海と毒薬/遠藤周作
『新装版 海と毒薬 (講談社文庫)』を読んだよ。どうしてこの題名なのか…。
筆者は言うまでもなく、有名な遠藤周作氏。氏の作品は、狐狸庵先生のイメージが強くて、アッシ的にはあまり読む気がしなかったのは事実だけど、ひょんなことから、この本書を知り、読んでみようという気になる。
内容的には、ある事件に基づいているんだけれども、完全な創作だという。多分、筆者なりの作品イメージが、この事件によって一気に広かったんだろうね。
さて、本書をどう読むか。当然、人それぞれだと思う。戦争のこと、その当時の日本人のこと、一神教と多神教、日本文化のこと、etc。
で、アッシ的にはその当時の大半の日本人が考えていたことに納得する。
例えば、解剖を引き受けた医師がその直後に、
あれでもそれでも、どうでもいいことだ、考えぬこと。眠ること。考えても仕方のないこと。俺一人ではどうにもならぬ世の中なのだ。と思う。思考を停止し、同調していく。この同調は日本人らしいけど、その当時はさらにこう考えている日本人が多かったのではないかと想像できるよね。
もう一つは、看護婦の独白。
どうせ何をしたってあの暗い海のなかに誰もがひきずりこまれる時代だという諦めがわたしの心を支配していたのかもしれません。と。そして、日本が勝とうが負けようが関心が無かったとも言っているよ。そう、当時のほとんどの日本人のホンネはこれだったんだと思う。
本書のテーマとして「良心」があるけれども、その「良心」も諦めに似た境地がベースになっているのではないかと思う。もう一つ、同調という日本人の文化も加味されたのだろうけど…。
考えることは多々あるけれども、純粋に小説としては楽しめるものでした〜。
新装版 海と毒薬 (講談社文庫) | |
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