133キロ怪速球
『133キロ怪速球』を読んだよ。面白くて一気読み〜。
ご存知、中日ドラゴンズを代表するベテラン投手の山本昌が上梓。昨年200勝を達成し、名球会入り。それを記念しての出版かも。でも、ドラゴンズの現役選手が本を出すことなんてめったにないから、アッシにとっては嬉しすぎ。
山本昌といえば、スクリューボール。これはアメリカでの野球留学中にマイナーの内野手に教わったとか。試合前のキャッチボールでその内野手が投げていたのを見て、伝授を受けた。そして、実際にマイナーの試合で使ってみて、見事に三振。その内野手の名前は、スパグニョーロ。アッシ的にはこの複雑な名前をよく覚えていたものだと感心。
さて、山本昌で有名なのは、野球留学で才能を開花させたという話。野球留学といえば、ちょっとカッコイイ感じがするけど、山本昌の場合はちょっと違う。要は戦力外通告寸前で、アメリカに居残りさせられたという感じみたい。人生ってどう転ぶか分からないもののだね。アメリカ留学の途中で呼び戻されて、その年は5勝をマーク。ところがまた次の年もアメリカ留学に行かされる。ここではあのスローカーブを覚え、今の山本昌の投球スタイルが確立する。
プレッシャーとの戦いもある。登板前にはバスタオルを頭からかぶり、グラブとスパイクをせっせと磨くという。
僕は「野球の神様」の存在を信じていて、お願いしているのだ。う〜ん、このマジメさがかっこいい。
「きれいにするから、きょうもがんばってくれ!」
神様はきっと見ている。これだけやったんだから、もっと上手になる…。43歳になった今だって、僕はそう考えている。
子どものころからそうだった。
「野球にはねかえってくるから、悪いことをしちゃダメだ」
そう思ったし、何かを我慢するということも野球を基準にして考えていたものだ。
井端の話も参考になるよ。「正しい努力」をしたのだと。そして、それは「観察力」にいきつくと言う。
周囲を見渡す。全員が自分よりうまい。では、何が足りないのか。どこが違うのか。どうやればそれに近づけるのか。模倣でもいいと思う。それを感じる心、着眼点、好奇心、突き詰めていく探究心…。決してアスリートの世界だけの話ではないのではないか。そう、サラリーマンだって同じ。
近藤信一、今中慎二、高木守道とあまりメディアに登場しない元選手・監督などの裏話も有り、ドラゴンズファンのアッシにとって、貴重な一冊となりました〜。
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音楽を「考える」
『音楽を「考える」』を読んだよ。音楽を哲学的に考えたり、科学的に考えたり。
茂木健一郎氏と江村哲二氏(故人)の対談集。江村氏は、独学で作曲を学んだとか、しかも学歴は工業大学卒。こうなると、当然科学的に音楽を考えてもおかしくはないよね。
「聴く」という態度についての見解。茂木さんは、名を成した人は皆、「聴く」という態度を持っているという。それに対し、江村氏は、
数学者や物理学者でも、何か新しい発想が生まれるときというのは、人から与えられるものではなく自分のなかに何かをつかむということですね。という。そう、行動的にも耳を澄ましてみるという行為は減ったような。そして、この「聴く」という行為は、聴衆が自分の音楽を創ろうという行為であるとも。
これに関して、茂木さんは、
聴くことは、決して受身ではなく、自分にぴったりと合ったなにものかを探すという意味を考えると、かなり創造的な行為になりますね。という見解。そうだよなぁ〜、聴きながらいろんなことを考えて自分なりに解釈しているよなぁ〜、これが低レベルながらアッシの創造的な行為なのかも。
音楽を離れて、表現者の大成について。茂木さんの「野次馬的な根性」について、好奇心が原動力だと江村氏。そして、
可能性という一言では落とし込めないというか、そもそも自分の可能性なんてはじまから考えないですよね。世界が存在するということに対して全身でぶつかっていくというか。と。人間には限度はないんだよね。
現代音楽の技法についても語る。アッシにはよく分からないけど、「12音技法」とか「無調」とかがあるらしい。これらの起源について、技法有りきではなく、結果であると。
表現として必要なエネルギーがそこにあって、それが出てきた結果なのだと思います。それを、シェーンベルクはああいう形で技法としてまとめあげたわけですが、実際問題、あれを技法として確立したのは彼ではなく弟子たちです。と江村氏。
まさに「描きたいものを描く」と言った奈良美智と同じだよね。
