の文庫版でも十分楽しめるよ。
いきなり冒頭から、「考える技術」とは(文面的には「問題解決の根本は」と言っているけど)、「論理的思考力」であると。先見性とか直感とかいったものも、実は論理的思考の成果だと。そして、間違いやすいのが、「仮説」と「結論」の取り違え。仮説を実証するだけの証拠がないのに、それが結論だと思い込んでしまうのだと。さらには、「現象」と「原因」の違いも。
現象はあくまで現象にすぎず、原因ではない。この当たり前のことがなかなか理解できないのだ。と、大前氏。
そこで、事例として登場するのが、小泉さんの郵政民営化。政局的はいまだに燻ぶっている感じだけど。
大前流論理的思考を発揮して、この問題を考えると、「目標設定の誤り」であるということになる。要は、郵政事業は「民営化」ではなく、事業を止めるべきだという結論。当時は、すでに「民営化」という目標設定を疑うことなく、国民全員が突き進んでしまった感じだったよね。その根本の考え方に間違いがあったとは…。冷静に考えてみるとそうかもしれない。国民は政局に踊らされたということか。
論理的思考の重要性はよく分かった。ただ、日本人はこの論理的思考が苦手。これは「日本人のメンタリティーにも原因がある。」と大前氏。
論理的思考のベースには事実の積み重ねがあるが、そもそも「事実に対して忠実になれない」日本人が多いのだ。と。そう、事実に対して忠実ではなくて、自分の部署や立場に対して忠実な日本人が多いのだ。
たとえ自分の感情がどうであれ、出てきた事実に対しては謙虚になる。それが問題解決のための絶対の前提条件なのだ。
やっぱり、日本人は苦手そう…。
そして、大前流発想法。発想法というと、すごいテクニックかと思うけど、中身は地味。発想というものは最初は仮説でしかない。それを仮説→検証、また仮説→検証と繰り返して一つのフレームワークになっていくというプロセスを経る。それがアイデアに結びつくのだと。
いいアイデアを生み出そうとか、飛び抜けた発想をしようと思っても無駄だということだ。<中略>体力づくりでいえば腕立て伏せを毎日するように、思考のトレーニングをするしかないのである。やっぱり、地道な努力…。
途中、思考の為の練習課題などが挟まれていて、頭の体操にもなるよ。最後にその練習問題のひとつを紹介。
次の休日に、江戸川の土手に上がって10キロ歩いて戻ってきてください。
いいよね。この課題。そう、ふだん使わない脳を動かすのが目的。でも、これが楽しいかも。アッシの山散歩の時の思考と同じかも。
考える技術 (講談社文庫) | |
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