「知」の挑戦 本と新聞の大学II/姜尚中,一色清,中島岳志,落合恵子,浜矩子,福岡伸一

「知」の挑戦 本と新聞の大学 II (集英社新書)』を読んだよ。何のために学ぶのか。

『「知」の挑戦 本と新聞の大学I』の続編ということで、今回もモデレーターは姜尚中氏と一色清氏の両名。そして、テーマも前回と同じく「教養」。巻頭で一色氏は、

でも、私は「教養、つまり幅の広い知識と関心を持っているほうが人生は豊かになる」と一貫して思っています。五〇歳を過ぎたころからは、そんな思いをすることが日々の暮らしのなかで増えました。
と言う。あぁ、同じ気持ち。どうして、この年代になるとそう思うんだろ。

では、どんな講義があったのか。幾つかを紹介。
まずは、中島岳志氏。「橋下徹はなぜ支持されるのか」という興味深いテーマ。その中で、

議会がなぜあるかといえば、議論のなかで少数者の方に言い分があると思われるときは、その意見を取り入れて政策を進めていくという機能を発揮させるためです。デモクラシーの軸足は、単なる「多数者の決定」というよりも「議論と対話による調整」というところにあります。
と説明。確かにそう。多数決で物事が決まるなら、議会はいらないってわけか。で、この論理が橋下徹の分析に繋がるんだけど、どう繋がるかは本書に任せるよ。

もう一つ。浜矩子氏。テーマは「グローバル時代をどう読むか」。ここでは、

やはり経済が人間の営みである以上、人間と人間が相対するということが基本であって、それが最も容易に実現されるのがローカル・コミュニティの世界だと思います。
とテーマとは逆説的なことを結論風にしているよ。面白いよね。揺り戻しというか、逆療法というか。

最後に紹介は、われらの福岡ハカセ

つまり、フェルメールの絵はもちろんとまっているのですが、実は動的な状態の一瞬をとらえ、そこに至った時間とそこから始まる時間をフェルメールは描こうとしたのではないでしょうか。
と、動的平衡フェルメールを結び付けて、話をまとめる。この論理構成が圧巻。個々のトピックスは何度も読んでいる話だけれども、その構成が文章によって変化し、読ませてくれるのが福岡ハカセの本の楽しさなんだよね。

これでまた少しは教養が身に付いたかなぁ。まだまだ続編があるようなので、期待しよう。

「知」の挑戦 本と新聞の大学 II (集英社新書)
「知」の挑戦 本と新聞の大学 II (集英社新書)姜尚中 一色清 中島岳志 落合恵子 浜矩子 福岡伸一

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図書館で調べる/高田高史

図書館で調べる (ちくまプリマー新書)』を読んだよ。ブラウジングの有効性。

そのものズバリ、現役の図書館司書氏が図書館での調べ物の仕方を指南した本。ちくまプリマー新書は中高生向けの新書だけど、大人の為の入門書的な位置づけとしていい。だから、今回は「現役の」というところがポイントで、図書館と司書の仕事を知ることができたかも。

本書の冒頭は分類について。これを知らなければ、図書館は始まらないよね。
そして、実際に図書館で書架を巡る。

考えながら歩いて、並んでいる本を見て、本の内容をイメージして、手に取ってめくっていく。図書館の本を探すというのは頭と体を使う作業なのです。
と筆者。そう、これがブラウジングというやつ?やっぱり、検索だけの世界ではイメージが広がらないってことか。ある程度の物量は必要なんだね。

で、その検索の世界。検索でもブラウジングでも見つからなかったらどうするか?

そして、「見つからない」という情報も活用しましょう。それでおしまいではなくて、そこから先に進む道もたくさんあるはずです。探している事柄の説明が見つかっても自分で納得がいなかければ、それは次の調べものにつながっていきます。
と。あぁ、やっぱりここでも想像性を発揮することなんだよね。イメージを膨らませれば、次に繋がる。これはポイント。

最後に蔵書数と情報量の関係について。
蔵書数の情報量は完全な比例関係にあるわけではなく、蔵書数が増えても、それほど情報量が増えるわけではないと。うん、確かに本の中には重複する情報もあるわけだし、蔵書が多ければいい調べ物ができるというわけではないよね。ここも今回のポイント。

うん、図書館は奥が深い。司書というとちょっとマニアックな感じがするけど、この奥の深さがそうさせるのかもしれないね。

図書館で調べる (ちくまプリマー新書)
図書館で調べる (ちくまプリマー新書)高田 高史

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未来をつくる図書館/菅谷明子

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)』を読んだよ。図書館は無料貸本屋ではない。

副題が「ニューヨークからの報告」という通り、本書はニューヨーク公共図書館の事例を詳細に報告したもの。そう、公共図書館であって、公立図書館ではないところがまずはミソ。その母体は個人的なコレクションを所蔵していた私設図書館をNPO的な団体が引き継いだもの。勿論、ニューヨーク市も財政的な支援をしてはいるけど、あくまでも「公共図書館」ってわけ。
だから、マーケティングや財政のやり方が、ほとんど民間企業的。特に寄付金の集め方は非営利組織には非常に参考になるかも。それだけ、徹底しているってことだけど。

