航空事故/柳田邦男

航空事故―その証跡に語らせる (中公新書 390)』を読んだよ。事故率は下がっているのか?

『マッハの恐怖』『続・マッハの恐怖』を読んだ後はコレって決めていたのが本書。『続々・マッハの恐怖』にしなかったのは、単に出版社の関係か…。ただ、「マッハの恐怖シリーズ」と根本的に違うのは、海外の事故を対象としていること。その海外での事故を「欠陥」、「ミス」、「空中衝突」という三つの典型的な側面から解剖し、問題点を探るというのが本書のねらい。

例えば、「欠陥」の問題。DC10の貨物室ドアの問題が大きく取り上げられているけれども、単なる設計ミスでは留まらなくなってくる。トライスターの別の事故を取り上げたうえで、

以上のように見てくると、設計ミス→メーカーによる欠陥の発見→あいまいな『SB』の発行→航空会社及び行政当局による問題の重大性の見落とし→飛行中の小故障の発生→その場しのぎの改修→大故障の発生、という図式は、具体的な経過や背景こそ違え、DC10の場合とあまりにも酷似してはいないだろうか。
と。こうなると、DC10の問題というより、完全に人災とも言えるよね。

そして、「ミス」の問題。ここでは、単にミスで済ませられないという問題が潜んでいる。

複雑な巨大システムにおいては、人間側のミスと機械側の欠陥とは、画然と次元を分けられるものではなく、境界線のはっきりしない同一平面上に渾然と重複し合って存在しているのである。
と言い、人間はミスを犯すことが前提として、機械や設計の譲歩を求めているよ。ただ、事故原因とは困ったことにシンプルにしたがるものなんだよね。

最後にフェイル・セイフを語る。

その一つは、安全対策とは金のかかるものだということであり、もう一つは、安全への現実的な解決策は、“人間”と“機械”との調和のとれたシステム(マン・マシン・システム)の開発以外にないということである。
と結論。ただ、これもどこまでやればokというものでもなく、難しい問題だよね。
それでも、飛行機に乗りたい!し、乗らなくてはならないのが現代社会。少しでも安全、安心な航空機であってほしいよね。
航空事故―その証跡に語らせる (中公新書 390)
航空事故―その証跡に語らせる (中公新書 390)柳田 邦男

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