漂流記の魅力/吉村昭

漂流記の魅力 (新潮新書)』を読んだよ。若宮丸の場合。

おろしや国酔夢譚』や『大黒屋光太夫』で漂流記の魅力を知ったアッシ。その後は、漂流物を見つけては、読んでいるわけ。本書も図書館で見つけてからは、要チェックということで、今回やっと読了。
筆者の吉村昭氏も漂流記にはかなり興味があるみたい。もっとも、『漂流』なんていう作品があるくらいだからね。

本書で取り上げる「漂流」は主に江戸時代の日本での出来事。そこで冒頭は一般論として、当時の日本の海運についての解説。ご存じのように陸路より海路が発達していたわけなんだけど、外国船と和船とは構造が違う点を重視。つまりは、和船は荷を運搬する上で最高の機能を発揮する媒体だったと説明しているよ。逆にいうと、外洋航海は不可能だったのだと。だから、黒潮に流されてしまうともう終わり。
そして、漂流した船がどうなっていくか。筆者によるとどの船も同じ経緯を辿るのだと。

それは、暴風雨に遭遇し、船が危険に瀕した時に船乗りたちはどのように対処すべきか、ということが、あたかも唯一の教科書のように確立していたことをしめしている。船頭は、その定義を頭にきざみつけ、緊急時をむかえた時、ゆるぎない忠実さでそれらをつぎつぎに実行に移しているのである。
そう、それでも助かる可能性は極小なのだが。

後半は、『環海異聞』をベースにした若宮丸の漂流事例を紹介。
アッシ的には『おろしや国酔夢譚』の神昌丸の続き物として、非常に興味深く読めるわけ。神昌丸でロシアに残った新蔵や庄蔵も登場するよ。特に新蔵の生き方はすごく逞しいとも感じるわけ。この若宮丸の場合も、生き残った半数以上はロシアに残ることを選択するんだけど、ロシアと日本の外交問題とも絡み、なんとも複雑。それでも、大黒屋光太夫の先例があったので、若宮丸の四人も帰国が叶ったのかもしれないね。太十郎の事件は少し悲しいけど。

最後に筆者は、漂流記は日本の海洋文学であると締めくくる。そうなんだ…。漂流記好きの結論っぽい気もするけど、まだまだ、江戸時代の漂流記は読んでみたいなぁ〜。

漂流記の魅力 (新潮新書)
漂流記の魅力 (新潮新書)吉村 昭

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