では、ニューヨーク公共図書館はどのような使われ方をしているのか。
まずは調べ物屋さん。とにかく調べたければ、図書館に行く。そこには本があるだけでなく、適切なアドバイスを受けることが出来る。だから、調べ物をするには効率がいい。だから、人が集まるという好循環。
そして、レンタルオフィスも。図書館のあらゆるリソースを使って、商売をする人までいる。でも、こんなことにも図書館は寛大。

彼が失業したり、ホームレスになって社会保障のコストをかけるよりも、図書館の資源をどんどん活用してもらって得意分野で才能を伸ばし、経済的に自立してもらった方が、ニューヨーク市にとっても彼自身にとってもメリットが大きい、というのだ。
という理屈。ホント、これは正論。

振り返って、日本の図書館。
相変わらず、黙々と本を貸し続けているイメージだよね。図書館というより、日本人の図書館に対する要求レベルが変わっていかないとダメなのかも。そして、その要求に対応すべく、図書館が進化していくのがスジかな。

徐々にではあるけれども、日本にもその萌芽が見られてきているよね。日本の図書館の「未来をつくる図書館」がニューヨークにあったわけだよね。

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)
未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)菅谷 明子

岩波書店 2003-09-20
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未来の図書館、はじめませんか?/岡本真,森旭彦

未来の図書館、はじめませんか?』を読んだよ。これはビジネス書だ。

佐賀県武雄市の図書館がメディアで話題になってからというもの、今ちょっとした図書館ブーム。っていうか注目されていることは確か。蔦屋書店しかり、本の周辺が騒がしくなっていて、本そのものっていうより、本を巡る環境にも注目されて始めているって感じかな。本がある場所と言えば、まずは図書館だからね。

という訳で、本書はその図書館の未来について語るもの。どうしてこのタイミングかというと、70年代に続々と建てられた公共図書館がそろそろ建て直しの時期に来ているということもあるんだろうね。だから、まずは、「図面から生まれる図書館は正しいのか」という問いから始まる。当然ながら、建物ありきではダメ。そのビジョンが重要であり、ビジョンなき図書館は単なる箱ものと化してしまうわけ。
では、未来の図書館をどのように考えたらいいのか?そこでの考え方の一つが「VMSO」。筆者が前職のヤフーで教わったというもの。経営的発想だよね。このVMSOのうち、一番重要なのはVision。これが共有化されていれば、セルフガバナンス効果が効き、うまく事が運ぶっていうわけ。つまりは、判断の根拠として、いつでもVisionという原点に戻れるってことだよね。
この考え方を図書館に活かすとどうなるか。

「図書館がつくられることで、市民はどんな恩恵を受け、どのような課題が解決されうるのか」、これをまず最初に定め、VMSOを策定し実行することが大切なのではないでしょうか。そしてそれこそが、いわゆる“お役所仕事”から抜け出す方法の一つなのかもしれません。
うん、VMSOでお役所仕事から抜け出したい。

未来の図書館の為のもう一つの観点は「まちの課題」は何か?ということ。

図書館は、まずは地域の課題が出発点です。課題が見つからないままに「図書館でまちづくり」とだけ言っても、その図書館は「まちの課題を何も解決できない」という特徴を持ち合わせるだけに終わってしまうでしょう。
そう、これもVisionに繋がることだよね。しかも、まちのVisionも確認する必要があるってこと。だから、市区町村の総合計画を見ておけとも。

後半はアイデア出しの手法などの紹介があり、図書館の本だけど、これは完全にビジネス書。「図書館」を「会社」とか「組織」に読み替えて、応用できそうです〜。

未来の図書館、はじめませんか?
未来の図書館、はじめませんか?岡本 真 森 旭彦

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電子出版の未来図/立入勝義

電子出版の未来図 (PHP新書)』を読んだよ。その未来にそれほど変化無し。

iPadが発売された2010年は確か電子書籍元年とか言われていたのは確か。アッシもどこかの大学へ講演を聞きに行ったことがあったし。そう、思い出した。電子書籍元年ていうより電子書籍用デバイス元年って言っていたように思う。
本書はその2010年末に、筆者がブログで書き綴ったものをまとめたもの。時宜にかなう上梓だったんだね。それを今頃になって読み始めたわけだけど、率直に言って、今も当時も全体の状況って変わっていないんじゃないかという感じ。amazoniTunesの隆盛は変わらないわけだし、日本独自のプラットフォームは苦戦っぽいから。結局は先行有利だったんだよね。

そんな中で筆者の主 張は、電子書籍SNSとの連携。いわゆる電子書籍マーケティングの話として、SNSをいかに活用するかといったところ。確かに、その後、読書メーターとかブクログとか、この手のツールがたくさん出現したよね。アッシも使っているけれども。でも、結果的には、amazonの独り勝ちを後押しした感が否めないんだけど。

