シリコンバレー精神

シリコンバレー精神』を読んだよ。ドッグ・イヤーの世界はあっという間。

元々「Foresight」という雑誌に1996年9月から2001年5月まで連載していたものを中心に他のメディアに書かれたものまとまたもの。梅田望夫氏のデビュー作かも。アッシが読んだのは単行本が出た後の文庫版。だから、「文庫版のための長いあとがき」が付いていて、その後のシリコンバレーの様子も書かれているよ。

大きく分けて4部構成。最初はシリコンバレーの基本から。基本といえば、シリコンバレーの「流儀」。ちょっと長いけど引用。

第一に、事業の成功・失敗はあくまでビジネスというルールのある世界でのゲームでそれを絶対に人生に反映させないこと。
第二に、事業とは「失敗するのが普通、成功したら凄いぞ」というある種「いい加減な」遊び感覚を心の底から持つこと。「成功するのが当たり前、失敗したら終わり」という「まじめ」発想を一掃しなければならない。
第三に、失敗したときに、「投資家や従業員や取引先といった関係者に迷惑がかかる」という考えを捨てること。皆、自己責任で集まってきているのだと、自分に都合よく思い込まなければならない。
そして、この三つの知恵は、不運や失敗をしたたかに乗り切っていくための救命胴衣だと筆者。うん、いかにもアメリカ人らしい発想。会社が倒産すると社長の自殺事件とかが多い日本人には馴染みにくいかも。これも個人責任の考え方の違いからか。
そして、この「流儀」が本書全体にも通底する考え方になっているよ。

第2部ではIT革命に触れる。2000年現在の話だけど、日本の「IT革命」と言われていることは、単なる「IT化」であると筆者。たまは、ITインフラ構築であるとも。

「IT化」と「IT革命」の違いは、旧秩序を破壊しようとするエネルギーの差である。
と。それを考えると、未だに日本は「IT化」が進行しているだけのような…。確かにインフラ整備はかなり進んだ。それに載るITコンテンツってやっぱり旧秩序のもののような。でも、じゃ新秩序ってなんだって言われると、旧秩序に居るうちには分からない…。

第3部はマイクロソフトリナックスの話題。シリコンバレーベンチャー企業の台頭で、最も変わったのは大企業であると。そして、その大企業の代表がマイクロソフト。インターネット分野に出遅れたマイクロソフトが、遅れを取り戻そうと、ネットスケープをぶっ潰したのは有名な話。その手法は、ブラウザ無料化。これは過去の独占企業のイメージとは全く違うもの。まさにベンチャーが大企業を変えたんだよね。

さて、最後に、本書のタイトルである「シリコンバレー精神」とは何か。いろいろ書かれてはいるけれども、アッシ的には次の一文。

人種や移民に対する底抜けのオープン性、競争社会の実力主義、アンチ・エスタブリッシュメント的気分、開拓者(フォロンティア)精神、技術への信頼に根ざしたオプティミズム楽天主義)、果敢な行動主義といった諸要素が交じり合った空気の中で、未来を創造するために何かをし続ける「狂気にも近い営み」を面白がり楽しむ心の在り様のことである。
違う言い方をすれば、「マドル・スルー」を楽しむっていうんだけど、解説は省略。そう、面白がること。シリコンバレーは脳を喜ばせる世界なんだろうね。
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