哲学の謎

『哲学の謎』を読んだよ。『無限論の教室』を読んでからの気になる1冊。

文字通り、哲学の本。哲学者たちの小難しい議論が書かれているわけではなく、対話形式になっているから、比較的読みやすい。話されるテーマも身近なものが題材で、いろいろと例えながら思考実験を重ねていくよ。それでも深く考えていくと、意外な結論が導かれたりする。それがまた面白いよ。

例えば、意識と実在について。我々は意識を持って、ある事象を捉えるとする。これは実在とはまったく位置関係を持たないわけ。…となると、実在の世界はない…という結論が導かれる。不思議だね。分からないね。

「時の流れ」についても。

想像してほしいのだが、川岸が見えないほど広い川で、川の流れが完全に一様・均一であったとする。君はそこを流れにまかせて船で下っていくとして、いったい自分が川を下っていることがわかるだろうか。
という命題。川の流れを認める手掛かりがないとしか言えなくなる。「時の流れ」もこれとまったく同様ということ。
われわれはそこに「流れ」など認められないはずなのだ。
…と。これもまた不思議。この議論は、
われわれは「いま」から逃れられない。永遠に「いま」なのだ。
と発展していくよ。

面白かったのは、天涯孤独のロビンソンという人物を想定した思考実験。彼に規範はあるんだろうか?と。
彼は「赤いりんご」を「灰色のりんご」と捉えているかもしれない。そして、狂気も正常も有り得ない。何をどう解釈してもよいからだ。これまた、なんとも不思議な感覚。

個物から一般観念を導き出せるか?という議論も面白い。個物としての犬を何匹見たとしても、「犬」の一般観念は導き出せるだろうか?これって、無限の話にも近いような。帰納法を使う?アッシには想像できないけど。

行為と意志についての議論も。行為の能動性を意志に求めると、「腕を上げる」という行為の為に無限に意志しなければならなくなると。これは、究極的に、行為を始めることが不可能になっていく。

こんな風に、いろいろと考えていくと、不思議なことばかり。でも、まじめに考えた結果なんだから、受け入れなければならないのかも。
それでも、考え続けるのが重要のような気がするよ。人間なんだから。

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