芸術の根幹は、人間のエネルギーそのものなんだなぁ〜。
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現代アートビジネス
『現代アートビジネス』を読んだよ。アートを商売にする難しさ…。
ギャラリスト・小山登美夫氏が現代アートについて、その現状と展望を語る本。そもそも、ギャラリストってどんな職業って感じだけど。
登場人物は、アーティスト、ギャラリスト、コレクターなど。作品を供給する人、仲介する人、買う人という位置付け。特に日本では現代アートを理解する人が少ないから、現代アートにとって、ギャラリストの仕事は重要みたい。
で、まずは小山氏の仕事を中心に、ギャラリストの仕事を紹介。
ただ、一つ言えるのは、僕はその「わけのわからない」ものに夢中になってしまったということです。そう、この「わけのわからない」が現代美術のこと。そして、筆者は「わからないから面白い」と考える。
続いては、アーティスト。村上隆とか奈良美智とか。村上隆はアニメとかフィギュアとかをモチーフにしているから、オタク?という印象があるかもしれないけど、これを筆者は、
オタクという日本固有の文化風土で生まれて広がりを見せている「欲望の現象」を、徹底的に調査・分析して作品のかたちで表現した、きわめてコンセプチュアルな試みなのです。と言う。芸術作品に違いないと。
そして、奈良美智。奈良さんの絵はイラストとどう違うのか?という問いに、奈良美智は、「僕は描きたいものしか描かないよ。」と言ったという。この答えは筆者の考え方「自分にとってよい作品を作ること」に繋がる。
アートの価値についても。商品であり、作品であるアート。マーケティングが効かないから、ブランド化も危険であると。ブランドは消費されるものであるから。
最後はコレクターの話題。ちょっとアッシには想像できない世界だけど。金額的に…。同じ芸術でも音楽と違い、残る芸術っていうものはその作品の価値が分かりやすいから、そういう感想になるんだろうけど。
でも、本書を読んで、何となく夢のある話を聞いたような気がするなぁ〜。
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すべては音楽から生まれる
『すべては音楽から生まれる』を読んだよ。音楽を持ち上げ過ぎの観が…。
去年くらいから、音楽に関する本を出している茂木さん。アッシも音楽が嫌いじゃないので、そういう意味で楽しみだった本書。図書館でも人気で予約を待ち数ヶ月。
音楽を茂木さん的に捉えると…というのが本書のポイント。そこはやはりクオリアから入る。楽譜というデジタルなものから、あの素晴らしい音が発せられ、「今、このとき」を過ぎていく。すぐに過去のものになってしまうのに、記憶に残ったわずかな情報から人間はクオリアを生み出していく。その中に感動がある。
うん、以前から茂木さんのクオリアに関する議論をを読んでいるので、すご〜くよく分かる。イメージが沸く。確かに音楽を聴くと行為は不思議なもの。ひとつひとつの音をデジタルとして捉えることはできないのに、それでも感動が残る不思議さ。クオリアのおかげ。
例えば、≪G線上のアリア≫を聴くと敬虔な美しい気持ちになると、茂木さん。
強いられるのでなく、自らの内から生まれてくる、祈りにも似た感情。そっと目を閉じ静かに頭をたれたくなるような、神々しさ。もはや言葉では言い表せない。そして、言葉にならないからこそ、信用できる。それが祈りのような音楽の正体だ。…と。「言葉にならない」とはデジタルでは表現できない部分。まさにクオリアの範疇かも。
秘仏の話題も面白い。めったに公開のされない秘仏。「見ることができない」とはまさに音楽と同じだと。
本体は、見えない。聞こえない。それをいかに想像するか、ということ。聴くということの本質がそこにある。音楽を聴く時、人間は何を考えているんだろと思う。よ〜く考えてみると、ますます分からなくなる。クオリアですべてが解決するのかとは思うけど。
本書の最後に「ラ・フォル・ジュルネ」の主催者であるルネ・マルタン氏との対談があるけど、これは余計なような。逆にいうと、これの為に本文があるような気も。だから、冒頭の「持ち上げ過ぎ」という印象にもなるよね。残念。
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夢みるクラシック 交響曲入門
『夢みるクラシック 交響曲入門』を読んだよ。交響曲は爆発だ!!