本書は全体的に読み難い感じ。同じようなことが何度も出てきたり、結局は何が言いたいのか分からなくなったり。もう少し、何か一気通貫したストーリーが欲しかったなぁというのが本書の感想でした。

電子出版の未来図 (PHP新書)
電子出版の未来図 (PHP新書)立入 勝義

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リクルートという奇跡/藤原和博

リクルートという奇跡 (文春文庫)』を読んだよ。大仰なタイトルのような気がするけど。

本書は、藤原和博氏がリクルート社員時代に経験したリクルート社のあれこれをまとめたもの。アッシ的には、元和田中学校長の藤原氏というイメージが強く、それに関する本は過去に何冊かを読了。でも、氏の原点であるリクルートという会社を詳しく知りたいと思っていて、本書はそれに応える本に思えたから。

では、リクルートとはどんな会社だったのか。発行する媒体が雑誌のようでもあり広告のようでもあり、また、流通の仕方も独特。でもこれはあくまでもカタチの話。リクルートの特徴はズバリ社員。ひとつの例としては、「伝説の営業マン」。これを、

ただ単発的な大型受注をしただけではダメで、新しい採用システムを提案しながら相手の懐深く食い込んで、社長の考え方や会社の制度そのものを一新させた実績がなければ、与えられない称号だった。
と説明しているよ。これって仕事的には、最高に面白いよね。営業の力でここまでやれるって、スゴイこと。

そして、人材の採用の面でも独特。社長自らが、これぞという人物には直接面接にあたるとか。さらには、独立していく社員の多さ。これは制度の問題ではなく、採用の問題であるという筆者。

もともとサラリーマンとしては不向きで、一国一城の主となる資質の人を採用しているから、自然そうなる。
と、ちょっと言い過ぎとは言っているけれども、これは本質的なものなのかも。藤原氏もその一人だったわけだし。

後半は、リクルート事件ダイエーへの買収とピンチを何度も乗り越えるリクルートを描く。これも、リクルートマンという精神の具現化だったのかもしれないね。そのリクルートマン精神は創業者である江副氏そのものだったんだろうね。そう、最近のリクルート、メディアであまり聞かないけど、どうしているんだろ。ちょっと気になる。

リクルートという奇跡 (文春文庫)
リクルートという奇跡 (文春文庫)藤原 和博

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図書館に訊け!/井上真琴

図書館に訊け! (ちくま新書)』を読んだよ。まじめに勉強すると奥が深い。

だいぶ以前から気になっていた本書。ひょんなことから筆者の講演を聞く機会があり、なるほどこんな人だったんだと益々興味が増したところで、漸く読む機会に恵まれたわけ。
発刊が2004年だから、かれこれ10年ほど前。でも、図書館の仕事の基本は変わっているはずもなく、ざっと概観するにはちょうどよい感じ。

本書の内容としては、図書館利用法徹底術。とにかく、調べ物をしたければ、図書館に行けということ。但し、ただ行っただけではだめで、さらに何をどう利用するかを詳細に且つ事例を大量に紹介しながら解説しているよ。

とは言え、当然ながら、心構えのようなことも必要なわけで、

そもそも資料や情報というものは、待っていても絶対に現れない。自分が能動的にアクセスの意思をみせたときに、むこうから自然と姿を現し始めるものなのだ。
とモチベーションを保持することがポイントになると言っているよ。いわゆるセレンディピティ?ちょっと違うかなぁ?

そして、具体的な図書館利用法。諸々の資料の種類の紹介から始まって、その探索方法まで。特に探索は奥が深い。
アッシが感心したのは、リファレンスブックの使い方。単なる辞典や辞書としてしか考えていなかったけど、その使い方は様々だし、応用が広範に渡る。しかも、筆者は必ず複数を引き比べることが肝要であると言う。それは、

同じ項目を掲げていても、同じ主題を扱っていても、記述内容、項目の立て方や編集方針、図表の表示方法、参考文献の選択まで、それぞれ異なっているからだ。
ということ。この差が貴重な情報になるんだよね。

そして、「訊け!」という意味では、リファレンスサービスも欠かせない。この「図書館に訊く」という行為は図書館自身を育てるためにもあるのだと筆者。

私は図書館という存在自体が、「人類の巨大なリファレンス・ブック」であると考えている。図書館所蔵の資料、アクセスのための目録、リファレンス・サービスなど、モノとヒトの総合的な知識の索引として存在しているといってよい。利用者から訊かれることがなければ、巨大な索引の進化はないし存在意味もない。
そっか、そう捉えることができるんだ。いや、これはアッシにとって新しい知見。図書館にとっても、「訊かれる」という外部からの刺激が成長の糧となるんだよね。
図書館に訊け! (ちくま新書)
図書館に訊け! (ちくま新書)井上 真琴

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