沈黙博物館/小川洋子

沈黙博物館 (ちくま文庫)』を読んだよ。永遠なのか…。

小川洋子氏の不思議な世界、再びという感じで本書。「博物館」というキーワードにも惹かれたんだけど、Kindle積読本でもあったから。

主人公は博物館に勤める「僕」。学芸員かなとも思ったけど、「技師さん」と表現されているのはどういうことなんだろ。確かに博物館の収蔵物の取扱いは技術的な側面もあるけど。その他の登場人物は沈黙博物館の開設に直接携わる老婆と少女と庭師と家政婦の4人。

そして、老婆に導かれて「僕」は博物館の開設に奮闘する。そして、その老婆の野望が、

私が目指しているのは、人間の存在を超越した博物館じゃ。
というもの。そう、それはズバリ、死んだ人間の形見を収集するというもの。それも生半可な目的ではなく、
いいな、私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ。それがなければ、せっかくの生きた歳月の積み重ねが根底から崩れてしまうような、死の完結を永遠に阻止してしまうような何かなのだ。思い出などというおセンチな感情とは無関係。もちろん金銭的価値など論外じゃ。
と気合十分。
当然に博物館の開設はそうそう簡単にはいかず…という感じで物語は進む。

気になるのは、見習い伝道師の少年の存在。少女との関係も微妙だし、この物語が終わった後のことも。

人は死んでしまえば、沈黙する。だから、形見を残して、それを展示する。永遠に沈黙し続けるわけだけど、展示された形見だけは何かを語り続けるのだろうか。それも永遠に…。

沈黙博物館 (ちくま文庫)
沈黙博物館 (ちくま文庫)小川洋子

筑摩書房 2004-06-09
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