ひとことで言うと、交響曲を紹介しながらその歴史と音楽の仕組みを紹介した本だよ。
ハイドンから始まって、モーツァルト、ベートーベン、ベルリオーズ、ブラームス、マーラー、ブルックナー、チャイコフスキー、ドボルザーク、シベリウス、ショスタコービッチ…。
本書で紹介されている交響曲の作曲家を全部上げてみたけれども、かなりの人数だよなぁ〜。それぞれが何曲書いているから、交響曲の数はもっと多い。
そして、その歴史がある。形式を重んじた初期の頃から、ロマン派へ。果ては書きたいものを書く派まで。それぞれの作曲家の思いが伝わる交響曲。そんな裏話的な解説を聞くとさらに交響曲鑑賞も楽しくなるよね。
筆者が作曲者なだけあって、曲の構成とか技法とかの解説も。もしかしたら、小学校の音楽で学習した内容レベルの話なのかもしれないけど、小学校を卒業して何十年レベルのアッシには新鮮な話題。
またまた聞きたい曲が増えてしまった〜。
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みんな山が大好きだった
『みんな山が大好きだった』を読んだよ。山に命を懸ける気持ちとは…。
本書は単行本『山男たちの死に方−雪煙の彼方に何があるか』を改題した文庫版。内容はまさにこの単行本のタイトル通り。山に命を懸けた人間の生き様を描いたもの。
それにしても、山に命を懸ける山男たちの気持ち。分からないでもない。平地で普通の生活をするもの人生だけど、それはエキサイトするほどの刺激がない。極限までの体験はない。
一歩先でどうなるか…。その全てが自分に懸かっているなんて、普通の生活じゃありえないよね。この本に登場する山男たちは、皆、自分の力を試しに山に行ったんだと思うよ。そして、山に散っていった。
孤独や山登りなんてかっこ悪いなんて、誰が言った〜。人生そのものが、孤独で自分の命を懸けた山登りそのものなんじゃないかなぁ〜。
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登山の誕生
『登山の誕生』を読んだよ。山関係が続くけど。
ちょうど読みたい本の端境期ってあるよね。予約していた本がなかなか手に入らなかったり。で、そんな時につい手に取ったのが、この本。
ヨーロッパの登山から始まって、日本の登山の歴史が綴られているよ。楽しみとしての山登りって、ホントについ最近の出来事なんだってことが分かるよ。
特に面白かったのはヨーロッパでの山に対する考え方。16世紀頃までは山には悪魔が住んでいると言われて、誰も近づかなかったとか…。宗教の影響が大きかったみたいだね。日本ではどちらかというと宗教的には積極的に山に登ったいたみたい。それでも、景色とか花とかが美しいということすら感じられなかったのかなぁ〜。
その後は、ヨーロッパでも日本でも科学の進歩が山への関わりに大きく関係しているようだよ。博物学、地理学、地質学の調査で山に入ることで近代的登山に移行してきたようだから。
なんで山に登るんだろうって考えると不思議だよね。つらい思いをして汗掻いて、わざわざ登るには、人それぞれに意味があるんだろうと思うけど。
アッシの場合は、若い頃は壮大な景色、最近は花を見ることが楽しみかなぁ〜。
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