垂直の記憶/山野井泰史

垂直の記憶 ヤマケイ文庫』を読んだよ。登山家だって人間。

ヤマケイ文庫で本書が出た時から注目していたんだけれども、電子書籍で安くなっていたので、即ポチ。そして、しばらくの積読状態から今回ようやく脱出。

本書は山野井泰史氏が登攀したヒマラヤの山々の記録を山野井氏自身が綴ったもの。山々なんて書いたけど、そのすべてが高所なわけで、安易に「山々」なんて言えない山岳ばかり。しかも、登山ではなく「登攀」。まさに壁をよじ登る。しかも、その壁は雪と氷と岩ばかり。普通の人、いや普通に山に登る人でさえ、想像できない世界なんだよね。

では、山野井氏の思いはどうなのだろうか。

しかし、登るために必要なことは、すべて受け入れようと思っているのだ。
確かに小さなハイキングをしているときも喜びは感じるが、やはりぎりぎりの登攀をしているとき、「生きている」自分を感じられるのだ。
しかし、夢がなければ生きられないし、都会で生活していると落ち着かず、すぐにでも雪と岩と氷の世界へ戻りたくなってしまう。
僕は上に向かって前進しているときが、一番幸せのような気がしてならない。
マナスルが僕を痛めつけようとしたのではなく、僕がミスを犯しただけなのである。
どれもが山への思いが強く感じられる言葉だよね。

そして、本書の中で壮絶な登攀が最終章の「ギャチュン・カン北壁」。妙子夫人と登るのだが、文字通り、九死に一生を得るという言葉が相応しいほどの登攀。それでも、山に行くという山野井氏。

僕は、日常で死を感じないならば生きる意味は半減するし、登るという行為への魅力も半減するだろうと思う。
登攀を通じて、全身全霊で生きていることを感じていたいのかもしれないね。
垂直の記憶 ヤマケイ文庫
垂直の記憶 ヤマケイ文庫山野井 泰史

山と溪谷社 2010-11-01
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